EXILEのメドレーぜんぶ知ってた

母がEXILEすきだった。
ここでいうEXILEっていうのはEXILE第1章のことで、まだLDHとかレモンサワーとかそういうのぜんぜんなくて、アツシとシュンがふたりでボーカルしててヒロが踊ってて、6人で歌とダンスをやってたグループのことを指す。
つまりわたしは20年以上前のはなしをしている。

母はね、アツシの歌声がすきで、いまになってよくよくきくとシュンの詞とアツシの歌声と、いわゆるふたりのシンメがすきだったみたいなんだけど、まあとにかくすきで、車の中はアルバムがずっと流れてたし、カラオケでも歌われたし、コンサートにも連れて行かれたから、なんか曲にぜんぶ聞き覚えがある。
わたしは練習しないと歌えないタイプなので、歌詞はさっぱり頭のなかにでてこないけど、メロディが体に染み付いていて、あっこの曲知ってる!てなるの。鼻歌でふんふん歌える、そういうかんじ。

なんでこんなはなしになったかというと、母がYouTubeでふたりのライブ映像切り抜きにたまたま出会ったことが発端。
なつかし〜!てはなしを共有されて、そこのメドレーきいたらタイトルもわからないのに全曲知ってた。体が覚えてた。曲に乗れる。

わたしはね、EXILEすきでもなんでもないの。
正直にいう、ハマらなかった。
でも母のすきなもの=わたしのすきなものと錯覚する時代だったので、すきではないとはいえなかったし、すきかもと思っていた。
当時から顔ファンだったのでEXILEのなかだったらシュンがすきだったし次点ですきなのはマキダイだった。
いま思えばシュンは甘くやわらかく高めに響く歌声なので、当時から顔立ちや歌声が甘いのがすきだったんだと思う。
まさか時を経て3次元の男に推しがいるとは思わない、あの頃のわたしげんき?

なつかし〜!とはなるけどいままでEXILEの曲を自主的にきこうと思うことがまずなかった。
今回すごくひさしぶりにきいてみて、どうなったと思う?
涙が止まらなかった。
かなしい思い出とリンクしていて、あの頃寂しかったなって思って、ひとりでかなしい涙をこぼした。
においや音楽は思い出とリンクするっていうけどほんとうだね。
かなしい思い出ばかりではなかったはずだけど、たのしい思い出よりもかなしい記憶のほうが勝ってしまった。
普段はこんなに記憶力がポンコツなのに。

あの頃寂しかった。
弟妹が生まれてあんまり構ってもらえなくなったり、両親のダブル不倫がバレて居心地がわるかったり、はやく離婚してほしいのにしてくれなかったり、そうしていくうちにわたしの部屋の片隅に母の不倫候補の名刺が溜まっていく。(このはなし、実家がなくなってしばらく経つし時効だと思うから言っていいよね?)
そしてそれを誰にも言えなかったし、言ったひとには裏切られた。

寂しかった。
わたしには母しかいなかったのに、母にもわたししかいないと思っていたのに、それでも母と娘の関係では埋めることのできない溝があると知ってしまった時期だった。どうしたってわたしにとっては「母」だったから、友達にもなれないし恋人にもなれなかったから、そういうこともまだ知らなかった、きっと青い春だった。
すきだったからかなしかった、わたしでは支えになれなかった。

だいすきな親友にもなにもいえなくて、落ち着いて打ち明けた頃にはびっくりされたり、言ってよっていってもらえたりしたけど、どうしてもその当時は声に出せなかった。たすけてっていえなかった。
巻き込みたくなかったきもちももちろんあったけど、それ以上にどうしていいかわからなかった。
黙っておけばなんとかなると思っていた。なんにもならなかった。ただただ自分の隠し事の下手さに呆れただけだったから、それから一切合切隠し事をやめることにしている。
声をあげないと伝わらないってわかったから、無駄かもしれないけど声をあげるようにしようと、黙っているよりわたしは声をあげるほうが向いていると、そう思っている。

寂しくてかなしくてつらくて誰かにわかってほしいけど、こんなきもちを共有させたくもなかった。
だからすきでもないひとから告白されたらそのひとの好意につけこんだし、それでいてすきだったひとにもずるく甘えた。
いまはAロマAセク自認なので、あれが最後のすきなひとだったと思う。
母の心が男の恋人で埋まるなら、わたしの心もそうだと信じていた。
そんなわけないのにね。
だからいまでもあれが恋かどうかといわれるとわからないんだと思う、つくられた恋心だったかもしれないから。

なにもかも母と同じでありたかった、ちがうことがつらかった、それを嫌悪して離れることを選んだけれど、双方にとって、特にわたしにとってほんとうによかったと思う。
暴力を日常的に振るわれていたとかそういうわけでもないのにこんなに親の離婚をよろこんだひと、他にもいるんだろうか。いるなら教えてほしい。
暴力は離婚されてしばらくたってからのことなのでぜんぜん関係ない、割愛したい。(まあしいていうなら実家売れたらしいけどあの家いい思い出ひとつもなくて買ったひとはそんな事情知らないと思うし大丈夫?やめたほうがいいよ?ってずっと思ってる)

いま、やっぱり母のことはすきだし、心の支えだし、わたしとはちがうにんげんだなって思うけど、どうしたって嫌いにはなれないけど、でもあの頃の母しか知らなかった頃には戻れないと、たしかにそう思う。

それを思い出すきっかけになったのがあの頃母がすきだった曲だというのだからなんとも皮肉なはなしだ。







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