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kakapoの生地がスニーカーになる!(後編)

端革でシューズづくり! 始まりました!

革は、命からいただいた大切な素材。
少したりとも無駄にしたくありません。

そのために、これまでのテキスタイルの仕事の経験の中から、使えそうな技術をフル回転で引っ張り出しました。

そうだ!桐生の澤さん!!

会社員時代によくお仕事をさせていただいていた桐生のニードルパンチ工場。
ニードルパンチは剣山のようになった針で繊維を絡めながら不織布やフェルトを作る方法です。
一般的には工業製品を作る工場が多いのですが、澤さんの工場ではいろいろアレンジしており、様々な素材や方法で洋服地やインテリアなどに使う素材を生み出しています。

私が会社員時代は、某有名ブランドさんのコレクションの素材を一緒に作っていただいたりしました。


会社を辞めてからも、全くニードルパンチの仕事は出せていないのに、桐生のお父さんお母さんということで、全く仕事にならない仕事を持って定期的に通っていた場所です。

でも今度こそはちゃんと仕事になるかも!!!と思いいそいそと桐生へ。

澤さんと一緒にアーでもない、コーでもない、と試作をスタート。


最初、材料の山を見た澤さんは思わず苦笑い・・・。

これまで色んな生地や紙をニードルパンチしてきたけど革は初めて、とのこと。
しかもスルメみたいになった革。


それでもまず試験してみようとのことで、生地の間にスルメのような端革を並べて挟んでニードルパンチ。

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*端革はウールガーゼに並べていきます。

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*今回お世話になった桐生の職人、澤さんご夫妻。

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*上にはポリエステルシフォンを乗せ、端革をサンド。

ところが早速問題が!

スルメのように固くなった端革で針がポキポキ!
まるで茹でる前のパスタのように折れていきます・・・。

靴の型抜きをできなかった端っこやシワになった革が混ざっているので、均等な厚みではない上に、シワのところは固くなって針が通らない状況に。
さらに、硬くなった革が引っかかって動いてしまって、変な風に偏ってしまっています。

生地やパンチの強さを色々と変えてみながら、どんな見え方になるかをひたすら黙々と試していきいます。

*端革を黙々と置いていきます(動画)

こんな試行錯誤を繰り返すこと一日。

手でシワを伸ばしたり、固くなったところを取り除いたり、一つ一つ確認しながら並べてみんなでそっと生地や革が動いてしまわないように抑えながら、なんとかニードルパンチ。
今回はうまく行きました。

*ニードルパンチ作業の様子(動画)

そして思いのほか、かっこいい!

くしゃくしゃになっていた革がニードルパンチで綺麗に押さえられ、生地にサンドイッチされて、本当にかっこいい!!

まるで抽象絵画のような佇まいの、とてもいいサンプルが出来上がりました。

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*ランダムな端革のパターンが抽象的な美しさ! 端革が重なるとレイヤー感で立体的な奥行きが現れるのですが、針が折れてしまうリスクを避け、最終的には重なりを作らない並べ方に。

この仕上がりに、澤さんと私は大興奮!!!

苦労も吹っ飛びます。

さっそく依頼主のKさんの元へ。


Kさんに見てもらった反応は、予想通り上場!

しかし、Kさんは何がどうしたらこんなコトになるのかわからない様子でした。
でもとても気に入っていただけた様子。

そして数日後、靴の試作用にサンプルを進めたいとのこと。
急ぎ澤さんにご報告しました。


後日、Kさんと一緒に澤さんのものとへ。
いちから一緒にサンプル作り。

ここからは、どの色の革にどんな生地を組み合わせたら良いか?
素材としての物性的な問題は?
靴として商品になるので、強度もなくてはなりません。
革を並べる間隔は?
靴は素材を小さなパーツに裁断して使うので、どこを切り取ってもかっこいい状態にならなくてはなりません。

そんなこんなで、考えることは満載のなか、Kさんも一緒に革を並べて抑えて、みんなで試作を進めます。

なん度となく試作を繰り返し、良い感じに落ち着いてきました。

でも、ニードルパンチは針で繊維と繊維を絡めているだけなので、靴になった時にいくらしっかりとパンチをしても、
ハードな動きをすると絡んでいるところがどんどんほぐれて、生地と革がバラバラになってしまうのではないか・・・という問題も。


そして、今度はこれまた以前からお世話になっている刺繍屋の佐久間さんに電話。
出来上がった素材を持ってこれになんとかミシン刺繍のステッチを入れられないか相談に。

とりあえず試してみよう!と快く引き受けてくれました。

最終的には完成度も強度も上がり、さらにカッコ良く収まりました。

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靴になるまでには、1stサンプルから3rdサンプルくらいまでの試作を経て、実際店頭に並ぶ量産にかかります。

そして、数ヶ月を経て量産進行が決まったのですが、前述通りとにかく手間。
サンプル作りの時は、あとのことなど考えないので、いつもこんな感じです。
さて量産は・・・と少し心配になりつつ澤さんに連絡。

嬉しさ半分、またややこしい仕事が決まってしまった・・・という澤さんの顔を想像しつつ。
でも決まった以上全力で動いてくれる安心感もありつつ。

それでも今回はできるだけ澤さんの作業を減らすということで、なんとKさんも自ら端革の整理を買って出てくれました。
事務所に届いた革を使えるものと使えないものに分類し、大きすぎるものはサイズを揃えるためにチョキチョキ。

それを澤さんに送り、量産のスタートです。
1mあたりに使用する革の量を測りながら、並べてニードルパンチ。
そして、それを佐久間さんに納品し刺繍。
スタートを無事きったので、あとはお任せして出来上がりを待つばかり、というのが年が明けた頃でした。


最終的には今年2021年の春に、無事に鳥取にある靴工場に生地を納品できました。
そして、この10月に、晴れて店頭に並びました。

普段のkakapoのプロダクト作りとは違いますが、kakapoの仕事を通じてこれまでの経験が活かせる仕事をいただけることは、とても嬉しいことですし、やりがいも大きなものでした。
また、何か新しい、私にしかできない提案をして行きたいと思います。

この生地作りのお手伝いをさせていただいたスニーカーが、現在販売されています。
靴の型抜きをした後の端革を使用した素材で作ったスニーカです。
ランダムに並ぶ端革の生地でできていますので、同じ模様のシューズは二つとありません。

鳥取から東京に届いた端革が桐生に運ばれ生地になり、鳥取に里帰りしてかっこいいシューズになりました。日本を巡って完成した国内生産のシューズです。お見かけの際は、ぜひ手にとって端革の質感や風合い、履き心地などもお確かめいただけたら、とても嬉しいです。

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*写真:Onitsuka Tiger(オニツカタイガー)



それではごきげんよう。

カネイチヨウコ

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