界隈塾口上&荒野塾資料|戦後サブカルチャーのコード&モード


2024年6月12日

先日のNo.0に続き「界隈塾」No.1が本格始動します。今回のテーマは「微熱の継承」です。以下は長い長い口上です。ふるっての御参加をお待ちいたします。

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戦間期以降の大衆文化・若者文化を論じた、93年上梓の『サブカルチャー神話解体』と、93年に赴任した東京都立大学で30年間続けた、93年以降講義時点まで論じた「社会意識と社会構造」とで、一貫してお伝えしてきた通り、若い世代のコミュニケーションコード(何を快・不快とするかの二項図式)が5年から10年の周期で大きく変わってきました。

敗戦後に限ってそれをコード(二項図式)ではなくモード(様式㲈ノリ)で記すと以下のようになります。

 無垢な純粋さを生きる  :46~55年(10年間)

 反抗・暴走・無軌道を生きる:56~63年(8年間)

 別の価値を生きる    :64~67年(4年間)

 革命の微熱を生きる   :67~72年(6年間)

 シラケて差別化を生きる :72~76年(5年間)

 洒落た性愛を生きる   :77~85年(9年間)

 性の自己関与化を生きる :86~96年(10年間)

若干の説明をします。ルーマンが社会システムの各サブシステムの閉じをもたらすコミュニケーションのコードを以下のように記します(宮台が若干修正)。それぞれにおいて「快/不快」のコードが、動機形成と期待形成をもたらしています。

 貨幣コミュニケーション: 「所有/不所有」

 恋愛コミュニケーション: 「相手の幸い/相手の不幸」

 権力コミュニケーション: 「支配/服従」

 法コミュニケーション : 「合法/非合法」

 学的コミュニケーション: 「真理/誤謬」 

 信仰コミュニケーション: 「超越/内在」

 教育コミュニケーション: 「合格/不合格」

 芸術コミュニケーション: 「自明の破壊/自明に埋没」

           ※左辺が「快」、右辺が「不快」 

この枠組がフロイトの「無意識の理論」を下敷きにしていることは明白ですが、これらのコード依存的コミュニケーションが、社会システムをメインシステムとするサブシステムの閉じclosureを与えています。それを記すと以下のようになります。


 貨幣コミュニケーション「が」可能にするもの:経済システム

 恋愛コミュニケーション「が」可能にするもの:家族システム

 権力コミュニケーション「が」可能にするもの:政治システム

 法的コミュニケーション「が」可能にするもの:法システム

 学的コミュニケーション「が」可能にするもの:科学システム

 信仰コミュニケーション「が」可能にするもの:宗教システム

 教育コミュニケーション「が」可能にするもの:教育システム

 芸術コミュニケーション「が」可能にするもの:芸術システム

ちなみに我々の生体をメインシステムとするサブシステムとして免疫システム・神経システム・循環器システムなどがあります。

免疫システムの伝達メディアは蛋白質の三次元的形状、神経システムは電気パルス、循環器システムは圧で、相互に独立しており、そのことがサブシステム間の分化を可能にしています。

 練習問題:上記の各社会サブシステムごとに伝達メディアを記せ。

 模範解答:経済システム:貨幣価値がある/ない

      家族システム:贈与価値がある/ない

      政治システム:権力価値がある/ない

      法システム :法的価値がある/ない

      科学システム:真理価値がある/ない

      宗教システム:超越価値がある/ない

      教育システム:達成価値がある/ない

      芸術システム:作品価値がある/ない

          ※左辺が「快」、右辺が「不快」

これら伝達メディア(を支える参照価値)の幾つかは既に崩れ・混交し、サブシステムが輪郭を失いつつあります(例:作品価値が貨幣価値と同値されて芸術システムが経済システムに吸収)

敗戦後のコミュニケーションモード(を支えるコード)の各々についても伝達メディア(としての参照価値)を記述できます(詳細は「荒野塾」の「社会意識と社会造」)。

 練習問題:宮台が記す各時期のコミュニケーションモードをコードに書き換えよ。

 模範解答:無垢な純粋さを生きる  :「純粋である/ない(=汚い)」

      反抗・暴走・無軌道を生きる:「反抗である/ない(=柔順)」

      別の価値を生きる    :「若者である/ない(=世間の大人)」

      革命の微熱を生きる   :「革命的である/ない(=反動的)」

      シラケて差別化を生きる :「卓越的である/ない(=凡庸)」

      洒落た性愛を生きる   :「モテる/モテない」

      性の自己関与化を生きる :「変われる/変われない」

           ※左辺が「快」、右辺が「不快」


話を戻すと、驚くべきことに、96年以降コミュニケーションコードの変化(によるモードの変化)が消失しました。僕は「凪ぎの訪れ」と言います。長らく変わらずに続いているモードならびにコードを記せば以下のようになるでしょう(これも詳細は「荒野塾」の「社会意識と社会構造」)。

ポジション取りを生きる : 96~2024年(28年間)

     快不快コード :「ポジション取得(快)/ボジション喪失(不快)」

     伝達メディア : キャラ&テンプレ価値


すると二つのことが問題になります。第1に、「凪ぎの訪れ」をもたらしたもの(機能的前提)は何か? 第2に、「凪ぎの訪れ」によってもたらされるものは(機能的帰結)は何か?

界隈ゼミ第1回では、ゲストに新宿ゴールデン街の伝説のママ佐々木美智子さん90歳をお招きして、それらを考察させていただきます。

https://www.dropbox.com/scl/fi/9eljl70uda3zp1fwvurmu/24.06.12.pdf?rlkey=f7w139qj2v493nh0mhx5t3jxo&dl=0

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