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和菓子No.5 醤油饅頭(6店舗食べ比べ)Part1

今回の和菓子は兵庫県たつの市の名物「醤油饅頭」
たつの市はヒガシマル醤油さんの地元で、
たつのと言えば淡口醤油が有名ですから、
ほとんどの和菓子屋さんで、
皮に地元の醤油を混ぜ込んだ「醤油饅頭」が売られています。

以前、兵庫県赤穂市の名産「塩味饅頭」の食べ比べをして
食べ比べの面白さを知った私は、
「これは食べ比べするしかない!!」と
醤油饅頭を求めて、市内6軒の和菓子屋さんを駆け巡りました。


【淡口醤油とは】

醤油饅頭を食べ比べする前に、
まずはその原料となっている淡口醤油について。
そもそも淡口醤油は一般的な濃口醤油とどう違うのでしょう。

醤油づくりに必須なのは、小麦、大豆、塩
濃口醤油は、基本的にこの3要素のみで造られます。

一方、淡口醤油は、この3要素+米から造られます。
米は甘酒にして加えられます。
そうすることで、まろやかで上品な甘味と旨味、穏やかな香りが加わり
より風味豊かな仕上がりになる
のだそう。
「うすくち」という呼び名から、塩分が少ないように思いがちですが、
実は濃口醤油より塩分は高いんです。
「うすくち」というのは味の濃さではなく、色の濃さを指しています。
だから、表記も「薄口」ではなく、「淡口」なんです。
そうは言っても、漢字をじっと見て意味を考えることなんて
ほぼないですから、何となく、味の濃さをイメージしてしまいますよね 笑

では、なぜ淡口醤油は色が薄いのでしょうか。
その秘密は、製造する土地の水の硬度の違いにあります。
濃口醤油は主に関東で造られていて、
ミネラル豊富な硬度が高めの硬水が使われます。
一方、淡口醤油は主に関西で造られていて、
ミネラルが少ない硬度が低めの軟水が使われます。
軟水で醸造することで、色が薄くなるのだそう。

ヒガシマル醤油さんは、淡口醤油と濃口醤油の使い分けについて、
ホームページで以下のように紹介されています。

【淡口しょうゆ】
・穏やかな風味と華やかな香りが、料理全体の味をまとめます。
・素材のおいしさと色を生かして、だしの風味を効かせます。
・新鮮でクセのない食材には、
 淡口しょうゆで素材の味を引き立てる料理をおすすめします。
【濃口しょうゆ】
・濃い色と濃厚な味・強い香りを持ちます。
・臭みやクセの強い食材は、濃口しょうゆでその味を包むことができます。
ヒガシマル醤油-淡口と濃口の使い分け
https://www.higashimaru.co.jp/enjoy/oshiete/usukoi.html

より詳しい使い分けについてはここでは割愛します。
ヒガシマル醤油さんのホームページにしっかり載っているので
そちらを参照してください。

要するに、淡口醤油は原料にお米が加えられていて、
色は薄く、味が濃いのが特徴で、
素材の味や色を生かしたい時や
さっぱりと仕上げたい料理に最適ということがわかりました。

今まで「淡口」「濃口」を意識して醤油を使ってこなかったので、
自分が使っている醤油がどっちなのかも把握しておらず、
さっき確認したら、淡口醤油でした。笑
今度は濃口も買って使い分けてみようかな。

【たつのと醤油】

では、どういった経緯で
たつので淡口醤油の醸造が盛んになったのでしょうか?

~醤油生産に必要な食材と市場に恵まれた環境~

たつの周辺の播州平野では良質な播州小麦がとれます。
また、隣接する佐用と宍粟では、三日月大豆が、
赤穂では「塩味饅頭」の記事でも紹介したように、
良質なが生産されます。
だからたつのは、醤油醸造に欠かせない
小麦、大豆、塩の3要素全てにおいて、
周辺地域から良質なものを調達することができる

醤油づくりにはもってこいの場所というわけです!

さらに東側を流れる揖保川の水は
ミネラルの少ない軟水
であることから、
淡口醤油醸造に最適な環境でした。

また、安定な市場が近くにあるというのも
醤油醸造に拍車をかけました。
素材の味が活かせ、料理の色を消さない淡口醤油は、
素材本来の色や味を引き出した料理に価値を見出す、
近隣の京都や大阪で重宝された
のです。

〜清酒業と淡口醤油〜

たつのでは、醤油産業の繁盛と同時期に
清酒業も栄えていました。
記事の最初に、
淡口醤油には甘酒が加えられると書きましたが、
それは清酒業が醤油産業と密接に関わっていたことが
きっかけなんでしょう。


【うすくち龍野醤油資料館へ】

醤油について調べているうちに、
醤油醸造についてもっと知りたくなったので、
龍野城下にあるヒガシマル醤油さんが運営されている
「うすくち龍野醤油資料館」へ行ってきました。
この資料館、入館料はなんと10円!!
駐車場もあるので、とても気軽に薄口醤油を知ることができます。

ラッキーな事に、
わざわざ館長さんが一つ一つ説明しながら
館内を案内してくださり、
さらに、一般公開してない昔の醤油蔵にも
入らせてもらえました!

昔の職人技が光る製法から、
現代の機械化された製法に至るまでの過程や、
製造に必要な道具は一つ一つ、
その形状や作りに工夫が凝らされており

道具や樽作り専門の職人さんも沢山いたこと、
ヒガシマル醤油さんの歴史や
醤油に対するこだわりなど
様々なことを知ることが出来ました。
醤油資料館は全国を見てもここだけだそうで、
創業当時からの資料が数多く残っているのも
ヒガシマル醤油さんくらい
だそうです。
また、現存する醤油蔵は雨漏りの問題があるそうですが、
登録有形文化財なので、屋根の瓦を葺き替える等、
手を加える事ができないため、
管理が大変だと仰っていました。
館長さんと直接お話ができ、
醤油についてだいぶ知識が身につきました。
とても有意義な時間を過ごせて良かったです。

実際に使われていた仕込蔵
大豆や米を炊く地釜
出荷した後戻ってきた樽に貼られていたラベルを剥がす装置
実際の醤油蔵(非公開)
外観(昭和初期に建てられた登録有形文化財です)

さて、ここまで淡口醤油について見てきました。
醤油の世界も奥が深そうですね。

長くなったので、食べ比べのレポートは
次の記事にて。

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