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#12 KJR物語 ~Origin~


私は自転車が好きだ。


車の免許も手に入れた。
原付もある。
人はいつの間にか文明の力にあやかり、その凄まじいまでの快適さにまるで理性を失ったかのように身を委ねる。

気に食わない。
まるで当たり前のように、それが正解であるかのように。
腹立たしい。
他人の決めた当たり前なんてクソくらえだ。

人々は忘れてしまったのだろうか。
涼しい風に吹かれ、時に猛暑にさらされながらも、自らの足で車輪を回し、車体に推進力を加えながら見る、朝日や夕焼け、星空の美しさを。
快適であることよりも価値がある。

私はそう思う。
アナログ思考すぎてオドロク。

気付けば大好きな夏が終わり、どこか寂しいと感じる季節になりました。
自転車で汗ばむからと半袖短パンを貫いてきましたが、そろそろ潮時ですね。
長袖長ズボンを着て、原付に乗ろうかしら。

そんな続編です。どうぞ。

第四話 七転び八起き

15歳。
晩夏。

中学最後の大会の敗退が決まったはずの蛙は、晩夏であるはずなのに、未だに蜃気楼に揺れ、まるで砂漠の上を彷彿とさせる人工芝の上を走っていた。

千葉県某所。

「こいつらまとめて全員しばいたる」

地元広島から遠く離れた地で蛙は、燃えるような熱いピッチの上で心を燃やしていた。

中3の夏は進路を決める時期だ。
蛙は負けに負け越しているこの人生の中でも培ってきた哲学がある。
それは、
「自分のレベルよりもよりレベルの高い環境に身を置く」
ことだ。

やるからには上を目指した方がよい

母の教えだ。


千葉県某所に位置する全国でも指折りの強豪校のセレクションに参加していた。
その年のスポーツ推薦の枠は18とか20とか確かそのくらいで、既に世代別代表などの選出歴がある選手が3人決まっていた。
即ち枠は15〜17。

集まった選手は100を超えていた。
Jリーグの下部組織の選手が肩で風を切りながら歩く。
やはり関東の人が多いのか、周りの殆どの人が大体のヒエラルキーを理解しているみたいだった。
セレクションでのゲームでもそいつらが伸び伸びとプレーしていたし、ポジションだってそいつらが好きなようにやっていた。

だが、数々の挫折を乗り越え、削りたての鉛筆の如く尖りきっていた中学3年の田舎者「ロケットえんぴつ蛙君」は魅せた。

味方のボールをタックルで奪い取り、強引にゲームへと絡んでいった。
たぶん頭おかしいと思われたと思うけど、今思えば完全に頭おかしい。
まあそれはさておき、蛙は無事席を確保した。

よーし、進路も決まったし遊ぶぞーと思っていたある日の放課後。

通っていた中学の校長室に呼び出された。

親もだ。

生徒会執行部として過ごしていた私は、真面目に学校生活を送っていたので冷や汗が止まらなかった。
私は何をしでかしてしまったのかと…
ひょっとして家が1番遠いから最後に帰りが1人なることを嫌って学校付近に住む友達を自宅まで連行していることがバレたのか。

ドキドキしながらドアを開けると、大人が二人いた。
一人は校長先生だ。
もう一人は当時の皆実高校の監督だった。
有名な人だったので、すぐに分かった。

話はシンプルだった。
他の高校へ行くと聞いた。
僕に君を育てさせて欲しい。

直のスカウトだった。

だが、心は決まっていた。
千葉の高校に行く。
レベルが高いところで。
母の教えを守らなければいけない。
そう思った。



かつて母は言った。
「やるからには上を目指しなさい」
これは、私のバイブルとなっている
そして、その日母は言った。
「家から近いし皆実にしなよ」

私は皆実高校に進学した。

おいおい。待て待て。
なんやねんお前。そう思う読者の方が多数だろうが。
私は確かに母に伝えた。千葉の高校に行きたいのだと。
だが、母は様々な理由をつけて私を説得した。

だが私は思う。

たぶんスカウトにきた監督がイケメンだった事が全てだろう。たぶん、彼がブサイクだったら私は今の人生を歩んでいない。
人生の巡り合わせは奇妙な物だ。
もちろんそれだけが理由ではない。
他にしっかりした理由などは沢山あるが、ここではこれだけを語る方が正解だろう。

そして、広島皆実高校へと入学した。
皆実は地元広島の選手で全国制覇を狙うというスタイルがある。
地元広島で名を馳せるエリート達。
かつて私をねじ伏せてきたライバル達がそこにいた。
蛙は胸が高まった。
また一つ大きな海になった。
また新たな壁にぶち当たり、弾き飛ばされ、立ち上がる。
そうやって、溺れながら泳いでいる方がきっと自分には合っているのだ。
荒波を好み、少し逞しくなった蛙の新たな航海がこうして幕を開けたのだ。

TO BE CONTINUED

P.S. noteを書き終えて、だいたい2週間くらい投稿せずに温めますので長袖長ズボンどころか上着を着なダメな時期になってました。ですが、パジャマは半袖半ズボンです。寒い中毛布にくるまって寝るのが堪らなく好きです。そんな同士いますか?

#海外 #日記#サッカー#自己中の最上級な母

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