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給料日を記帳の区切りにしないのはなぜ?

 「給料日が毎月25日なので、家計簿も25日を区切りにできませんか?」という質問が、ときどき寄せられます。もしかしたら、他社の家計簿や家計簿アプリの中には開始日や締め日を自由に設定できるものがあり、それらをお使いになったことのある方からの質問かもしれません。
 『羽仁もと子案家計簿』は、その月の1日から月末までを1カ月として扱い、その年の1月1日から12月31日までを1年として、収入支出を記帳し、決算をします。なぜ、そのような考え方をするのでしょうか? 

「予算生活」では、給料日が何日でもかまわない

 その理由を、婦人之友社の元社長・千葉貞子(*註)は「次のように書いています。キーワードは『羽仁もと子案家計簿』が大切にしている「予算生活」です。

予算生活と現金生活 
 手もとの現金を物さしにして、今日は給料が入ったから日ごろ買いたいと思っていた身の回り品などを早速求める。さいふの中が乏しくなったから夕食の買い物に出ても、献立を簡単にして倹約をする。これでは行き当たりばったりの生活で、思わぬところに使いすぎをするようなことが、ここから生まれてきます。また、日常の食料品やそのほか何でもつけで買ったり、月賦をフルに利用してくらすことも、しらずしらずのうちに予算がみだれるもとだと思います。
  予算生活とは、自分のつくった予算にしたがって支出をすることです。予算通りにならないことがおこったら、他の一つで必ず予算超過をくいとめるくらいに、きびしく予算を守ってくらすことです。これはなんと不自由なかたくるしいことだと思うかもしれませんが、よく考えた予算がたっていれば、したいことができないのではなくて、計画したことは必ずできるということです。買い物の一つ一つが、ほんとうにすっきりできるはずです。

給料日は何日でもかまわない
 一カ月の予算生活をまもっていれば、たとえ20日が給料日で、実際にはお金があっても、各費目の予算はもう月末に近いころなので残り少なくなっていますから、急にほしいものを思いついても買うことはできないというのが本当です。予算は毎月1日から31日まで、給料は20日にはいるというのでは、家計簿がどうもわかりにくい、つけにくいという方もありますが、予算生活の根本の意義を理解すれば、現金を物さしにする「現金生活」と、それとはちがう予算生活の二つの在り方をよくわかってくださるでしょう。

 若い家庭のための家事シリーズ『家計の出発点』千葉貞子著(1962年)より引用

  つまり、「給料が入ったから」と買いたいものを求めるのは「現金を物さしにしたお金の使い方」なのです。「予算を物さしにしたお金の使い方」をするのなら、給料日は何日であってもかまわないということになります。

 さらに昨今の事情を付け加えるならば、毎月25日が給料日だとして、25日が土日祝日にかぶると前倒しで振り込まれることがあります。給料日を区切りにすると、家計簿上のひと月の日数が28~35日間と幅ができて、1日あたりの予算が楽な月と窮屈な月ができることも忘れてはなりません。行き当たりばったりの生活で必要のない苦労は誰もしたくないものです。
 夫婦共働きの場合は夫と妻で給料日が異なることも多々ありますし、転職をすれば給料日も変わるでしょう。家計簿は何かしらの事情で左右されることのない「1日~月末締め」をおすすめします。

 このような説明をすると、「そうは言っても、給料日は25日なのだから、その月の1日から給料日までは生活費をどう用意したらいいのですか?」とおっしゃる方もいます。25日が給料日なら、銀行に給与が振り込まれると通帳の残高が増えますが、その給与は翌月の生活費に充てるというように考えて生活すると、ゆとりをもって生活することができます。

*註 千葉貞子--元婦人之友社社長。昭和3年の結婚祝いに、羽仁もと子から家計簿と聖書を贈られ、以来、家計簿を生涯つけ続ける。在職中には家計簿の編集にも携わる。著書に、婦人之友社発行の『家計の出発点--若い家庭のための家事シリーズ』( 1962年 )


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