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今聴いてる曲で語る: Nanimono

家から徒歩十分のところに映画館があった頃、仕事が終わってから、ちょっと安いレイトショーで映画を毎日のように見ていた。家で見るより大画面大音量の映画はやはり、(陳腐な表現ではあるが)没入感があって、見てる間は現実を忘れられて好きだった。

とある映画をひたすらに見ていた時、CMで流れてくる「何者」がだんだん気になっていた。この中田ヤスタカの曲が気になったのもあるが、大学生活も就活戦争も経験しなかった自分が、その世界にせめて間接的に触れてみたかったのかもしれない。公開されてしばらくして、満を持して見に行った。

「大学ウェーイ!就活つら……オレたちのモラトリアムが今終わる――。」という感じだろうと、勝手に、鼻で笑うつもりで見に行った。そして映画が終わる頃、自分は泣いていた。

気づいたらSNSの生活がそこにあって、SNSを必死に更新している同級生を、世間を浮いたものとして見ている自分にとって、辛すぎた。彼はきっとそんな自分だ。思わぬところから殴られて、しばらく呆然とした。

人から裏切られるのは嫌いだが、物語に裏切られるのは好きだ。またこういう映画を見たいなぁ。

2023-02-17 一部の誤字、言い回し修正

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