お弁当をサンドイッチにしてほしかった。
ツナとか玉子サラダとかのド定番のやつ。
けれど母は「傷むからよしなさい」の一点張りでいつもおむすび。
お友達にはサンドイッチがお弁当の定番の子もいて、かといってお菓子はともかくお弁当本体を「交換しよ~」などと言う頭はさらさらなく。
「いいなあ」という気持ちを素直に口に出したり、「サンドイッチは傷みやすいんだって!」なんて悔し紛れに言うような愚かなこどもでもなかった。
お弁当の機会は年に数度しかない。
運動会か遠足か社会科見学か。
そのたび懲りずに「サンドイッチ」と希望は出し続けており、あるとき、おそらく根負けした母がサンドイッチにしてくれた。
それでも傷みを気にした母の苦肉の策。
トーストに炒り卵のサンドイッチ。スクランブルエッグなんてものじゃない。しっかりかっちり火の通った炒り卵だ。
あれはあれで、たぶん、きちんとおいしいサンドイッチだったはずだ。
でも、わたしが憧れたサンドイッチではなかった。
「これじゃないなあ」でいっぱいになってしまって、味もおいしくないようなきがした。おむすびならおいしかったろうになあ、と。
いまでも、きらきらフレッシュなサンドイッチにウキウキしてたまらないのは、この経験の影響もあるのかもしれない。
なにはともあれ、メルヘンのサンドイッチ食べたい。