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2023年1月

読んだ本の数:9冊

ロシア怪談集
沼野充義編/河出文庫

解説のおもしろいアンソロジーはよいアンソロジー。
ロシア文学のイメージ(擬音)どどーん!ばばーん!どろどろどろ!を言葉にすると、リアリズム・まじめ・重く悲しいということになるのか。表現を面倒くさがってはいけない。
フランスとの関係が偲ばれるもの、多民族の香りのするもの、狂気か恐怖かの境界を行き来するものが好み。『吸血鬼の家族』『ボボーク』『光と影』『ベネジクトフ』
読了日:01月03日 



違国日記 1-9巻
ヤマシタトモコ/祥伝社

すっごく面白い本の引用文献として紹介された漫画は、やはりすっごくおもしろいのであった。
槙生ちゃんはまさしく「わたしの中の理想化されたわたし」である。
読了日:01月07日 



ジーンブライド 1-2巻
高野ひと深/祥伝社

なんかへんだな…?の正体はなるほどそういうことか。
カズオイシグロの有名作がよぎってしまって、いいのかなあという気持ちにはなる。
漫画って、現在をよく映すものですねえ。
読了日:01月07日



暮しの手帖 5世紀21号

やはりどうもメルヘンを眺める顔で読んでしまう。実生活と比べて「素敵な暮し」がすぎる。
それはそれとしてしかし、肉を焼きたい!ステーキ!もも肉!
読了日:01月08日



我は、おばさん
岡田育/集英社

よい読書だった。
第一部、歓声をあげて。第二部、詠嘆しながら。第三部、涙ぐみながら。第四部、わくわくしながら。第五部、鬨の声をあげて。
…わたしは、臆することなく「おばさん」を引き受けよう。願わくば「」のつかないおばさんを。自己を定義する言葉としても、他者との関係において定義される言葉としても。自虐と自嘲をともなわなければ口にできない語。年上からは窘められ、年下の前で使えばへつらう雰囲気のでてしまう語。しかし。もはや娘ではないし、さすがに老婆でもない。
我は、誰だ。そうだ、おばさん「で」いいじゃない!(ここの「で」は強い肯定感を示す「で」です。お間違いなく)さらにしかし、自信をもって自称するには、わたしの中に何かが足りない。なにか。この疑問には、読み進めるにしたがって解決の糸口が示されて、なんとも手厚いというか、問題が包括的にカバーされててすごいのだ。
そうともさ。与えられるものなんて、もう大して気に入らないし納得できないのだ。それならば、与える側に回ってみようじゃないか。そして生まれる反応をおもしろく眺めてみようじゃないか。
よい匙加減の善いおばさんを目指す、これからの可能性を提示してくれる儲けものの一冊でした。
しかし、我がおばさんになりたいのは、母になれ(ら)なかった穴埋めの気持ちが当然のものとしてある。だから、母にならないって言いきれない。我。
読了日:01月11日



残機1
梅津瑞樹/太田出版

生放送とはちがう。インタビュー記事ともちがう、文章の呼吸、息つぎ、語彙、語順。手ずから文字に変換されたウメツはこういうかんじであるか。それが最も興味深かったところ。
……芝居での自由さを観ている身としては、文章はずいぶん窮屈そうで、あなたそんなもんじゃないでしょう!もっといけるって!と無責任な期待と𠮟咤が渦巻いた。作家と読者であったならば、果たして、あちらとこちらの世界は接触しただろうか。いつかの「文章から逃げた」と言う姿は痛々しかったが、その逃げは逃亡や遁走ではなくて、鳥が渡るのや植物が日光に向かって繁るようなものであったのではないか。あるいは、水が高いところから低いところへ流れることに例えてもいい。であればこその一層の【怒り】へとつながるものかと想像することだけ、できる。
どうも悪口みたいになってしまって凹むけれども、本になったのはすごくうれしかったし、本棚にコーナー作って本屋さんごっこしてます。特装版ミニ写真集付きを三冊購入したんだ、これが。
この出版社の本を買う複雑な気持ちを、分かる人にはわかってほしい。
読了日:01月12日



残像に口紅を
筒井康隆/中公文庫

しびれる。
タイトルの由来になったであろうあたりの描写がまあ切なくうつくしいこと。書いてみろと言われても自分では到底むりだけれど、さいごの十数文字だけでもかなり多くの単語ができあがる。逆にこれ、喋りだったらば個人の癖もあるし、ある期間内にまったく発しない音というのも結構あるのではないか。
喫茶店のおねえちゃんよりは喋ることばのある自分でいたいなあ。
読了日:01月25日



マチルダは小さな大天才
ロアルド・ダール/評論社

『チョコレート工場』で、ダールは子ども嫌いなのかなあと感じたものだがさにあらず。いやでも、やっぱり馬鹿な子供はきらいなのかもと苦笑い。子どもにとって毒にも薬にもなる本だよね。劇薬注意。
ミス・ハニーの小屋ぐらしにも憧れるところがある。
読了日:01月29日 



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