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脳を手術したときの話

脳の部分切除の手術をしてからだいたい1年が経ちました。覚えてる範囲で入院中どんなことしたか、など書いておきます。

自分の病気について

僕は小4くらいからてんかんという病気でした。

てんかんは脳内の神経細胞の過剰な電気的興奮に伴って、意識障害やけいれんなどを発作的に起こす慢性的な脳の病気です。

症状は人によって多種多様みたいで、痙攣を起こしたり、意識を失ったり、感覚や感情の変化があったり、いろいろあるそう。

ちなみに、ソクラテスナポレオン、ノーベル賞のアルフレッド・ノーベルさんあたりもてんかんだった?噂があった?みたいで、意外とメジャーな病気でもあり、軽度なら全然気づかない場合もあるみたいな?

自分の症状について

僕の場合は、上でいう感覚(視覚)に変化がある症状でした。

「見えてるものが遠くに感じる」「距離感が掴みにくい」「物の位置座標がおかしい」といった感じです。

具体的には、「階段の1段1段がとても遠く(大きく?)感じ、怖くて降りられない」「どこを歩いているのかよくわからなくなる(その結果、駅のホームに落ちたことも)」「横にいた友達が何故か天井にいる」といった感じで、視覚的に面白い体験ができる時もあれば、命の危険に関わる場合もありました。

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頻度は小中高の頃は週1~2、大学に入ってからは1日1回という感じで、症状年が経つにつれ悪化していきました(主に大学に入って一人暮らしが始まり生活習慣・食生活が乱れたことが原因だと思ってます)。

症状の時間は10~20秒くらいで、意識も保てていたので、そこまで重い症状ではなかったかと思っています。

自分の症状の特徴として、「同じ場所や状況でよく発作が起きる」というのがあり、「電車から降りる時」や「人前で発表する時」などでは頻繁に起きていました。そのせいで混んでる電車などの閉所はめちゃくちゃ苦手になり発表もめちゃくちゃ緊張します。

そんな感じで、普通に生活はできるけど、不便なことがあったり、命の危険性もあったり、自動車免許が取れなかったり、症状が悪化してきたり、学生も残りわずかだったり、などの理由で大学院1年と2年の間の春休み脳の切除手術をすることにしました。

手術に向けての準備(検査)

2018年の夏頃に、主治医の先生と手術をしようと話をしました。

まず、9月にあさか医療センターに入院し発作が起きたときの症状の録画とその時の脳波の記録をしました。

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1週間くらいの入院予定だったのでガチガチに脳波計をつけられました。ストレスはすごかったです。

その後、11月国立精神・神経医療センターで1日検査しました。

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多分磁場を使って、発作を起こしている脳の箇所を詳しく調べる検査だった気がします。この検査で病源が右脳(の頭頂葉?)にあることがわかった気がします。

手術入院生活

3月4日にあさか医療センター手術入院をしました。

3月5日から3日間はIQテストをひたすら受けました。手術を終えた後に知能に変化がないかを調べるためだった気がします。

IQテストの合間に全身麻酔カテーテル検査の説明を受けました。

全身麻酔意識もないし呼吸も止まる目とか開く人もいるけど記憶メモリには残らない。そんな感じの説明を受けて震えました

3月8日はカテーテル検査(?)を受けました。股関節近くの動脈から脳に造影剤(?)を注入して脳の血管を見るのと同時に、右脳と左脳を交互に眠らせて反応を見る検査をしました。

僕の場合は、右利きなので左脳を眠らせたとき話せなくなったりする確率が高いらしいです。実際に左脳を眠らせたときすごく眠くなってしまったので、左脳が機能していて右脳の病源を問題なく切除できるみたいな説明でした(よくわからん)。

股関節近くの動脈から薬を入れたので、6時間くらい仰向けで寝たきりでした。数日間足が痛くて歩けなかったです。

3月12日に最初の手術をしました。僕は2回頭蓋骨を開けて手術しているのですが、1回目は頭蓋内に電極を配置するための手術です。

頭蓋内に64極の電極を配置し様々なパターンで電流を流すことで、病源がより細かく絞れ、切除する部分を最小限に抑えられるそうです。

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そして2回目の手術でその箇所を切除する流れです。

手術は9:30に始まりました。僕は針を刺されて5秒後には意識がなくなっていました。看護師さん曰くかなり効くのが早かったらしく「お酒弱いでしょ」と言われました。

13:00に集中治療室にて意識が戻りました。「生きてる〜」ってめっちゃ思いました。でも、そこからは吐き気が止まらず、翌朝の5時まで寝れませんでした。この時点で頭からは3本の電極が生えていました(ここから電流を流します)。

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頭痛と吐き気は5日間続きました。手術によって頭蓋内の髄液が減ってしまったので、髄液が復活するまでは気持ち悪い状態が続くらしいです。

また、手術中から術後しばらくは排尿装置がついていて、これがとにかく不快でした。看護師さんに排尿の管を抜いてもらう時は「ふーって息はいて〜!!」って物凄い勢いで言われて、一瞬で終わりますが、結構厳しいものがありました。

3月18日より病源を詳しく探す検査が始まりました。頭蓋内の電極に電流を流し、どこで発作が起こるかどうかをみる検査です。同時に、機能しているから切除しちゃいけない箇所も調べてた気がします。

検査が始まると神経外科の医者が大勢集まってきました。「ここに何アンペア流して」そういった話が飛び交っていました。電流が流れる箇所によっては腕が勝手に上がったり膝がめちゃくちゃ曲がったりしました。

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低周波マッサージ器で指が勝手に動く感覚の強化版みたいな感じです。

本当に腕がピーンと上がるので、僕も「腕下げたいです!」みたいなことを言ってた気がします。多分そういう腕が動くような場所は切除しちゃいけない箇所だった気がします。

「次発作起きるかも〜」と医者の方に言われた直後、発作が発生し視界が歪みました。今まで発作は急に起きていたので、事前に予告されるのは本当に不思議な感覚でした。そんな感じの検査で最小限の切除する箇所を決めていた気がします。

それから数日は看護師の人と雑談したり、早稲田の学生の空間認識?に関する実験を受けたりしていました。

頭頂葉(視覚や空間認識に関わる場所)頭蓋内電極を埋めている患者は貴重らしく、VRゴーグルをかぶったり、様々なコンテンツ(錯覚など)を見ている時の脳波を提供しました。一般的に脳波は頭皮の上から取るのですが頭蓋内の電極から取る脳波の方がかなり鮮明に見えるそうです。

3月25日に、手術後初めて外に出ました(だいたい2週間ぶりの外)

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リハビリの人が外に行こうと言ってくれて、病院の周りを一周しました。2週間ぶりの外って結構感動するものがあります。

翌日の3月26日が2回目の手術でした。前日に手術の説明があったのですが、その時に自分の脳内の写真を見せられて、うおおって感じでした。

14時から手術でした。頭蓋内の電極を取り除き、病源部分を切除しました。2回目の全身麻酔も5秒くらいで意識がなくなりました。

その日の夜には意識が戻りました。また髄液がなくなったので、吐き気と戦っていました。翌朝の9時にはスマホがいじれる程度に生き返りました。無事手術が終わったようでした。

手術から2日後、体調はかなり良いのですが、左手の感覚がおかしいことに気づきました。手術失敗したのかなと不安になり先生に相談しましたが大丈夫とのことでした。1週間後くらいには違和感もなくなっていました

手術後

退院前に、切除した脳を見せてもらいました。明太子みたいな感じでした。切除した脳は秋田の方の研究所に移送されたそうです。

先生に聞いたところ、腫瘍みたいな感じではなく、成長の過程で脳の成長しきらなかった部分が悪さしてたみたいな話でした。

4月2日 ストレスが限界だったので少し早く退院させてもらいました。外の世界にめちゃくちゃ感動しました。

手術から4ヶ月後、主治医の先生に発作がなくなったことを報告をしたらすごく喜んでくれて、医者っていい仕事だなぁと思いました。

最近手術から1年経ち、発作も全くなく脳波検査をしました。脳波はちゃんと安定してたそうです。

あとがき

未だに自分の頭蓋骨が2回も開けられて、電極入れられたり、脳が切除されたりしたのが信じられないくらい普通に過ごせています。

手術して発作がなくなりいろんな不安がなくなりました。そのうち自動車免許も取れるようになります。

なので、似たような病気の人で悩んでたら手術してみても良いかとは思います(人によっては、異常部が深いところにあったりして手術難しかったりするみたいな話も聞いたことあります)。

同じ集中治療室には脳梗塞とかくも膜下出血の患者が結構いました。

似たような手術してるんだろうなと思うと、病気がない人でも、検査してそういう病気未然に防げた方が良いなとは思います(手術がつらすぎるので)。

あと日本の医療はすごいって思いました(外国のことよく知らないけど)。

医者看護師リハビリの方もみんなとにかく丁寧で感謝しています。

医療費に関しても高額医療制度?などを使うことで自己負担はかなり抑えることができます。

そんな感じですかねええ