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ワンオペは、やってみなけりゃわからない。(やってみたら泣いた話)

玄関ドアの前まで帰ってきた時、荷物で両手がふさがっていたら、鍵を開けるために、一瞬両腕の荷物を片手に持ち替えて、片手を自由にしたりする。その鍵を地面に落としてしまったら、諦めて買い物袋を地面におろすかもしれない。でも、我が子は気楽におろせない。(時がある)

二人だから出来ていただけ

彼女と我が子が里帰りから戻り、3人暮らしが始まったばかりの頃、僕が出勤して数時間後に帰宅してみると、薄暗い部屋の中、彼女はソファーで我が子を抱っこしたまま「…トイレに行きたい」と小さな声で言った。哺乳瓶などを消毒する容器のふたは空いたまま、ソファの横には空になった哺乳瓶が倒れていた。我が子を受け取ると、彼女は数時間振りに立ち上がったせいか「ありがとう…イタタタ」と呟いた。トイレに行けないなんてことがあるのか?その時は、そう思ったけど、考えてみると僕が家に居る時は、彼女も居る。だから腕は4本あって、どちらかが我が子を抱いても、もう一人は自由。だから想像できていなかったのだ。僕と彼女が居れば、どちらかは常に動いているから、家事は順次片付いていく。我が子が眠っている間には、二人でご飯を食べたり、のんびり会話する時間に充てることが出来ていた。だから、すごく大変だなと感じてはいたけど「これなら頑張ればできるな」という大きな勘違いをしていた。

ああ~はいはい、それ、勘違いな

片手で出来ることは、ほんの少ししかない

紐を結ぶこと、洗濯ものをハンガーに干すこと、取り込んで畳むこと、フライパンを持って中身を混ぜること、キャップを開けることも閉めることも、布巾を絞ることだって、片手では出来ない。片手でも出来ないことはないけど、何倍も手間がかかることを挙げれば、家事のほとんどに当てはまる。ましてや、片手でずっと抱いているものは、くにゃくにゃにやわらかくて、3㎏か4㎏あって、決して落とすことは許されないもの(我が子)なのだから、僕なら洗濯も料理もしない、布巾を絞ろうとなんてしないし、キャップを開けなければ使えないものは諦める。我が子と留守番をしてわかったことは、我が子を抱っこしたままでは、なんにも出来ないし、する気にもならないということだった。

わかってるよね?降ろしたら、泣くから

特に最初の頃は、我が子のリズムやサインが全くわからなかったので、ミルクの時間には早いはずなのに泣き始めたら、とりあえず抱き上げてみる。そして、抱き上げてあやしてもダメならオムツを替えてみる。さらに無理だとなって、ミルクをあげてみようと思った頃、我が子はすでにアクセル全開で泣き叫んでいる。下に降ろそうものなら、烈火の如く信じられないような大きな声で泣く。とにかく、泣きすぎてむせる我が子が、かわいそうでかわいそうで抱き続けるしかなく、片手で抱えたまま、ミルクを作ろうとするも、粉をこぼし、哺乳瓶を倒し、遅々として進まない。そんなことをしている間にも、泣きはヒートアップし続ける。やっとのことでミルクを飲ませ終え、寝かせようにも、大泣きしたのがくすぶっているから、とにかく抱っこしていないと泣く。哺乳瓶を洗うことも、キッチンを片付けることも出来ず、気が付けば部屋は暗くなっている。ようやく眠っている我が子が起きて、再び泣き出す恐怖に震え、降ろすことが出来ずに立ちすくんだところで、トイレにも行けていない自分に気が付く。そして次のミルクタイムは、もうすぐそこまで迫っている。

泣きたいから、泣く!
泣くしか方法がないのだーー!

僕は2回目の留守番でマジで泣いた。理由もわからず何時間も泣き続ける我が子に「なんで泣いているかわかってあげられなくてごめん…」と言いながら、ぼろぼろと涙をこぼした。もちろん、そんなことを言われても我が子は泣き続けるから、抱っこしてみて、オムツチェックしてみて、ミルクあげてみて、部屋を歩き回ってみて、スクワット試して。。と永遠に続けてみるしかない。一人で外出した彼女が、心配で予定よりも早めに帰って来きてくれた。彼女がドアを開けた時に見た光景は、トイレに行けないなんてことがあるのか?と疑問を感じた僕が見た光景と同じだったはずだ。

疲れ果てたから、あなたの上でなら寝る

一人でやってみないとわからない

これ(育児)をやりながら、家事をこなしている人たち、信じられない。事もなげに「やるしかないから」と言ってのける皆さん、本当に尊敬しかない。あなたたちは皆、超人だ。我が子の命という大きすぎる責任のプレッシャーと戦いながら、山積みの小さな作業を全て一人でやるなんて凄すぎる。そりゃあ、家でも抱っこ紐を装着しなければ、何にも出来るわけがない。そんな風に、自分のこと以外に全ての時間を使った経験は僕にはない。僕なら、我が子でもない同居している大人のことを、世話する気には絶対ならない。自分でやれとケンカする。

そして、育児をしている人に家事を全部任せてしまえる人が信じられない。留守番2回目、たった数時間で涙しながら、僕は「許せん!」と怒りに震えた。
「里帰り?させてなかったよ、ウチは。だって、俺のごはんどうするのよ~」とか言うんだよ?は?カップ麺でも何でも食えっての!お湯くらいわかせるだろ!仕事から帰ってカップ麺かよ、だと?じゃあ、砂利でも口に詰めておけ!ねえ、そう思わない!?そんなんマジで、居ない方がマシだよね!!!と帰ってきた彼女に渦巻く怒りをぶつけたが「それ…誰の話?なんか大変だったんだね~。我が子~会いたかったよ~」と他人事だった。だってそう、ウチの話じゃないんだもの、そりゃそうだ。僕が怒っていることがおかしい。でも僕は、これを彼女に押し付けることなど、もう絶対にできない(最初から、そんなことしていないが)。あの日、ソファーで数時間動くことが出来ずにいた気持ちが痛いほどわかったから。

こんなかわいい子、泣かせてはおけん

まず一度、ワンオペ体験せよ

擁護する気は1ミリもないが、世の中の多くの家事や育児をせずにいられる男性の多くは、産まれたばかりの我が子と二人きりで半日過ごした経験が一度もないのではないだろうか。二人で居る時、手を貸しているだけでは、絶対にわからない部分が大き過ぎる。それを体験して尚「こりゃ、大変だから、やっぱり奥さんに任せよう」と言えてしまうのなら、手の施しようがないかもしれないが、体験させれば理解できることが、ものすごくあると思う。「母乳を自分の乳首から出すこと以外は全部やれるはず」と息巻いていた僕が、1ヶ月過ごしても何にもわかっていなかった。協力的でない人の多くは、どれほど大変かを、実際にはこれっぽっちも理解できていない。恐ろしいことに「なんとかなるでしょ」と盛大な勘違いをしている可能性も高い。本当に二人きりにしてしまうのは心配だろうから、横に居るけど何もしないという時間(必ず4時間以上、一人授乳体験は必須)を体験させることができれば、きっと気持ちは変わるんじゃないだろうか。

やらずにわかるわけなどないぞ

とはいえ、それを体験させることが困難なのが現実か…と思うと暗い気持ちになるが、協力しなきゃと実は思っている人、後ろめたい気持ちが少しでもある人なら、提案して試してみる価値はある。腕も腰も背中も、もちろんだが、気持ちがこんなに辛くなることが少しはわかる。自分の無力さに打ちのめされるはずだ。それを実感すれば、乗り越えたパートナーの偉大さを痛感することだろう。

我が子のパワーと、毎日育児をしてくれているパートナーの偉大さを、全ての家庭で理解し合える日が来て欲しい。

なんか二重になりそうなんだよー


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