拡大鏡?老眼鏡? シニアカード企画開発話

画像1 机の引き出しの奥から懐かしいモノが出てきました。 薄くてカードサイズなので、どこにでも紛れ込みます。 モノは30年程昔に企画開発したカードサイズの拡大鏡でした。 当時はカードサイズの色んな機能商品が流行っていました。 文具用品、アウトドア関連、とにかく何でもの感じでした。 会社でも老眼鏡を展開していましたから、その補強に何か開発できればと考えました。 そこで、カードサイズの拡大鏡(老眼鏡)を作れば「良いな」と思いつきました。
画像2 手持ちのカードを測ると85mm×54mmでした。 このサイズの中にレンズを組み込むのです。 日本人男性の平均瞳孔間距離(PD)は64mmです。 PDは黒目の中心と中心の距離のことです。 当然、人によって距離は異なります。 拡大鏡(老眼鏡)は目が近くのモノを見るのに内側に寄ります。 従い60mm~62mmのPDを設定すればよいことになります。
画像3 幅85mmの中にPD60~62mmのレンズを組み込むには十分なサイズです。 鼻幅を22mmと想定し、レンズサイズ28mmとすれば、 レンズ幅28×2=レンズ幅56+鼻幅22=78 カード横サイズ85-78=7mmのノリシロができます。 7mmを4か所に振り分けると1.75mmのノリシロ(余白)を得ます。
画像4 これで、図面を書けば良いのですが、これでは天地の余白(何もないところ)が 多すぎます。 では天地54mmに上下2つの拡大鏡(老眼鏡)を組み込めばとなります。 作りながら、設計しながら、企画しながら発展させて完成品を設計することになります。 天地21mmのレンズとすると、 54-(21×2)=12mmの余白となり、3か所で割り当てると1か所4mmとなります。 大まかな計算と設計はこれで完了し、あとはデザイナーに美しくデザインしていただくになります。
画像5 このシニアカードは胸ポケットに入れて持ち運ぶ前提と考えて、そのケースは?となります。 単純に塩ビケースを考え、同時に名刺も入るサイズにします。 使う立場であると、名刺も入れておきたくなると考えたからです。 ケース資材の発注時に特に注意したのは、レンズ本体とケースの相性で、経時変化でケースとレンズ本体が 可塑剤などの影響でクモリやヒッツキを懸念しました。 業者さんには経年での問題点がないように、くれぐれもお願いをしました。
画像6 この結果は30年を経た今、包装から取り出しても、何ら問題がありませんでした。 さすが日本製です。 業者さんも気を使っていただき完成度のいい製品に仕上がりました。
画像7 このシニアカードが出来上がり、モニターテストに意味も兼ねて、保険業をしている従兄に使ってみてと 渡しました。 渡したことを忘れていたのですが、10年程経過し、老眼鏡の必要な年齢になった従兄は細かい字を見るときに あのシニアカードを取り出して使っているのです。 お互いにモニターの経緯を忘れていました。 私が渡したことも従兄は忘れていたようです。私も忘れていました。 何も言わずに「老眼鏡は使わないの?」と聞いたら、これで充分とシニアカードを示しました。
画像8 この製品の企画開発は思った通りになったと、ほくそ笑んだものでした。

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