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読書感想:「パチンコ」

面白かった。
最初から最後まで。
これは、お勧め。

「パチンコ」ミン・ジン・リー著

日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。見知らぬ都会の匂いのするハンスと恋に落ち、やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子がいいることを知らされる。許されぬ妊娠を恥じ、苦悩するソンジャに手を差し伸べたのは若き牧師イサク。彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡ることになった……

アマゾンより

この本も「積読」に入ってた一つ。
元々、6年前だったか、どなたかのブログでこの本が進められていて、それでKindleで英語バージョンを購入していたのだが、何とも、電子本という形態が合わなくて、放置状態だった。そのあと、数年前に、デンマークの本屋さんで破格の値段で売られたのを購入。(つまり、言語は異なるけど、電子バージョンと紙バージョンと同じ本を2つ購入したことになる。)その紙バージョンを、ようやく読んだ。紙バージョンを購入してはじめて知ったのだが、この本、分厚い。600ページ。

デンマーク語版。この表紙、なぜこの絵にしたのだろう?と思ってしまった。こういうシーンは本中どこにもなかったと思うが。

あらすじを予め読まずに本を買うので、この本は、てっきり韓国の話だと思っていた。読んでびっくり、実は在日韓国人の話。主人公の韓国人女性の生まれてから、ほぼ亡くなる前の一生分の話。

この本がPage-turnerなのは、文章が凝ってない、背景を詳細に描き過ぎない、テンポが早い、からかな。つまり、映画のようだった。壮大な映画。6時間くらいの。いや12時間かな。観た後ぐったりする、でもお腹にぐっさり刺さる。

この主人公の女性、「おしん」を思い出させる。って、あの日本中を涙させた「おしん」を知ってるのはもう40代以上なのかな。子ども達のために身を粉にして一年中働き続ける。この本の主人公はただ貧困なのではない。本の中では、韓国が日本に占領中、日本に移住した後、韓国人というだけで、「下級階層」扱いされて、子どもは学校でのいじめから始まり、大人は働きたくとも働き口がない、結局限られた仕事しかない、住むところも制限される、とういうような理不尽な仕打ちを日常受ける。

私は日本で生まれ育ったけれど、ど田舎という土地柄なのか、在日という人たちが周りにいなかった。(もしくは気づかなかったのかも。)なので、この本に書かれていることが、その時代は一般的で、現在はどうなのか、ということが全くわからない。加えて、この本はフィクション。よって、ここでそこを議論することはしない。ただ、この本を読んでる中思い浮かんできた言葉は、「運命」。なぜあの時出会ったのか、なぜあの時あの決断をしたのか、なぜあの時。その都度、その時にとって最善の選択をしたと思っていたのが、期待と違う結果に出てしまう。「仕方がない」、「運命」、と捉えるのを嫌っていた主人公だけれど、時と場合によっては、そう受け止める方がいいこともあるんじゃないかな、と未熟な自分ながら思う。誰かのせい、何かのせい、と非を置きたくなるのは分かるけど、いつも物事が白黒はっきりしているわけではない。

主人公の最初の息子、ノア。この子、「アラバマ物語」の主人公の女の子の兄を思い出させる。二人とも、真っ直ぐ。国も時代背景も、何もかも違う二人だけど、二人とも人格者の父を持ち(ノアの場合は、義理の父になるけど)、父の教えを真っ直ぐに受け止め、真っ直ぐに生きていこうとする。ボキャブラリーが少な過ぎて上手く形容できるできる言葉が見つからないけど、純粋というか、ともかく真っ直ぐ。でも世の中は真っ直ぐには出来ていない。だから、時には曲がることも必要だし、曲がるための余白も必要。でもそんなの、失敗した後に気付くもの。
もう曲がりに曲がりまくってる私からすると、この二人の真っ直ぐな姿勢に心を打たれるばかり。ネタバレになるので詳細は書かないが、ノアの最後は衝撃すぎた。家族の苦しみを一身に背負ってしまったのかな。

ちなみに、著者は、日本に住んだことがないのかな?と思わせる点が幾つかある。その一つが日本語。なぜか会話の中に日本語が結構な頻度で出てくる。その一つが「maji?(マジ?)」とか「Honto?(ホント?)」。主人公の二人目の息子が上司に向かって言ったのが「maji?」。いや、上司に向かってそれは言いませんよね?「ホント?」も、相手や場合によって、「ホントに?」「本当か?」とか微妙に言い方が違いますよね?それを全部一緒に「Honto?」とされると、すごく違和感。普通に原作の英語にしてほしかった。
あと、結婚したのに、相手が韓国人とは分からなかったって、それってありえるのかな。戸籍見たらわかりますよね?あと、銃は一般人は簡単には入手できませんよね。あと、主人公の孫の彼女は、何のビザでそんなに長く日本に滞在できてるのだろうか?とか。

まあ、そんな細かいことは置いといて、この本は本当に映画のようだった。ネタバレが出来るなら、もっと色々書きたいところだけど、この本は本当にお勧めなので、ここら辺にします。

あと、Apple TVでドラマ化されてるみたいで、もしかしたら、本より映像化されてる方がいいのかも。観てみたい気もするけど、今、ノアくんを見れる気はしないな。

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