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僕は母になりたい。

以前「父がわからないものは、母だってきっとわからない」という記事で「僕が抱いても泣き止まないんですよ〜」という人の話を彼女にしたら「泣き止むまで抱っこするかどうかってだけのことじゃない?」と返された話を書いた。記事はたくさんの評価をいただき、楽しんでるとはいえ寝不足だし、夫婦で一杯飲みに行くわけにもいかない育児の日々の糧になった。しかし、今なら、そう書けなかったかもしれない「僕では泣き止まない時がある」そう思う。そして僕はようやく大切なことを悟った。

我が子、哺乳瓶を拒否するようになる。

育児でやらなければいけないことの多くは難しいことではない。単純で短時間で終わる事がほとんどだと思う。力のある男性の方が得意なこともあるが、多くは男女に関係なくこなせることだ。とにかく大変なのは「24時間いつでも最優先して、ただちに行わなければいけない」ということ。だから、両親の二人ともが、全てを行えることが一番良い。他にも家族が同居しているのなら、誰もが等しく全てをやれるようになっておけば、それに越したことはない。ウチはそうしている。僕はほとんどのことを彼女と同じようにすることができる。しかし唯一、母親でなければ出来ないこと、それは授乳だ。僕がいかに家族を愛して、何でもやってあげたいと強く願ったところで、母乳をひねり出すことはできない。

まだ哺乳瓶しか飲めんのよ

しかし、世界には哺乳瓶、そして粉ミルクがある。これさえあれば「母乳を出せない」という僕の唯一の弱点を補うことができる。退院してから1ヶ月くらいは、母乳をおっぱいから直接飲むのが難しかったので、搾乳した母乳と粉ミルクをどちらも飲ませていた。その頃は搾乳の作業もあり、毎回オムツも交換していたので、朝まで3時間ごとに僕も起きて、一緒に授乳して、寝かしつけをしていた。むしろ僕は昼間仕事に行くので、夜は少しでも彼女を寝かせてあげたいと思っていた。搾乳がないタイミングでは、僕がミルクか、搾乳した母乳を飲ませて、彼女にはそのまま寝ていてもらうこともあった。

しばらくすると、大きくなった我が子は、おっぱいからグングン母乳を飲めるようになった。すごくうれしかった。はじめておっぱいからゴクゴク飲み始めたころは、その二人の姿を見ると、なんだかもう感動して泣きそうになった。美しい光景だった。愛が溢れかえって、溺れるかと思った。窓からは神々しい光が差し込み、彼女と我が子を照らしていた。(早朝だったからだ)

おっぱい、素晴らしいね

しかし、成長と共におっぱいの素晴らしさを知った我が子は哺乳瓶を拒否するようになる。徐々にというより突然、さっぱり飲んでくれなくなった。唇をつぐみ拒否して、泣く。泣いた隙に口に咥えさせても、ものすごくイヤな顔をして2、3回噛むと舌で押し出してくる。そして泣く。諦めて、彼女がおっぱいを差し出すと、すんっと泣き止んでゴクゴク飲む。それが何度か続き、あまりにいつも泣くので、彼女も無理に哺乳瓶からミルクをあげなくなった。僕も諦めて時間が来たら、彼女を呼ぶようになった。

イヤなものは、イヤなんだ

我が子、早くも人見知りする。

時を同じくして、早くも人見知りらしきことをするようなった。まずは彼女のお母さんに抱かれて泣いた。お母さんもショックで泣いていた(かろうじて泣いてはいない)。「こんなに早く人見知りするとか、我が子、天才だ〜」とか言っていたら、いつの間にか眠くなってグズったが最後、僕が抱っこしても収まらなくなっていた。最初は「おっぱいを与えないと収まらない」だったので「あまえんぼうだな〜」と、おっぱいのない自分を慰めていたが、そうではなかった。おっぱいを与えるまでもなく、彼女が抱っこした瞬間に泣き止んでいる。僕はその事実を受け入れたくなかった。まさか、自分と彼女に、おっぱいがないという以外に何かしらの差があるだなんてショックだった。家事の多くを担当しているとはいえ、母乳を出す以外の育児は、彼女と同じように出来るべく努力をしてきた。もちろん、仕事に行っているので、時間的な制約はあるが、家にいる間はいつも我が子と接してきた。それなのに何故…。これ以上、あなたを愛することなんて僕には出来ない。嗚呼、何が足りないというのだ。僕は少し泣いた。

なんで、泣いてんの?

我が子、シッターさんとお留守番する。

我が子が産まれる前、こんな風に想像していた。「どんどん人に会わせて、どんどん抱っこしてもらって過ごせば、預けて夫婦で外出できるはず!その方が我が子も楽しく過ごせるし、僕たちもストレスなく過ごせて、結果、楽しく育児をできる!絶対楽しい〜!」と。そんな話もしていたはずだが「ベテランお母さんの友人3人にシッターをお願いする」という約束が迫った時、こんなタイミングで、我が子を誰かに預けるなど想像することができなかった。彼女も「修行みたいに、疲れるまで泣けば寝るみたいな経験はさせたくない…」と言っていたし、僕も同感だった。結果、彼女だけが外出し、僕は家に残り3人のベテランお母さん達のシッターを見守るということになった。

僕も家にはいたものの、3人のベテランさんたちに我が子を任せて、普段できない家のことをいろいろやった。ほどなくして案の上、我が子は泣き出した。3人のベテランさんたちは、泣こうが暴れようが、何ともないようで、我が子を抱っこしたまま、いつも通りおしゃべりを続けている。それを横目に見ながら僕は「泣き止むはずがない」「眠るはずがない」と思っていた。どうせ泣き続けるなら「せめて自分が」といつ声を掛けようかと迷っていた。もう30分も過ぎたかと思ったが、時計を見ると10分も経っていない。しかしそれから数分(僕にとっては、さらに30分)過ぎた頃、我が子の泣き声が「寝る寸前モード」になった。「えーん、えーん」とセリフのように泣いてる。そして、そのまま寝た。「おおーすごいー」と言っていた僕の顔はひきつっていなかっただろうか。あそこまで泣いたら、彼女に抱かれるまで泣き止まなかった我が子は、彼女ではなく、そして僕でもない人に抱っこされて、今眠っている。そして、目覚めたら続きで泣くと思っていた我が子は、目覚めるとみんなと遊び、お腹が空いたので僕がミルクを飲んでくれるだけ飲ませたら、また泣きはしたもののベテランさんの腕の中で眠りについた。

寝るときゃ、寝るよ

僕に出来ないはずがない。そして悟る。

翌日の午後、我が子がまた眠くなりグズり始めた。僕はグズる我が子を抱っこして眠らせようとした。昨日ベテランさんがしていたように、同じ体勢で、根気よく、ひたすらに揺れ、歩いた。5分が過ぎた。もちろん眠らず、泣き声は大きくなっている。僕が眠らせようとしているのを察した彼女は心配しながらも、陰に隠れて見守ってくれている。しかし、15分が過ぎ、20分が過ぎても泣き声は変わらず、僕は無表情で彼女に我が子を預けた。その瞬間に我が子は泣き止み、僕を不思議そうに見つめ、なんならニコニコしてくれた。僕は泣いた。完全に涙を流して、彼女に慰められるほどに泣いた。

そして気がついた。

自分が感じた悔しさみたいなものはなんだ?自分が沢山愛情を注いだのに、我が子が自分に抱かれて寝てくれないこと?普段一緒にいるわけじゃない人のところで眠ったこと?少なくとも彼女の次に自分の時間を削って頑張っているのに裏切られたとでも?そんなことはない。我が子は僕のことが、誰がどう見たって大好きだ。ただ、今は寝る時、彼女と居たい。なんとなく、今は女性の方がいい。ただそれだけのことだ。自分が沢山の何かを与えたから何もかも自分を選んで欲しいだなんて、何て身勝手な話だろう。中学生の初恋か。

小さくとも我が子は我が子で生きている。これからどんどん自分で選んで大きくなっていく。僕の思う通りになんてなるわけがない。でも我が子が、他の誰でもなく僕にだけ感じている感情がある。それは、なんにも言わない我が子からでも伝わっていると、100%自信を持って言える。今は抱っこで眠ってくれなくても、僕にできることをやろう。掃除して、ご飯作って、お風呂に入れて、おまるに乗せて、抱っこして出掛けよう。我が子は僕が大好きだし、僕も我が子が大好きだ。自信がある。もう母でも父でも、どっちでもいい。

母に抱っこされて、父を見るのが最高よ〜

さあ、そろそろ、離乳食はじめるよーー!

これ、私の足なんだ~最近、見つけたよ~

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