かけるの詰将棋探訪#1
1979年看寿賞中編賞の受賞作
マイナビの将棋情報局編集部のアカウントが面白い詰将棋を公開していたので、一緒に解いていきましょう。
ツイートを貼り付けるとネタバレ(詰め上がり図の画像も一緒にアップしている)するので、最後に元ツイートを載せたいと思います。
この詰将棋は、近代将棋1979年11月に公開されたもので、看寿賞中編賞を受賞した作品になります。
詰め上がりが面白い形になるので、想像しながら読んでみてください。
さて問題図はこちら。
入玉形かつ大駒が飛び交っている詰将棋で、私の苦手な詰将棋要素ふたつが組み合わさっていますね・・・。
まずは初手、どんな王手があるか探してみましょう。
持ち駒もないので盤上の飛車か馬を動かすしかありませんので、▲5九飛、▲4九飛成、▲3七馬だけになります(厳密には▲4九飛不成もありますが、打ち歩詰めがでてきたら考えることにしましょう)。
上げた順番で見ていきましょう。
①▲5九飛
②▲4九飛成
③▲3七馬
初手▲5九飛の手順
▲5九飛に対しては、△2九合駒か△2八玉か△1八玉ですが、△2八玉は▲4八飛成△3八合駒▲3七馬△1八玉▲1九飛で簡単ですね。
では△1八玉はどうでしょうか?
同じように▲4八飛成としますが、今度は△2八歩くらいで馬が働かないので詰みませんね。
△2九合駒は難解ですが、△2九銀合でギリギリ逃れています(角、金では詰む!)。
もっとも△1八玉で詰まない以上あまり読む必要はないですけどね。
初手▲5九飛では詰みがないことがわかったので次にいきましょう。
初手▲4九飛成の手順
同じような手ですが、▲4九飛成も見ていきましょう。
△2八玉はやはり▲3七馬があるので、△1八玉と逃げますが先ほどと同じように1五馬が使えない形になるので詰みはありません。
初手▲3七馬の手順
さてそうなると消去法でこれしかないということで、▲3七馬を考えましょう。
玉方の応手として考えられるのは、△2八合駒か玉を逃げる手ですが、△2九玉は▲2三飛成、△1八玉には▲4八飛成で簡単なので合駒するしかなさそうです。
詰将棋ではまず安い駒の合駒から考えるのが基本ですから、△2八歩合を検討しましょう。
これには▲5九飛でさらに合駒を請求しましょう。
△1八玉とするのは▲1三飛成△1七合▲1九飛~▲1七龍があります。
ここの合駒は角金銀しかありませんので、△2九銀としますが、▲同飛△同玉▲3八銀とすれば詰み筋です。
以下、△1八玉には▲2七馬~▲1三飛成、△1九玉には▲4九飛成~▲2七馬で詰み上がります。△2九角も同じ手順で詰みますね。
△2九金の場合には、上図の▲3八銀に代えて▲3九金~▲4八飛成とすれば以下簡単な詰み上がりとなります。
というわけで▲3七馬に対して△2八歩と合駒するわけにはいきません。△2八香も同様に詰みですし、△2八桂はルール上打てませんので、角金銀のどれかを合駒することになります。
ではそれぞれ合駒した場合を見ていきましょう。
△2八角合の変化
角合することで1七や1九の地点に利かすことで逃れる筋がでてきます。
つまりここで▲5九飛とすると、△1八玉とされて▲1三飛成~▲1九飛のときに△1九同角成とされて詰まなくなります。
しかし高い合駒をしたときには、その合駒を取る変化が生まれます。しかも角ですから王手しつつ馬に成れれば詰みやすくなります。
そこで△2八角に対しては▲同馬△同玉▲4八飛成と飛龍で攻めましょう。
△1九玉には▲7三角、△2九玉には▲5九飛で簡単ですので、ここも合駒をする一手です。しかし△3八金(香歩)合は▲7三角~▲2七飛で詰んでしまいますので、2七に利かすために角か銀するしかありません。
しかし角合も銀合も▲7三角~▲3八龍~▲3七角成とすれば容易な詰みとなります。
というわけで、初手▲3七馬に△2八角と合駒するのは詰むことがわかりました。続いて△2八金合をした場合を見ていきましょう。
△2八金合の変化
金合をすることで、角とは違い3八に利かしつつ、取られたときに角より詰みにくい形を作ることができます。
今度▲2八同馬~▲4八飛成とすると、△3八歩▲3九金△1九玉とされて王手が掛からなくなり詰みがありません。
また、歩合のときのように▲5九飛△2九銀▲同飛△同玉とするのは▲3八銀が打てないので詰みがありません。
困ったかのように見えますが、先ほどの変化とは違う▲4九飛成が好手。
同じように△2九銀とすれば▲2八馬~▲3九金で詰みがあります。
△2九角も同じ手順で詰みます。
△2九金のほうが手数が長くなりますが、やはり▲2八馬からの詰みになります。下図以下、▲2九龍~▲2八金打~▲5九飛がぴったり。やはり▲5七飛が縦横によく利いていますね。
初手▲3七馬に△2八金合も詰むことがわかりましたので、最後に△2八銀合を見ていきましょう。
△2八銀合の変化
いよいよこの記事の終わりが見えてきました。お付き合いありがとうございます。そしてこの銀合こそがこの詰将棋の真髄であり美しさですので、楽しみながら読み進めていただけたらと思います。
さてここまで読んでいただいた方ならわかるでしょうが、▲5九飛とするのは△1八玉で詰みません。これは角合でも詰まなかったので当然でしょう。
また、▲2八同馬とするのも駒が足りません。
よって△2八金合のときと同じように▲4九飛成とします。
何度目になるかわかりませんが、再び合駒問題です。
△2九角は▲同龍~▲8三角とやはり遠見の角を放ちますが、△4七歩が上手い受けで手数がかかります。
しかし▲4七同角成~▲2八馬~▲3七馬とすればどこかで見た図に合流しますね。よってこの手順は詰みとなります。
△2九金と受けるのは▲2八馬~▲5八飛が見えにくい手で、どう応じても詰みとなります。
△1九玉には▲2八銀~▲2九龍以下、
△2七玉には▲3八龍~▲1五銀~▲5五飛、
△3七玉には▲3八飛~▲2九龍以下、どの変化も飛車と龍がよく利いていますね。
というわけで△2九銀と合駒することになります。
今度は▲3八銀を打つことができますので、▲2九龍~▲5九飛とします。△1八玉と逃げるのは▲2七銀~▲2六馬で詰みなので、△3九合駒の一手ですね。一体何度の合駒問題がでてくるのでしょう。
△3九金合は▲同飛以下簡単ですし、△3九角か銀になりますが、△3九角は最後の最後に早く詰むだけですので説明は省かせてもらいます。
今度は▲同飛△同玉となると、持ち駒銀銀では詰みがありませんので、▲3八銀△1八玉▲2七銀と追いかけていきます。
ここで△2九玉なら▲3九飛△同銀▲1八銀打でぴったり詰みなので、△1九玉と逃げるしかありません。
△1九玉には▲3九飛しかありませんが、馬が利いているので△3九同銀とはとれません。よって玉方は再び再び合駒を打つしかありません。
ここまで読んだ方なら何を合駒するのか、なんとなくわかるのではないでしょうか?そう、銀合ですね。
なんとこれで4連続の銀合となり、持ち駒の銀をすべて吐き出させました。
銀が4枚あればなんとなく詰みがわかるのではないでしょうか?収束まで追っていきましょう。
初形でいなかった銀が主役
ここまで来たらあまり変化はありません。
▲2九飛~▲3八銀打として、盤面に銀を打ち付けて玉をしばっていきます。
残り5手となりました。ここまで来たら読み切りましょう。
そうです、▲2八馬~▲3七銀打~▲2八銀打で詰み上がりです。
初手からの詰み手順を載せておきましょう。
▲3七馬 △2八銀打 ▲4九飛成 △2九銀打 ▲同 龍 △同 玉
▲5九飛 △3九銀打 ▲3八銀打 △1八玉 ▲2七銀 △1九玉
▲3九飛 △2九銀打 ▲同 飛 △同 玉 ▲3八銀打 △1九玉
▲2八馬 △同 玉 ▲3七銀打 △3九玉 ▲2八銀打
まで23手詰
初形では攻め方に飛・龍・馬しかありませんでしたが、それらはすべてなくなり4枚の銀がブロック状になっての詰上りになるという、意外性の詰まった作品だったのではないでしょうか。
また詰み手順にも合駒問題が何度も出現し、非常に難易度の高い問題だったと思います。
最後に元ツイートを載せておきます。
ところでこのマイナビ将棋情報局編集部さん、いつになったら私の質問に答えてくれるんでしょう?
これからのモチベーションを保つため、参考になった方はサポートお願いいたします。