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遺品整理の仕事【17回目】

2022年6月22日(水)

8時半出勤。

最近毎度のように運転しにくいトラックを渡される。

立花さんと2人でトラックに乗った。

現場に到着して、近所の家をまわり「いまから作業をするので大きい音が出ます」という断りを入れに行く。

今日の施行は、立花さん、社員の藤田さん、バイトリーダー、鷹野さん、第8回目で出てきたパーマ男のヤマトさん、私、あとは派遣の人が4人来ていた。

総勢10名。

現場は6DKの一軒家だった。

見積もりは9トンだったが、部屋の中は閑散として見えた。

社員の藤田さんは、今日はさほど機嫌が悪くなさそうだった。

パーマ頭のヤマトさんはチャラい大学生という感じで、とにかくボディタッチが多い。

物を渡すときにもわざわざ触れてくるし、通りすがりに肩や腕を触ってくる。

あと勘違いなら申し訳ないが、ずっとワンチャン狙い(セックス狙い)みたいな顔でこちらを見てくるような気がする。
以前「目が勃起してる」とネットで話題になった男性がいたが、あれの0.5歩手前くらいの感じ。
こいつの眼の網膜には性欲が張りついているんじゃないかと思うような眼だった。

派遣の人は4人ともあまり施行には慣れていない様子。

わたしはほとんどの現場でキッチンからスタートするので、キッチンにある遺品を大きいビニール袋に入れていく。

すると「掛け軸が出てきた」と、社員の藤田さんに呼ばれた。

掛け軸の状態を確認するために、掛け軸を一旦広げて、巻き直す作業を行うことになった。

依頼主から掛け軸や着物などの査定を頼まれていたらしい。

掛け軸は15個ほどあったが、掛け軸を巻き直す作業が意外と難しい。容量良く出来ない自分にイライラする。

こうしている間にもヤマトさんは横でいらない話しをしてきて、むやみにボディタッチをしてくる。

掛け軸のほかにも絵や置物なども査定に出して、全部で5,000円だった。

着物は2,000円の査定額が出た。

査定した品物を1箇所に集めていると、依頼主が来た。

開口一番「ジェイコムの置いてる?!」と言いながらリビングに向かっていった。

テレビが置いてあった辺りを確認すると「ないやんかーーーー!!」と言った。

急な展開に皆がどよめく。

どうやら依頼主は「ジェイコムの機械は持って行かないでください」と事前に社長に伝えていたようだった。社長はそれをこちらに伝えておらず、ジェイコムの機械はほかの遺品と一緒に、外に持ち出した後だった。

「ぼく長田さん(社長)に説明しましたよね?!伝わってないんですか?!!この現場の責任者は!?」

と言われると、社員の藤田さんがひょろひょろと出てきて「ジェイコムの機械はこちらで弁償いたします」と言った。

「俺悪くないねんからおたくでジェイコムと話してくれよ!!!俺先週の木曜か金曜にもわざわざ言うたよな?!なんで出来てへんねん!!!俺わざわざジェイコムさんが来る時間に合わせて来たのに!!!!」

ハァッ……と依頼主がため息をつく。

「俺長田さん(社長)に電話するわ」

皆が静まり返って動かない。

依頼主は社長に今回の伝達についての確認、現在の状況などを話した。

すると依頼主が「はあ?!!なんで俺が悪いことになってるねん!!!頭おかしいんとちゃうか!!!!」と言った。

おそらく社長がこの状況にも関わらず、強気に出ているようだった。

社長はそのあと少し宥めたようだったが、釈然としないまま依頼主は電話を切った。

依頼主は家の中をウロウロしながら写真を撮ってまわっていた。

そのあと、もう家にないジェイコムの機械を引き取りに、ジェイコムの人が来た。

社員の藤田さんがジェイコムの人と話しをしていた。

作業が終盤になり、社員の藤田さんが依頼主に請求書を持っていく。

だがその請求書に記載した依頼主の住所を間違えていた。

社員の藤田さんは家の玄関すぐにある小さなお仕置き部屋みたいなところに連れて行かれて、マンツーマンで依頼主からキレられていた。

その部屋は、玄関にある格子から中が見えるようになっていたので、大きい身体を縮こめて謝る社員の藤田さんを何度か見に行った。

依頼主からかなりキレられていたが、社員の藤田さんは「掛け軸と絵と置物の査定額5,000円」「着物の査定額2,000円」から、しっかりと半額をピンハネしていた。

さすがこの会社で8年働いているだけあると思った。

弁償するジェイコムの機械が5,000円ほどで、ピンハネしたのが3,500円なので、こちらは弁償代金を1,500円ほどに抑えられている。

社員の藤田さんを解放したあと、依頼主が玄関に来て「この照明も外して」と言った。

玄関の照明は備え付けで外れなさそうだったのでそのままにしていたのだが、立花さんが脚立を持ってきて、玄関の照明に手をかける。

立花さんは照明を何度か動かしたあと「やっぱり取れないですよ」と、照明を動かしながら依頼主に説明する。

それを横目に、別の遺品を持ってわたしが外に出てすぐ「ガッシャーーーーーーン」という音が聞こえた。

玄関に戻ると、玄関の照明が外れて落ちて粉々になっていた。

わたしが立花さんの状況なら焦ってオロオロして「すみません!割ってしまいました!」とか言うだろう。

立花さんは漢なので「ホウキとチリトリと掃除機ちょうだい」とだけ言った。

割れた照明器具を片付けて、ほかの遺品をトラックに詰め込んだ。

よし!帰ろう!と言うときに依頼主が慌てて家の中から出てきて「まだ残ってるけど?!!」と叫んだ。

見ると、布団やら扇風機やらがしっかりとした物量で1箇所に残っていた。

こんなに大きな詰め込み忘れを10人いて誰も指摘出来なかった。

何度も失態を起こしてしまい申し訳ない気持ちだった。

依頼主にあいさつをし、派遣の人の勤務が終了した。

私たちはトラックに乗り込む。

帰りのトラックの中で立花さんは寝ていた。

倉庫に寄って、遺品を降ろす。

遺品を倉庫に入れる際に、わたしと鷹野さんは立花さんを経由した。

トラックから遺品を降ろして立花さんに渡すと、立花さんが遺品を倉庫の奥に投げ込む。

鷹野さんは「立花さんの力えぐすぎる!暴君じゃないですか!」と盛り上がっていた。

事務所に戻って一度車を整理してから、みんなでなか卯に行った。

わたしは昨日と同じ特盛海鮮丼はいからうどんセットにした。

みんなで事務所に戻り、なか卯を食べた。

時間はお昼を超えて17時前だった。

社員の藤田さんがしんみりしながら鷹野さんに向かって「鷹野って名字には思い入れがあるんや。鷹野っていう友達がバイク事故で死んでな」と言った。

それを聞いた鷹野さんは「そうすか。俺よりクールな男でしたか?」と言った。

鷹野さんの返答が独特すぎたため、少しヒヤヒヤした。

社員の藤田さんはこれから10日間東京出張に行くらしい。

立花さんと、バイトリーダーと、ヤマトさんは、社員の藤田さんを新大阪駅まで見送りに行った。

会社のテレビから社員の藤田さんが流したEDMがまだ流れ続けていて、嫌気がさしてきた。

事務スペースに行くと、事務の女の人がいて、昨日に引き続きいろんな愚痴を言っていた。

鷹野さんは事務スペースのソファに座り、3人で話しをしていた。

すると社員の藤田さんから電話がかかってきた。

「いまそこに鷹野いるやろ?鷹野外に出して」と言われ、変に動揺してしまった。

なぜ鷹野さんが事務スペースにいるのが分かったのかと思えば、監視カメラがあった。

いままで事務スペースにはほかのバイトの人も入っていたし、中に入らせてはいけないなどの話しは聞いたことがなかった。

監視カメラを付けているにしても、よく映像を確認しているものだと感心するような気持ちと、恐怖心が沸いた。

社員の藤田さんから、まだしたことのない請求業務を雑に任された。

業務を終え、会社でシャワーを浴びて、社長のお母さんの家にお金を渡しに行く。

インターホンを押したが、今日は家にいないようだった。

19時半退勤。

サポートしてもらえたらうれしすぎてヒョーー!!ダンスダンス!!!🕺🕺🏻🕺🏼 そのあとはサポートしてもらった画面をスクショして何回もニヤニヤします。