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上達への階#6

前回の記事

形勢判断の材料

最近の将棋中継では+1000とか、70%とかどちらが優勢か表示してくれるようになりましたね。自分の対局でもこれを表示してくれたらいいのに、なんて冗談は置いておいて、将棋AIがどちらが優勢と判断するにしてもいろいろな理由があってそうしているわけです。

今回はそういった形勢判断をどうやったらいいのか、ということを解説していこうと思います。

判断するための評価軸はよく言われるものですが、各評価の基準は独自のものもある(長くなるので続きで)のでぜひ参考にしてもらえればと思います。

4つの評価軸

形勢判断の4つの評価軸とは以下のものです。

・駒の損得
・駒の効率
・玉の固さ
・手番

駒の損得について

駒の損得は読んで字のごとく、どれくらい駒を得したか・損したかです。
初期配置では、飛・角・金2・銀2・桂2・香2・歩9(玉は数えるだけ無駄なので除外)あるわけですが、ここからどうなったかになります。

例えば歩を一枚ただで取ることができれば、【歩10】vs【歩8】となるので、トータル歩が2枚差ついて駒得ということになります。

実際はただで取れることは少なく、何かと交換になりますね。
例えば金と銀を交換すれば、【金3・銀1】vs【金1・銀3】となって駒の枚数でいえば同じですが、一般的に銀より金のほうが得なので【金3・銀1】側が駒得ということになります。

駒ごとの価値は一般的に『飛>角>金>銀>桂>香>歩』と言われています。
桂頭の歩の手筋で【桂1】vs【歩1】が交換になれば桂馬が取れて駒得ですね。

他にも2枚替え、3枚替えといって【角1】vs【金1銀1】の交換や、【飛1】vs【銀1桂1香1】の交換になることもありますが、多くの場合枚数が多い【金1銀1】や【銀1桂1香1】が駒得となります。

駒の効率について

駒の効率は人によって最も判断が変わる評価軸でしょうか。
駒の動きはルールで決まってますが、その駒が攻めや守りに働いているかどうか、戦場から遠く離れ隠居していないかという点で互いの戦力に差がついてきます。

人はこの駒の効率において、具体的な数値化することも難しく、微妙な差を捉えるのが難しいのでAIが特に強い部分ではないでしょうか。
とはいってもAIはなんでそう判断するか教えてくれないのですが・・・。

ということで説明も難しいのです。
ここでは2つの局面を見てもらい、駒の効率という点で局面を見てもらいましょう。

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左図は▲6六銀と△3二銀、▲2九桂と△4五桂を比較してみてください。
右図は▲8八角と△2二角、▲3四龍と△4三飛+△3九とを比較してみてください。

どうでしょうか。
参考までに自分の考えを書いておきます。

左図の▲6六銀は玉の囲いの一部で将来的に後手玉が上部に逃げ出してくるような展開になればそれを抑えてくれるかもしれません。△3二銀は玉からは遠く離れて攻めにも使えていませんが、▲2八龍の侵入を防いでいるという点では一定の働きはしていると言えるでしょう。なので▲6六銀のほうがやや働きがいいと言えると思います。
▲2九桂はまったく使えていないし、今後も使えそうにありません。△4五桂はと金に取られそうだったところを逃げ出して△5七桂などから金銀と取れる展開もありそうです。よって△4五桂のほうがかなり働きがいいといえます。

右図の▲8八角は角筋を桂馬でふさいでしまっているので働いていませんね。▲9七角としても狙いがない(そのために△4三飛としている)ので、ここは△2二角に軍配が上がりますね。
▲3四龍と△4三飛は龍になっている分先手がよさそうですが、龍が動くと△4五飛と働かせることができますし、△3三飛とぶつけて▲同龍を強制できれば持ち駒にすることで効率を同じにできます。また後手だけと金を作っていますので、龍と飛・と金でいうとあまり差がないかもしれません。

今回はわかりやすさのため同じ駒で比較をしましたが、実際は局面全体で判断する必要があります。大駒は使えてないけれど桂香の効率がいいなど、ある駒ある部分だけ見るのではなくトータルで考える必要があるのが駒の効率の評価の難しいところです。

玉の固さについて

玉の"堅さ"ではなく"固さ"と表現するのは個人的なこだわりですが、堅さとは単純に玉の周りに守り駒が多く手がつけづらいことを言うイメージです。例えば穴熊囲いが堅さでは将棋の囲いでは断トツになりますね。

固さとは、王手のかけづらさ、詰みづらさという意味で書いています。中住まいなどの囲いは決して堅いとは言えませんが、右から攻めれば左へ逃げたりしてなかなか詰ますのが難しかったりすることがあります。

こういった総合的な玉の詰みにくさ・安全度というのを玉の"固さ"として表現しています。なので穴熊囲いが固いのではなくて局面によって固さは変わってくるのだということを念頭に置いて考えて欲しいと思います。

同じ図面で考えてみましょう。

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左図▲は穴熊囲いで堅さは間違いありません。しかし△4九龍△4五桂△1三角と攻め駒が穴熊の金銀を狙っていています。
左図△の美濃囲いのほうは堅さでは穴熊には及びませんが、横からも縦からも攻め駒はきてませんし、美濃囲いの急所のコビン攻めも今はありません。
自分も左図では△美濃囲いのほうが固いというかもしれません。

右図▲は囲われていませんし、と金も作られています。
右図△は美濃囲いは同じように今のところ攻められていないのでこちらは間違いなく後手のほうが固さは優っているでしょう。

結局将棋は相手玉を詰ますゲームですから、詰ますためにどれくらいかかるのか、どういう組み立てをするのかということを考えますし、受ける側から見るとどうやれば詰みづらいのかを考えることになります。

手番について

手番とは特にいうこともありません。次の指し手がどっちかというだけです。

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左図は後手、右図は先手ですね。

「え?それだけ?」と思われるかもしれませんが、これだけです。
しかしお互いが詰めろの状態なら手番のほうが勝ちですから、大事な要素の一つになってくるわけです。

まだまだ続きます

今回はあくまでも評価軸とそれぞれの基準の解説でした。
次回はそれぞれの評価軸の応用と、局面によって評価軸の重み付けについて解説していきたいと思いますのでお楽しみに。

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