カイ書林 Webマガ Vol 14 No1

本年も引き続きご愛読をお願いします。このメルマガおよびWebマガ は、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【新刊案内】

・杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ④)


【好評発売中】

1 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

2 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

3 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

4 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

5 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

6 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima (ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)

7 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)

8 金子惇・朴大昊監訳:医療の不確実性をマッピングする

9 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)

10 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)


■全国ジェネラリスト・リポート

「医学教育を通じてジェネラリズムの浸透とレガシーを」

河野 圭 浦添総合病院 病院総合内科

沖縄で5年半、内科医として勤務し、その後、長崎大学病院で感染症診療・感染制御をしつつ、大学病院内や市内の臨床研修病院でOn the job trainingやレクチャーを通じてプライマリケア・救急を中心とした医学生・研修医教育をしていました。長崎を離れた後も引き続き教育を軸としつつ、感染症や総合内科の医師をしています。

当時長崎では、沖縄で見てきたようなジェネラリズムが浸透しておらず、様々な場面で患者や地域へ影響を与え得るような、多くの困難・難題に直面しました。

感染症コンサルト/抗菌薬適正使用支援業務を通じて、他の診療科医師や研修医に感染症だけの観点に捉われない幅広い丁寧な助言や支援を行い、時には飲み交わしたり一緒にフットサルをしたりなどで親睦を深めていきました。

大学病院内外で、多くの研修医と定期勉強会を行い、普段の診療や研修内容を共に振り返り、一方で学生との臨床推論勉強会「ゆでたまごの会」を立ち上げ、さらに県内にいた他のジェネラリストと「長崎GIM」を立ち上げ、少しずつグローバルスタンダードやジェネラリズムを広げていき、結果的に各所から評価を得て長崎大学病院群研修プログラムのベスト指導医賞を頂き、ジェネラリズムの種を蒔くことができました。

沖縄時代に参加していた、ハワイ大学医学教育フェローシップで、Richard Kasuya先生が強調していたメッセージである「レガシーを残すこと」を意識しながら、今後も日々邁進して行こうと思っています。

■マンスリー・ジャーナルクラブ

高齢者に対する周術期のガバペンチン使用による悪影響について

新道 悠 マウントサイナイ病院 老年医学&緩和ケアフェロー/米国内科専門医

Park CM, Inouye SK, Marcantonio ER, et al. Perioperative Gabapentin Use and In-Hospital Adverse Clinical Events Among Older Adults After Major Surgery. JAMA Intern Med. 2022;182(11):1117–1127.

<内容の要旨>後ろ向きコホートで、米国の900以上の小規模-中規模病院の入院患者データベース(全米の全年間入院の25%ほどをカバーする)を使用。

65歳以上で2009年-2018年にかけて循環器/消化器/泌尿器/整形外科/脳外科を除く神経外科/胸部外科/血管外科手術を受けて7日以内の入院をした患者の中から周術期(術後2日以内)に新規にガバペンチンを術後の疼痛に対して使用した118,936名のデータを抽出し、傾向スコア・マッチング(Propensity Score Matching)でガバペンチンを使用されなかった群との周術期の合併症を比較(合計237,872名の患者データを使用)。

結果:周術期のガバペンチン使用群で術後せん妄のリスクが上昇(RR: 1.28, CI: 1.23-1.34)、新規の向精神薬の使用率上昇(RR: 1.17, CI: 1.07-1.29)、肺炎の発生率の上昇(RR: 1.11, CI: 1.03-1.20)が認められた。周術期の死亡率には有意な差は認められなかった。サブグループ分析では、術後せん妄のリスクが80歳以下の群で80歳以上の群より顕著で(RR: 1.34 vs RR: 1.21, P=0.02)、基礎疾患が多い患者の方が、ガバペンチン使用でより術後せん妄になりやすく(RR: 1.4 vs RR: 1.2, P=0.01)、多重ロジスティック回帰分析(multivariable logistic regression analysis)ではガバペンチンの投与量の増加に従って術後せん妄の発症率も増加する傾向があることがわかった。

コメント:米国でも、高齢者の疼痛に対してガバペンチンやプレガバリンのようなガバペンチノイドが使用される頻度が多くなってきている傾向があります。元々、「麻薬系の鎮痛薬やNSAIDsに比べて安全で、麻薬系鎮痛薬の使用量も減らせるかも知れない」と思われてきたガバペンチン/プレガバリンなどのガバペンチノイドですが、最近では様々なRCTやMeta-analysisで「意外と思っていたほど安全では無いかも知れない」と言う流れに変わってきています。その中でも、大規模なデータがなかった周術期のガバペンチノイドの使用に関する術後せん妄や肺炎などの合併症増加をデータで示した報告です。

■カイ書林図書館

Choosing Wisely Japanのホームページが充実!

Choosing Wiselyは、米国内科専門医機構財団(ABIM Foundation)が2012年に開始したキャンペーン活動です。その呼び掛けに応じて、全米の臨床系専門学会が、併せて400余りの「無駄な医療」を根拠文献と共にリストアップしたことで、米国医療界に大きな反響を呼び起こし、現在、急速に国際的な広がりを見せています。Choosing Wisely Japanは、その活動をわが国に紹介するだけでなく、わが国においても根拠に乏しい過剰な医療の見直しを推進すべく、2015年4月に医療の質・安全学会学術委員会の下にワーキング・グループを立ち上げ、活動してきました。

このたびホームページが更新され、その活動の歩みを一目でわかるように、Newsletter Vol 1~8をはじめとして、各種のイベント、セミナー、会則など紹介しています。今後はChoosing Wiselyキャンペーンを学ぶ人のための基本文献も掲載していきます。ご期待ください。

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