140字小説(2018年3月1日~31日)

3/1
君は大人びているように見えて時折幼ない部分を覗かせる。普段はテキパキ仕事をこなすが、休みの日に連絡しないと妬くし、優しくしないと不機嫌になる。それがたまらなく愛しい。大人の皮を被った子どもが偉そうに口弁をしたっていいじゃないか。みんな必死に立派な大人を演じているだけなんだから。

3/2
疲れやしないかい? 毎日そんなに気を遣っていては。自分よりも周りの人を大切にする君は輝いて見えるけど、みんな君に甘えてばかりじゃないか。だから少しは休んでよ。誰にも邪魔できない君だけのオアシスで好きなことを好きなだけ。何も考える必要はない。君自身の人生を心から楽しんでおくれよ。

3/3
コタツに入ってみかんを食べる君の丸い顔は春に近づくにつれ痩せ細っていった。「もう春ね」おどけるように笑う君を見て病気なんか嘘じゃないかと思った。3月になり家のコタツを片付けた頃に、君も僕の前から姿を消した。僕は毎年思い出すだろう。コタツを出すたび、今年も君の季節がやってきたって。

3/4
夜に輝く太陽。水の存在しない地球。それらと同じように矛盾した出来事が実際に起きている。自由を否定された国。理由なく奪われる命。世界は決して平和じゃない。争いの種はあらゆる所に蒔かれている。だからこそ、僕らは温もりを確かめ合うんだ。どんな人にでも故郷があるように、心を繋ぎ合わせて。

3/5
「俺は特別な人間じゃないから」あなたの口癖だった。「代わりはいくらでもいるからね」そう卑下しながら笑う。努力を決して人に見せずに懸命に生きてる姿はまるで名もなき戦士。何度励まされたことだろう。「あなたは特別よ」目が合う。だって私の好きなあなたの代わりなんて何処にもいないんだから。

3/6
「将来何になりたいの?」5歳になる姪っ子に尋ねてみた。「ママみたいになりたい」純粋な言葉。美しさすら感じる瞳に、なぜこうも魅了されるのだろう。いつの間にか失っていた暖かさが蘇る。僕もいつか自分の子どもを育てよう。優秀でなくてもいい。まっすぐな心さえ持ってくれれば、それでいいさ。

3/7
蕾が花開くのが待ち遠しい。冬の面影は思い出すら真っ白に染めてしまうから。その前に早く桜が見れたらいいな。そうしたらきっと別れだって寂しくないでしょ? 泣きたい気持ちだけど、君とはやっぱり笑ってたい。お互いの道は違ってしまうけど心は今までと一緒だから。だから、早く君と桜が見たいな。

3/8
「はじめまして」は言えても「さよなら」は伝えられずに別れてしまう僕ら。いつの間にかいなくなってしまった人の数だけ増えていく。出会った頃の気持ちは何処かに忘れてしまったようだ。でも、いつか街で偶然君を見かけるかもしれない。その時、僕はこう言うよ。「今の気持ち、今度こそ忘れないから」

3/9
「心なんかなくなっちゃえばいいのに」「なんで?」「つらいことが起きても傷つかなくて済むからよ」「僕が君を守るさ」「そんなことを言ってもあなたは私じゃない」「でも必ず守る」「なんでそこまで」「君の優しい心に救われた恩返し」「覚えてないわ」「きっと思い出すはずさ。だって君は君だもの」

3/10
今がどんなに辛くても楽しかった時の思い出は君を励ましてくれるはずだよ。みんな今頃どうしてるんだろうね。身を削って働いてる人、趣味に生きてる人、幸せな家庭を築いた人。色々と想像が膨らんでいく。会ってみたいけど忙しいかな。少し迷いもあるけど声かけてみよう。あの頃みたいに遊ぼうよって。

3/11
どうか笑っておくれ。惨めで不甲斐ない僕を。お腹を抱えて笑っておくれ。ポンコツで情けない僕を。君の笑った顔は僕の心を晴れやかにするんだ。わざと滑稽な格好をして君と会った日を思い出す。いつも真面目な顔をしている君の心まで頑なにしたくないから。だから、こんな僕でよかったら笑っておくれ。

3/12
もういっそ、何もかも捨ててしまおうよ。そう思えば眠れない夜ですら尻尾を巻いて逃げていくさ。大切なものさえ勇気を持って手放してしまえれば、どんなに楽だろう。誰にも強要されてないのに勝手に抱え込んでた多くの荷物。道端にでも落として忘れ物にしてしまおうか。不器用な僕には命だけで十分だ。

3/13
顔を見なくてもわかるよ。今の君の気持ちを。電話やメールで届く君の言葉は繊細な心を映し出してるから。僕の言葉は遠慮ぎみに僕の心に問いかける君に響いているのかな。もし空回りしてても伝えておきたい。これからは君の顔を見ておきたいんだ。だからいつでも泣いていいんだよ。こんな僕でよければ。

3/14
ゴミが不法投棄された街や多くの人々を苦しめる紛争地帯にも、綺麗な朝陽が昇る。二度と来ない朝を迎えているんだ。今一度、ほかに目を移してみようよ。私たちは美しい地球を汚すために生まれてきたわけじゃない。当たり前の毎日は、実は奇跡の連続なんだ。これからはその軌跡を一緒に守っていこうよ。

3/15
頑張ることに疲れた君へ。君はいつだって真面目に生きてきた。だから、今だけはゆっくり休みなよ。あとのことは僕に任せて。えっ僕じゃ不安でしょうがないって? 見くびらないでおくれよ。君を一番近くで見てきたのはどこの誰だと思ってるのさ。さあ、早く君は夢の世界へ向かうんだ。何も気にせずね。

3/16
祈るように踊る君の姿は心に激しく問いかけた。何に命を捧げて生きていくのだ、と。毎日を繰り返す中で、僕は流されていた。かけがえのない存在から目を背けるのはもうよそう。周りの目を気にして躊躇してしまうけど、今こそ勇気を持つんだ。僕にはいつでも好きなように生きる権利があるという勇気を。

3/17
お願いだから耳を塞がないで。あなたに伝えたい想いがあるの。拙い言葉だけど最後まで聞いてて。私たちが出逢ったのは決して偶然なんかじゃない。お互い無意識に選んできた道なの。だから、これまで楽しいことも苦しいことも分かち合えた。そして、これからも一緒にいたい。今度は明確な意識を持って。

3/18
時代を彩った人さえも、いつかは終わりを迎える世界。太陽が照らし月が私達を見守ってくれる限り、どんな人でも夢に向かっていける世界。捉え方次第で見るもの全てが変わる世界は君にどう映っているのだろう。君も君らしい方法でこの世界に色を加えておくれ。それがまた新しい見方になることを願って。

3/19
携帯電話の電波が入らない場所へ僕ら行こう。誰にも邪魔はさせないさ。普段意地悪をしてくる人の顔なんか忘れて好きなだけ2人でいよう。ゆっくりと時間を過ごすことの大切さに気づけば、これからの在り方がわかるはず。この世界に難しいことなんかない。あるのは、考え方次第で形が変わる未来だけさ。

3/20
これまでの生活からの卒業。別れは心に穴を開け、冷たい風を浴びせてくる。それをぐっと堪え春を待つのは体力を消耗させる。分かれ道で手を振った親友は今頃何をしてるだろう。想いを巡らせる。楽しかったなあ。純粋にそう思うと、体の真ん中辺りが暖かくなる。春がもうそこまで来てるのを感じながら。

3/21
何も聴きたくない。上司の説教。友人の愚痴。誰かを嘲笑う声。何も聴こえなくていい。通勤する人の足音。車のクラクション。政治家の演説。世界にはいらない音で溢れてる。いっそのこと耳をもいでしまおうか。「もったいないよ」君は心を見透かしているかのように言った。「私の告白も聴けないなんて」

3/22
どんなに眠くても、あなたは娘の寝顔を見るまで絵本を読みきかせる。「普段は遊んであげられないから」疲れの残る顔は慣れない笑顔だ。私たちを守るために毎日身を粉にして頑張ってくれてること、言葉にしなくてもわかるよ。「ありがと」慣れないことを言いつつ、今日も私はあなたに掛け布団をかける。

3/23
歴史に名を残すよりも君の記憶に残りたい。不特定多数の称賛を浴びるよりも君の喜んだ顔を見ていたい。わがままかな? 僕は世間にとって必要のない存在だとしても君の大切な存在でありたい。傲慢かな? ねえ。何とか言ってよ。頼むから返事をしておくれよ。僕は君なしじゃどうしようもできないんだ。

3/24
空が白み始めるまで君と語り明かした夜、気づいたんだ。僕らは朝と夜みたいな関係だって。考え方や価値観はまるで違うけど、なぜこんなにも君を忘れられないのか。忘れてしまう前に伝えるよ。朝と夜は決して共存しないけど、僕らはきっとできると思うんだ。あの日みたいに2人で夜を越えたようにね。

3/25
たとえ老いに負ける体だとしても君との関係は若々しくありたい。15の春に出会った頃のように。命の煌めきは目には見えないけどわかっていたよ。弾ける笑顔、躍動する鼓動。あの頃に戻れなくても、これからの時間を大切に使おう。やっぱり知っておきたいんだ。僕らはまだまだ青春の真っ直中なんだって。

3/26
あなたの顔に白い布を被せるまで隣にいたいと願う。悲惨な現実も楽しいかけがえのない時間も、全部ひっくるめて思い出として胸にしまっておきたい。笑顔が似合うあなたと泣きたがりの私が出会うなんて奇跡みたいだから。先の見えない暮らしさえも分かち合えるのならば、私は死なんか怖くないんだから。

3/27
何も急ぐことなんかない。社会の忙しなさなんか気にしなくていいんだ。思い出してごらん。幼い頃、僕らは人混みに紛れて知らない街を目指したじゃないか。はぐれないように強く手を繋いでたこと、忘れやしないさ。さあ手を貸して。君の行きたい所へ連れてってあげるよ。あの頃みたいに歩幅を合わせて。

3/28
光と影。そんな関係だった。幼い頃から脚光を浴びるあなたと、殻に閉じ籠もる私。やがてあなたは夢だった歌うたいになった。一躍人気者になったけど、その裏でとても苦労していた。もういっそのこと、あなたを殻の中に閉じ込めたい。あなたこそ、私にとって唯一の光。だから、私にだけ歌を歌ってよ。

3/29
君に何を伝えようとしてたのだろう。それは目まぐるしく過ぎる日常に流されてしまった。自分ってどんな人間だったっけ。心さえ見失ってしまったよう。でも君の笑顔は何も変わってなかった。大きくて可愛らしいえくぼ。ようやく思い出したよ、君に伝えたいこと。「その笑顔をずっと隣で見ていたいんだ」

3/30
街灯のない街であなたと会いたい。そしたらきっと、あなたの顔だけ見てられるから。誰も私たちが会ってることなど知らなくていい。2人して夜空を眺めて、期待と不安が入り混じる将来の話をしようよ。その時だけは期待を膨らまして素敵な夢を描いてさ。星の輝きに負けない位の希望に満ちた夢の続きを。

3/31
まだ見ぬ誰かに会いたくて、ひたすら歩いている。どこまで続いてるかもわからない道を。幾度となく立ち止まっては迷ったこともある。これからの身の振り方を。年老いてみっともないと思われても僕にはこの道しかない。器用に生きれない男の末路をどうか見守っておくれ。それを糧に僕は今日も歩くから。

皆さんから大事な大事なサポートをいただけた日にゃ、夜通し踊り狂ってしまいます🕺(冗談です。大切に文筆業に活かしたいと思います)