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ヤバイだけじゃヤバイ

「ヤバイ めっちゃカワイイ!」
「これ、うまい、めっちゃヤバイ!」
「ヤバイ、宿題忘れた」
「これ、ヤバくない?」
「あの人、ヤバイよね」
「マジでヤバイ」
「ヤバすぎてヤバイ」

「ヤバイ」とはなんと便利な言葉なのだろうか。
「ヤバイ」の一言で「カワイイ」も「おいしい」も「困った」も「カッコいい」も「すごい」も表現できてしまう。
「ヤバイ」だけで会話が成立してしまう。
「このアイス、マジでヤバイ」
「マジ、ヤバうま」
「ヤバイでしょ」
「ヤバすぎ」
「ヤバすぎてヤバイ」

問い)ここまでの文章の中でヤバイは何回出てきたでしょうか?

なんてことはさておき、いやはや、ヤバイだけじゃヤバイ。

ヤバイとしか表現できない語彙力ではヤバイのである。

「ヤバイ」の一言にたくさんの意味を持たせてしまうのは、気持ちをうまく表現することができないから、でもあるのではないか。

「ヤバイ」と似た使われ方をする言葉は他にもある。
「すごい」だ。
何を見ても「すごい」を連発し、何がどうすごいのかがまるで伝わってこない。
特にテレビの食レポなんて、みんな一様に同じことしか言わない。これなら私だってできるよ、いや、もう少しまともなレポートするよ、なんて思ったりもする。

ヤバイは若者言葉の代名詞、しかし、若者だけがヤバイわけではない。ヤバイ大人もたくさんいる。
私も然り…

ヤバイしか言えないのは、その気持ちを言語化することができないから。ならばその気持ちを表現することばを知ることが必要である。
そんな時に役立つのが類語辞典である。
この気持ち、何と表現したらよいのだろうか、と思った時にパラパラめくってみる。
例えば「かなしい」
切ない、やりきれない、やるせない、物悲しい、悲嘆に暮れる…
さて、どれがしっくりくるだろうかと考える。

ただ、実際に日常会話で使えるか?となると話は別で、とっさには出てこなかったりする。
冒頭のアイスの話
「このアイス、本当に美味しい」
「本当だ、この美味しさ、尋常じゃない」
「人知を超えた味だね」
「宇宙を超えているね」
「世界の果てのはてだね」

…どうだろう?あまり大袈裟な表現だと嘘っぽく聞こえてしまうが、
少なくともヤバイだけの会話よりはヤバくない気がする。

いくら人生はめんどくさいことの連続だからといって、しゃべることすらめんどくさくなってヤバイを連発してはならないだろう。

とはいえ、自分の語彙力だって相当あやしい。
ボキャブラリー、言葉の引き出しを増やすには言葉にふれること、である。
個人的には上手い言い回しや、素敵な表現に出会ったとき、本ならばふせんを貼ったり、ラジオや音楽であれば書き留めておいたりしている。自然と表現できるようになるのが理想ではあるが、それには日頃から意識して使うことが必要だろう。
そして、「ヤバイ」のような便利で安易な言葉を使わないようにしたいものである。

本当にヤバイのは
ヤバイことに気付いていないこと。
便利なのはいいが、
便利すぎるのは人をダメにする、かもしれない。

混線の中に救いを見つける

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