【感想】水は海に向かって流れる
このマンガがすごい!2021 オトコ編4位の作品
ちょっとギスギスしたストーリーは人間味を感じてとても面白かった。
ただラストに関してだけは色々書いておきたくなったので自分が思ったことを書く。
以下ネタバレ
結末から言うと主人公の熊沢直達とOLの榊千紗は結ばれる。
この2人の関係は直達の父と千紗の母が不倫していてその子供同士ということになる。
千紗は母親が蒸発した後、一生恋愛をすることはないと思って10年間生きてきた。母親のことが好きだった千紗は自分のことを捨てて出て行った母親のことが許せなかった。だからといって怒っても泣いても母親は帰ってこない。そうして怒りは心の奥にしまったまま、大人になっても気持ちは捨てられた時のままだった。
一方で直達の父は家庭に帰ってきた。不倫した父親と母親がどう折り合いをつけたのかは分からないが今では上手くやっている。だから事実を知った後それを蒸し返してめちゃくちゃにしたりはしない。作中でも怒ったりはしていない。ただ気持ち悪さだけはあってすっきりしたいと思っている。千紗に幸せになって欲しいと思うのはそういう所からくるのだと思う。
こんな2人が千紗の母親に会いに行くと新しい夫との間に子供が出来ていた。千紗のことなんか露知らず、普通だが幸せな家庭を持っていた。千紗はやはり許せなかった。
ただ怒っても自分は幸せになるわけじゃない。
怒らなかったら母親を許すことになる。
これに対して直達は自分が千紗の怒りを覚えているから、(母親のことなんか無視して)幸せになってくれと言う。この言葉に救われて千紗は新しい一歩を踏み出すことが出来るようになる。
というような流れなんだけど、千紗が直達を好きになるのは分かる。自分のことを理解してくれて悶々としてた気持ちをスッキリさせてくれたから。
だけども直達が千紗を好きになるいうのは分からなかった。作中で直達が千紗のことを気にかけているのは分かる。自分は幸せな生活をしておいて千紗は母親が帰って来ず幸せではないという罪悪感。
直達は当事者ではないがスッキリしない気持ちがあるだろう。だから2人で千紗の母親に会いにいったしカツアゲもした。それで千紗の心が晴れて自分の心もスッキリしたはず。その後に恋心が残ってるのはなんで?と思ってしまった。
直達の性格は大人しく真面目でもっとのびのびと生きたいと思っている。そうさせてくれるような女性で言えば活発で明るい女性を好きになりそうなものだと個人的に思う。どちらかと言えば千紗ではなく同級生の楓のことを好きになりそう。自分の中では千紗とも楓とも何事もなく終わるのが自然かなーと思っていた。
そんなことを考えながら読んでいたので最後に直達と千紗が結ばれた時にはとても違和感があった。この作品はここまでの流れがかなり納得できるというかキャラに人間味がある内容だと思っていたので、尚更終盤の駆け足具合と結末が気になった。
作者の考えていたことが読み取れなかったのかもしれないけど、直達にとって千紗の魅力を感じるエピソード心理描写や2人の関係性が深まるエピソードがあれば分かりやすかったかなと思う。
まとめると
水は海に向かって流れるは面白い
千紗が直達のことを好きになっても直達が千紗を好きになるのは分からなかったのでラストに違和感があった
直達が千紗のことを好きになる描写がもっと欲しかった
全3巻と短いし読んでない人はオススメです。