小説|ライカの啼く夜(未完)
冬枯れの梢を掠め落ちた月明の照らす顔面には青みがかった白目と黒い瞳が目立つ。その少女のような少年が言うには、ここを静箕(しずみ)と呼ぶらしい。なら目的の集落に違いないが、俺の立つ場所からは人家の明かりがまるで見えない。
「死にに来たの? おじさん」
「お兄さん」
「殺されたいのかな、おじさん(・・・・)」と、あどけない声に薄く大人の男を滲ませた声色で笑われた。顔に似合わず、感じの悪い子供(がき)である。
細くうねる山中の道だ。ぐぅと根本の曲がった樹々の向こうから、水音が冴