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『おれたち LIVES MATTER』「サブカル千夜一夜物語②」感想

はじめに、わたしにこのような楽しく思索にふける機会を与えてくださった『おれたち LIVES MATTER』のみなさんに深く感謝申し上げます。そして、これからここに書かれていることは、あくまで個人の感想なのでご了承ください。しばしお付き合いいただければ幸いです。



1967年と聞くと私はFenderのローズウッド指板のストラトキャスターを思い出す。加えて1958年、1959年と聞けばGibsonのレスポールが目に浮かぶ。いずれも名器とされるエレキギターが生まれた年だ。
まあ1957年や1963年にもそれぞれ名器や好きなギターは存在する。

それらは現代においてオールドギターと呼ばれ大変高価な代物である。実際に何本か弾いたこともあるけれどそのサウンドはやはり素晴らしいものが多い。


ヒッピームーブメントの約10年。そして現代。

そして、アメリカ国防総省ペンタゴンを思い出さずにはいられない。


ヒッピームーブメントに興味を抱いたきっかけはまず音楽。なかでもサイケデリックミュージックで、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、グレイトフル・デッド、ジェファソン・エアプレインなど挙げればきりがない。

そして、何と言ってもサイバーパンク小説である。

いわば逆引き的に行き着いてしまったわけで、遡る程にその本質的な主義や思想に興味が沸いた。


心理学者ティモシー・リアリーがビートジェネレーションの大物たちと出会い、最終的にLSDなどの幻覚剤による神秘体験、つまり「世界と個人が一体となる感覚を体験すること」こそが重要であると考えた経緯がおもしろい。ようは私の興味本位なのである。

──しかし、

当時は技術革新によって激変していく世界構造と、急速に効率化していく高度管理社会の只中。これはまさに現代の構造によく似ている。

それらに対する不安やしがらみから、自らの意識を変革することによって「世界そのものの認識を変える、変えたい」ということがムーブメントの源流なのだろう。

世界と一体化した人間は基本的には社会に対して害を為すとは考えにくい。つまりは法律すら要らないということで、突き詰めるとそれは国も要らず、国籍、人種、LGBTQ+やそのほか社会構造による「差別」がなくなり世界は平和で満たされる、ということである。

そのためのLSD。しかし、この幻覚剤は「グッドトリップ」をすることが重要であり、そのための「チベット死者の書」であり「グレイトフル・デッド」の音楽スタイルだったのだと思う。

まあ、デッドとしては自分たちの音楽が単にしたかっただけ、という話もあるけれど。

しかし、この神秘体験による意識改革が万人向けかといえば、些かそのハードルは高い。


対してのちに様々な集団の中から派生するヒッピームーブメント。

この二つの決定的に違うところは「自らの意識改革による新たな価値観の構築」と「私達の住むこの世界に新たな認識を与えそれらを変革する」だと思う。つまり、境界線の無い世界とあらたに境界線を作り、それを深める行為の違いで、どちらが良いとか正しいとかは簡単に言えるものではない。

当初ヒッピーたちは社会のなかの「戦争」に代表される"問題"やその他さまざまな事象を明確に浮き彫りにし、知らしめ、それらを変革しようとした。

中には派手に行動する者もいて、それらをテレビなどのマスコミが視聴率のために取り上げ、さらにそれを見た社会に不平や不満を持つもの、また思想はないが興味本位で集まる者が多数合流していく。

──まるでどこかで見た光景だ。

反社会的運動はどんどん大きくなり、ついにはアメリカ国防総省ペンタゴンを包囲して、ということになる。これが1967年10月。そしてこれを鎮圧に来た警官の銃口に花を差すあの有名な写真が撮られる。

フラワーチャイルド、フラワーチルドレン。
「武器ではなく花を」ということだ。




長くなるので端折ると、最終的にはヒッピー的な思想のみならず、その退廃的で過激な行動やファッション、つまり「ライフスタイル」に関心を寄せた若者たちの多くもヘイトアシュベリーに集まり、良くも悪くもそこはヒッピーたちの聖地と化した。あとは資本主義の大きな波に飲み込まれムーブメントは終焉を迎えることになる。

しかし、ここからが番組でもあったように今の私たちにつながるところで、ここが非常に興味深いし、おもしろい。

1970年代、当初の思想を持ったヒッピーたちはその聖地をシリコンバレーに移し、サイバースペース、ダイバーシティに最後のフロンティアを求めることになる。コンピューターを個人が使用できるようにし、今に至るというわけだ。

私たちの生活は、この数十年間にそそがれた多くの明晰な頭脳と情熱や努力、そして技術革新の上に成り立っている。

今、自分たちが目にしているモノの源流がそこにある。

そして時はまためぐる。

まさに「私たちはヒッピーの末裔」なのである。




主義や思想、価値観を自身の内側に求めるのか、それとも外側の世界に求めるのか。そして幸せとは。平和とは。自由とは。愛とは。今も昔も変わらない大きな命題です。

そして、そこから生まれるサブカルチャーやメインがあってはじめて成り立つカウンターカルチャー。

「サブカル千夜一夜物語」

『おれたち LIVES MATTER』の根底に流れるもの、そしてその愛情にふれられる素晴らしい内容でした。

はじめて聞いたあの日からはや25回のエピソード。
今後にいっそうの期待をせずにはいられないし、これからも楽しみでなりません。

素敵な配信をありがとうございました。



ここまで読んでくださった方、大変ありがとうございます。乱筆乱文失礼いたしました。ではでは。






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