腕を組んで歩く

毎日、在宅勤務は16:00位まで。

それが終わったら、
待っていてくれたミコと二人で
近所に散歩か買い物に行くのが、
ここ10月に入ってからのルーティンだ。


私はミコがリストカットをしていることを
知ってから、家に独りにしておけないと、
会社にお願いして、仕事を在宅勤務に
切り替えてもらった。


そして、週4から週3に、
業務時間の終わりも16:30から15:00と
仕事時間も減らした。

当然、雇用保険は喪失。
メインで担当していた業務も手放して、
在宅ワーク専用の簡単な業務に変わった。

最初はやはりへこんだが
まあ仕方がない。
我が儘言って在宅にしてもらったんだもん、
当たり前だ。

それでも仕事は忙しく、
業務中は仕事部屋に籠もりっぱなしだけど、
お昼ごはんも食べない日もあるけど、
ミコは、最近リストカットをしなくなった。

一日何回も部屋にこっそり氷を持っていき、
氷を腕に押しつけて冷やした後
そこにカミソリをあてていたミコ。

知らないうちに
ミコの両腕、手の甲は、
バーコードのようなカミソリの切り跡で
たくさんになっていた。


私は一緒にその跡を触って泣いたり、
消毒したりして、ミコの心の傷を知った。


何でやらずに済むようになったのか、
分からないし、
またリストカットする時があるかもしれない。

でも、たぶん在宅勤務にしてよかった。

今まで昼間、独りにしてしまって
ごめんね、って思う。

二人で行く散歩は、
いつもミコが腕を組んでくる。
ちょっと照れくさいけど、
ミコのほうからもういい、
って言われるまで、
腕を組んで歩こう。

明日は登校すると
担任の先生と約束をしてしまったミコ。

朝から行くらしい。


『骨折している人は運動しないでしょ、
治りが悪くなるし、症状が悪化するかも
しれないから。
うつ病は心の怪我と一緒。
今は学校に行くのは、やめたほうがいいよ。』
と、病院の先生。

でも行きたいんだよね。
超行きたくない場所に。
学校はミコにとって、
怖いけど憧れの場所なんだ。