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#6 成功企業が行うイノベーションの傾向

"ベンチャー企業" と言われて思い浮かぶのはどんな企業でしょうか?

IT企業、高い技術力を誇る企業、新しい切り口で事業を展開する企業...

もしかすると、スタートアップ企業、始めたてでイノベーションを起こそうとしている企業を想像するかもしれません。

しかし、スタートアップ企業だけがベンチャー企業とは言いきれません。

大中小限らず、成功する全ての企業はイノベーションを積極的に起こそうとする
 "ベンチャー企業" である傾向があるからです。

長期的に発展するにはずっと競争に打ち勝たなけれならず、
競争に勝利するには、絶え間ないイノベーションを起こす必要があります。

まず前提知識として、イノベーションには6つの種類があります。

①プロダクト・イノベーション
→ 新しい商品・サービスの作成をすることと、以前の商品やサービスの改良版を作成すること。
長期的な観点からの競争優位を支えることができる。

②プロセス・イノベーション
→ 製品やサービスを製造・流通する過程・工程・手順・方法に、大幅な革新を起こすこと。
短期的に、効率性や生産性の向上に貢献することができる。

③ラディカル・イノベーション
→ 今までのやり方に基づきながら、今までとは違う発想で進化を起こすこと。
今までのやり方に基づいているので、ちょっとずつしか変わらない。

④インクリメンタルイノベーション
→ 漸進的、急進的、抜本的に変えるために変化を起こすこと。

⑤持続的イノベーション
→既存顧客へ向けて、従来通りの指標に基づいて既存製品の性能を向上させること。

⑥破壊的イノベーション
→ 従来と全く異なる顧客に、従来とは全く異なる価値基準にしたがった製品を市場にもたらすこと。

これらのようにイノベーションと単に言っても様々な種類があります。

・・・

では、成功企業はイノベーションを行う際に何を大切にする傾向があるのでしょうか?

成功している企業は、以下の3つの基本を考慮した上で経営することを大切にします。

❶生産性のジレンマ
・生産性を向上させようとすると、必ず革新能力の喪失が伴う。-Abernathy(1978.ハーバードビジネススクール教授)
 →生産性を向上させようとすると、大規模で効率的な量産設備を擁することになります。
しかし、効率性を重視するあまり、ライバル企業間における性能や機能を高めるためのイノベーションが疎かになるという傾向があります。
例えば、作りやすい形状の製品でデザインしたところ、単調なデザインとなってしまい、美しさに欠けるといった具合です。
・成功企業はこのことを考慮し、「プロダクトイノベーション」と「プロセスイノベーション」の両方をバランス良く行う傾向があります。
・また、両方それぞれを異なった組織として別々に置いてはっきり区別する傾向もあります。

❷攻撃側有利の原則
・たいていの企業は、自社の外で新たなイノベーションが起こっていることを分かっていながら、既に自社で稼働している生産技術を捨て去ることができず、新たなイノベーションを起こす企業に競争で負けてしまう。-Foster(1986. マッキンゼー&カンパニーのシニアパートナー)
→生産技術はいくら高い投資額で設備しても、いつかは新しい需要が起き、廃れるもの。
そんな中、設備を買い替えるための巨額の費用を恐れたり、新たなやり方や考え方を受け入れる心理的負担を経営者が恐れたりすることで、たいていの企業は既存の生産設備をなかなか捨てることができない傾向があります。
・成功企業はこのことを考慮し、短期的な効率性よりも、長期戦略的な「競争優位効果」を重要視しつつ、今ある経営資源を長期的観点で配分しようとする傾向があります。

❸ 優良企業が陥るジレンマ
・どれだけ市場の状況に目や耳を傾け、プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションをバランス良く行い、長期的な効果を重視して新技術に積極的に投資したとしても、企業は、「破壊的イノベーション」を行わなければ、市場における優位性が失われる。
ただし、業界において「破壊的イノベーション」や「供給過剰」が起こった時に、高級志向製品へのシフト、顧客の個別需要への対応方針へのシフト、顧客への自社の製品の性能向上需要の呼びかけをすることで、企業はこれらの状況にうまく対処できる。-Christensen(1997.ハーバード大学教授)

→いくら基本に忠実で、プロダクトイノベーションとプロセスイノベーション双方に積極的で、新たな生産技術を取り入れる柔軟性があっても、
やはり「利便性」や「安さ」には勝てません。
※破壊的イノベーションには、異業種を組み合わせて「利便性」を高める新市場型破壊と、多店舗展開するなどして「安さ」を追求するローエンド型破壊が今のところはあります。
・成功企業はこのことを考慮した上で
①破壊的イノベーションをする
②破壊的イノベーションはせず、ニッチな市場での高級志向路線に転換する
③破壊的イノベーションはせず、別の新たな組織を立ち上げて、顧客の個別の需要に徹底的に合わせる方向性に転換する
④破壊的イノベーションはせず、大規模広告など競争に勝つための手を打ち続けて、一定の大規模な需要を喚起し続ける
のいずれかから選択肢を選び取る傾向があります。

まとめ
・成功企業には、「プロダクトイノベーション」と「プロセスイノベーション」の両方をそれぞれ異なった組織に分けた上で、両方をバランス良く行う傾向がある。
・成功企業には、短期的な効率性よりも、長期戦略的な「競争優位効果」を重視して経営資源を配分しようとする傾向がある。
・どんな企業も、破壊的イノベーションをしなければ、競争優位を獲得し続けることはできないという法則がある。
・破壊的イノベーションや供給過剰が起きた時、①高級志向路線に転換する、②顧客の個別的需要に徹底的に合わせる方向性に転換する、③一定の大規模な需要を喚起し続ける、のいずれかを取ることでその状況にうまく対処できるという傾向がある。

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