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自分の作品がSNSで盗用…どうすればいいの?|平林弁護士がアドバイス!SNS法律相談所(連載04)(2015.9.15)

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※掲載内容は、Webメディア「kakeru」での公開当時のもの(2015.7.29)のものとなっております。ご了承ください。

相談内容

相談者Mさん(社会人女性)

平林先生、助けてください!

私は自分の描いたイラストをSNSに投稿しています。いまは趣味程度ですが、将来はイラストレーターの仕事をしたいと思って、時間さえあれば作品をつくっています。

ある日、友だちと会ったときに「MちゃんがSNSに投稿していた作品を、あたかも自分が描いたかのようにツイートしている人がいるよ!」と私が描いた作品をツイートしている他人のTwitterを見せてもらいました。

あまりにも衝撃で声が出ませんでした…

SNSに投稿された作品を、他人が個展で展示していたという話も聞いたことがあります。

これって盗用にならないのでしょうか?

どのようなツイートをしているのかがポイント

朝夕はめっきり涼しくなりました。みなさま、お元気でいらっしゃいますか。

さて、Mさんのご相談ですが、Mさんが描いたイラストを、他人がMさんの許諾を得ずにツイートしたら著作権侵害です( ー`дー´)キリッ

…ときっぱり言えたら話は簡単なのですが、実はそうとも言い切れません。「あたかも自分が描いたかのようにツイートしている」とのことですが、どのようにツイートしているかによって結論が異なります。

では、pixivに投稿されたイラストを他人が勝手にツイートしたという仮定で考えてみましょう。

kakerukengo」さんはpixivにイラストを投稿しました。こんな感じです。

画像1

(http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52050057)

このイラストを見て感動した「pakurikakerukengo」さんは、このイラストを自分が描いたことにして、世間に喧伝してやろうと思いたち、「ぼくが描いたんだよ」と自慢気にツイートしました。

自分のPCにダウンロードしてTwitterに再度upした場合

まず、pixivにupされたイラストを「pakurikakerukengo」さんが自分のPCにダウンロードしてTwitterに再度upしたという仮定で考えてみます。こんな感じです。

この場合は、著作権侵害になります。 まず、「pakurikakerukengo」さんが「このイラストを自分が描いたことにして、世間に喧伝してやろう」という意図でPCにイラストをダウンロードしていたら、その時点で、複製権(著作権法21条)の侵害になります (脚注1)。

さらに、「pakurikakerukengo」がイラストをツイートすることで、イラストをTwitterのサーバにupした時点で複製権侵害と公衆送信(送信可能化)権(著作権法23条1項)の侵害になります。 なお、「pakurikakerukengo」さんのこのツイートは当然ながら「引用」(著作権法31条1項)の要件は満たしません。「引用」として許されるための要件は、「テレビの試合中継。写メってツイートするのは著作権侵害??」で解説していますので、ご参考になさってください。

(脚注1)他方で、PCにDLした段階では個人的に鑑賞する意図しかなかったとすると、私的利用の例外規定(著作権法30条1項)の適用があるので、まだ著作権侵害にはなりません。

pixivの画像URLをツイートした場合

次に、pixivの画像URLを貼り付けて、リンク先のイラストを、いかにも自分が描いたイラストであるかのようにツイートしている場合について考えてみます。こんな感じです。

この場合は、著作権侵害にはなりません。

このツイートを見た人はツイート内のURL をクリック等して、リンク先のウェブページを閲覧することになります。この際、イラストのデータは、リンク先のウェブベージから閲覧者のデバイスへ送信されるのであって、Twitterのサーバに蓄積されるわけでも、リンク元のツイートから送信されるわけでもありません。

すなわち、リンク行為自体は、複製、公衆送信(送信可能化)のいずれにも該当しないので、著作権侵害にはなりません。

また、「pakurikakerukengo」さんは「僕が描いたんだよ」と、あたかもイラストの著作者が自分であるかのよう表示をしています。しかし、ツイート内に著作物であるイラストが存在しないので、著作者人格権(氏名表示権、著作権法19条)を侵害すると主張するのも難しいのではないかと思います(脚注2)。

(脚注2)氏名表示権は自己の氏名を著作物に表示し、あるいは表示しない権利として規定されているので、著作物がないところに氏名表示権が存在することはありません(中山信弘「著作権法〔第2版〕」490頁)。もっとも、ベルヌ条約6条の2(1)が、著作者に「著作物の創作者であることを主張する権利」を認めていることからすると、日本の著作権法では救済できないとしても一般不法行為(民法709条)として救済するなど、何らかの法的保護は考慮されてしかるべきかもしれません。

「無断~~」の法的効果

「無断リンク禁止」の法的効果
ところで、リンクに関しては「無断リンク禁止」などと記載されているウェブベージを見かけることがあります。

画像2

(http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52050564)

しかし、「無断リンク禁止」の表示は表示した人の単なる希望に過ぎず、法的な効果は何もありません。

「無断転載禁止」の法的効果

また、似たような表示に「無断転載禁止」というのもあります。

画像3

(http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52050718)

この表示も法的効果はとくにありません。

というのも、著作権は著作権者の許諾を得ていない複製を禁止する権利なので、こんな表示などなくても、無断転載はそもそも著作権法によって禁止されています。

他方で、著作権法が「文化的所産の公正な利用」と「著作者等の権利の保護」のバランスを図った(著作権法1条)結果、著作権の保護が及ばないこととされた領域については、いくら「無断転載禁止」と表示しても、自由な利用が認められます。たとえば、「引用」(著作権法31条1項)の要件を満たす著作物の利用は、権利者が「無断転載禁止」と表示しても自由に行うことができます。

さらに、ウェブサービスなどを利用して著作物を掲載する場合には、いくら「無断転載禁止」と表示しても、そのウェブサービスのルールが優先されるだろうと思います。たとえば、Twitterは投稿される著作物について、かなり広範な利用権をtwitter社やそのパートナーに認める規定を、利用規約に置いています(「5. ユーザーの権利」にあるライセンス条項)。

❝ユーザーは、 本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿、表示することをもって、媒体または配布方法 (既知のまたは今後開発されるもの) を問わず、かかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配布するための、世界的な非排他的ライセンスを (サブライセンスを許諾する権利と共に) 当社に対して無償で許諾するものとします。❞
❝ユーザーは、このライセンスに、Twitterが本サービスを提供、宣伝および向上させるための権利が含まれること、ならびにコンテンツ利用に関する当社の条件に従うことを前提として、本サービスに対しまたは本サービスを介して送信したコンテンツを、他の媒体やサービスで配給、配信、配布または公表することを目的として、当社のパートナーとなっている他の会社、組織または個人に対して提供する権利が含まれることに、同意したものとします。❞
❝Twitter、またはTwitterのパートナーとなっている他の会社、組織または個人は、本サービスを介してユーザーが送信、投稿、転送または提供するコンテンツについて、ユーザーに報酬を支払うことなく上記のように追加的に利用できるものとします。❞

Twitterユーザーは、この規定に同意してTwitterを利用しているのですから、個々のツイートで「無断転載禁止」と記載して、Twitterのオープンなエコシステムと矛盾する取扱いを一方的に求めても、そのような要求は認められないと考えるべきだろうと思います。(脚注3)

(脚注3)「Twitterサービス利用規約」のライセンス条項が、日本の消費者保護法などに照らして有効とされるかどうかは別途問題になります。

無断転載されないためにできる対策

法的効果がないとはいえ、「無断転載禁止」と表示があれば、普通は無断で転載したらマズいかなと思う(萎縮効果)ので、予防対策にはなると思います。

「あなたは大丈夫?SNSの無断転載から写真を守るための加工術」にあるようにウォーターマークを入れて、万一、無断転載されてしまった場合でも、自分が権利者であることを主張できるようにしておくことも有用でしょう。

法律の世界では、自分の著作権を表明する方法として著作権表示を利用したりします。こんな感じです。

画像4


(http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52053433)

せっかくのイラストに、こんな余計なモノを入れたくないかもしれませんけれど、よろしければ、ちょっと検討してみてください。


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