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カッコいい 2/100

2006年のほぼ日の対談『The Apple in my Heart〜奈良美智さんの中へ、ほんの少し』で、アーティスト奈良美智さんが糸井重里さんに語った言葉が、今でも記憶に残っている。

奈良 なんか、迷うときって、たいてい、へんな欲があるときなんですよね

糸井 失くしたくないものが増えたときは危ないよね。

奈良 そう。だから、なにかで迷ったときには、「昔の自分がかっこいいと思ってた大人」を思い出せばいい。二十歳のころの自分が理想としてた大人ってどんなだったっけ(どっちがカッコいい?)って思うと、もう、すぐ解決する。

二十歳のころの自分の理想?

誰をカッコいいと思ってた?

ジム・ジャームッシュ
リュック・ベッソン
クエンティン・タランティーノ
ジャミロクワイ(Jay Kay)
キース・ジャレット
コーネリアス
桑田佳祐
リチャード・ドーキンス
立花隆
沢木耕太郎
.... etc.

いろんな顔が思い浮かぶけれど、ぶっちぎりの第一位は村上龍さんだ。

二十歳の僕は「村上龍信者」だった。

『コインロッカーベイビーズ』に脳ミソを撹拌され、『すべての男は消耗品である』にコンプレックスを刺激されまくり、『愛と幻想のファシズム』と『69』に「バカなままだと奴隷に成り下がる」と危機感を煽られ、以降はすべての作品をバイブルのごとく読み崇めた。

当時の僕には、龍さんが無敵に見えた。桁違いの才能と行動力。すべてを理解し、すべてを見通し、すべてを手に入れる力を持ってるように見えてた。

龍さんの書いたものはすべて読み、龍さんが良いと評するものはすべて調べ、龍さんが「クズだ」というものはすべて「クズ」と見なした。

あれから二八年、四八歳になった僕には、龍さんが「おもしろきこともなき世の中をおもしろく」生きるために試行錯誤を繰り返す「無類の努力家」だったのだということが分かる。

新しい知を貪欲に学びつづけ、間違いや失敗を重ねながらも、破壊力のある作品、鋭利なことばを世に放ちつづけることで、若者や弱き者を縛り、自由や進歩を邪魔するあらゆるパワーに対して、身をもって、行動をもって、抵抗の意思とアクションを示そうとしていたのだということが分かる。

批判や誤解を受けるような言動も多かったけれど、めちゃくちゃマジメで、繊細で、面倒見のいい人だったのだと思う。

二十歳の頃とはずいぶん視点が変わったけれど、村上龍さんは、今でも僕のヒーローである。

最近あまり見ないけど、元気なのだろうか?

龍さんみたいに、死ぬまで学びつづけ、変化や批判を恐れず、自分の好きや推しを発信できる人でありたい(なりたい、か)と思う。

※15分以上かけて書いてしまった... 思うがままをことばに変換するのは、思いのほかムズい

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