劇場の記憶

極上文學 桜の森の満開の下

2019/12/8(日)13:00~
2019/12/12(木)19:00~ @新宿FACE

予習せずに観劇したことを深く後悔した。
とはいえ、付け焼刃の予習にどれほどの効果があったものかは甚だ疑わしい。
劇中いちばん震えたのは「生きよ堕ちよ」。
これをプロの生朗読で聴けるとは。頭と胸に何かが突き刺さった。

ひとつの脚本、ひとつの役を異なる役者が演じることがこんなにも面白いとは。ひとつの役も無限の可能性があるのだ。
役へのアプローチのちがいはもちろんだが、そもそもその役者のもっているものがあからさまに反映されていた、のだと思う。

目当ての役者はそれぞれの公演で「鼓毒丸」と「ミレン/アコガレ」を演じていた。ということは、目当て以外の「鼓毒丸」と「ミレン/アコガレ」を観ることもできたわけで、おかげでより一層目当ての特色が浮き彫りになった。
「鼓毒丸」は無垢でまだヒトになり切れていないみたいだったから、それはまあ翻弄されたあげくに暴走してしまうだろうなと納得した。それでも最後まで濁らず清かった。「ミレン/アコガレ」は女の情念のエッセンスみたいで。わたしは40年近く女として生きているのに、彼のつくりだした表情の10分の1でも、この顔の上に浮かべたことがあるだろうか…いや、ない。と確信している。