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蟹を剥けない

蟹はすきかに?
わたしは、よくわからない。あれば食べるけど……蟹がたまたまあるなんて状況はまずないね。
海老は明確にすきだのに。

年末の食卓に、蟹があった。
ああ、蟹だな。と思った。
伯母が、「あんなにいっぱいあったはずの」蟹スプーンが消えたと言っている。
母が、「あたしは多分蟹アレルギー」とお決まりの文句を唱えている。
蟹スプーンはなくて、キッチンバサミが二挺。
蟹は大皿に乗って、食卓で幅をきかせている。
脚を1本手にとって、知っている気がする『脚肉のじょうずなひきだし方』を思い出そうとする。でも、特に思い出せることはなくて、わたしはどうやらそれを知らない。
それならば現状で考え得る、それらしい手順で肉を取り出すよりほかない。
付け根からハサミをいれると……結構固い。殻からべろんとはずれる肉……でもなくて、殻の内側を箸でこそげる。
ありつくまでの手間暇に脳内に去来する蟹知識。
A.黒い粒粒は、カニビルのたまご。付着が多いほど脱皮からの時間がたっているため身入りがよい、は、真偽不明確、らしい。
B.蟹はスカベンジャー。海から引き揚げた死体に蟹がわっさり、という描写があったのは、ジャック・ケッチャムの『オフシーズン』だったかしら。

蟹はおいしかったのだろうか。よくわからん。
面倒くささが勝った。