「循環器救急・集中治療の高価値医療」を書き終えて ―澤村匡史先生に聞くー

澤村匡史
恩賜財団済生会 済生会熊本病院 集中治療室 室長 

Photo by T.Tashiro


Q1:「循環器救急・集中治療の高価値医療」は、まるで澤村先生のレッスンを聴講しているように理解しやすいのですが、読者にどのような方々を想定されたのですか。

 研修医のような初学者はもちろんですが,ある程度臨床経験のある方々にも興味を持ってもらえるようなテーマを取り上げようと考えました。文章については,何かを考えるときには,アタマの中で誰かと会話するように考えることが多いので,それを文章に置き換えるのはスムーズだったと思います。

Q2:本書は、循環器救急・集中治療に関して教育的な症例を30例挙げて解説しています。一般内科医の先生を含めて読者の皆様の日常診療に役立つと思いますが、読者の方々に、とくにこういう点を読み込んでほしいということはございますか?

 裏テーマで,「専門にしてジェネラル」ということを心がけたつもりです。循環器疾患の患者だけを診て,循環器の勉強だけをしても胸痛や呼吸困難の患者を診察できるようにはならないと思います。循環器集中治療もジェネラルICUの基礎がないとできません。どのような診療をするにも共通している基礎というか,スポーツでいう足腰の力のようなものが臨床にも必要だと思います。第I章はそのような観点から臨床的な基礎を,第II章は循環器病に特化した内容に,第III章は費用効果分析や臨床倫理といった,診療を俯瞰するような内容になりました・・・。結果的にですけど。


Q3:多くの著者の皆様はおひとりで本を書きたいと望んでもその願いを果たせないのが常ですが、本書で澤村先生はついに単著を成し遂げました。その成功の秘訣、情熱の源泉をきかせてください。

 カイ書林さんが最初から「単著で」とおっしゃったじゃないですか(笑)。そのときに「先生方は3,4ヶ月でさっと書いてしまうでしょう」ともおっしゃいました。さすがにそれは無理だと思いましたが,まさか6年以上かかるとは思っていませんでした。その間,本務以外にも学会の委員会の仕事やCOVID-19のパンデミックがあり,遅筆でご迷惑もおかけしましたが,一度引き受けた仕事は途中で放棄できないと思いました。それに,これまで学生時代から研修医時代も含めて,患者やその家族も含めて様々な方々から学んできたことを後進に伝える義務があると自覚しているということが大きいと思います。


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