カイ書林 Webマガ Vol 13 No7

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【新刊案内】

・梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動―臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか?

【好評発売中】

1 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

2 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

3 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)

4 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)

5 金子惇・朴大昊監訳「医療の不確実性をマッピングする」

6 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)

7 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)

8 樫尾明彦・長瀬眞彦:問診から選べる漢方薬ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ②)

9 徳田安春:新型コロナウイルス対策を診断する

10 沖山 翔・梶 有貴編集:ジェネラリスト× AI 来たる時代への備え (「ジェネラリスト教育コンソーシアム」vol.14)


■ジェネラリスト教育コンソーシアムのムック版セット販売のお知らせ

ムック版刊行10周年を記念して、Vol.1~17をセットで販売します。医局や図書館にぜひお備えください。
特別セット価格30,000円(送料無料)です。

■次回ジェネラリスト教育コンソーシアムのご案内

・第19回:「チーム医療を本音で語ろう」(2022年冬、世話人:森川 暢、大浦 誠各先生)
* Mook版ジェネラリスト教育コンソーシアムは、科学技術振興機構(JST)の文献データベース収録(JDreamIII、J-GLOBAL等)および「医中誌」に収録されています。

■全国ジェネラリストリポート

生理の問診から始まる女性診療
淀川キリスト教病院 産婦人科 医長 柴田綾子

 「生理で困っていることはありますか?」 この質問を、いつもの診療や問診票に付け加えてみてください。20~30代女性の50%以上が月経痛を感じており、4人に1人が月経前の不調(月経前症候群等)を感じています(男女の健康意識に関する調査報告書,平成30年)。

 ピル(低用量・中用量・緊急避妊ピル)は産婦人科医でなくても医師免許があれば処方可能で、OC・LEPガイドラインや緊急避妊法の適正使用に関する指針で解説しています。低用量ピルには月経痛/月経量の減少や避妊だけでなく、月経前症候群やニキビ等の改善効果があり、女性の健康・QOLアップが期待できます。低用量ピル、緊急避妊ピルについて施設のHPに掲載したり、待合室や女性トイレにポスターを掲示しておくのが効果的です。

 また40代後半から50代の女性に月経不順がある場合、更年期症状(ホットフラッシュ、萎縮性腟炎、イライラなど)で困っていることもあります。更年期症状では、大豆サプリメントや漢方(当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散など)をトライし、症状が重い場合は産婦人科でホルモン補充療法をお勧めしてください。

 6月に「明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム」(診断と治療社)を出版しました(3,960円)。低用量ピルや緊急避妊ピルの処方、HPVワクチン接種、更年期障害について解説しています。もしよろしければ、是非ご覧ください。

■マンスリー・ジャーナルクラブ

「加齢による脆弱性をもつ栄養不良患者への個別栄養サポートの有用性:EFFORT試験二次分析」
東京北医療センター 総合診療科 德田 紋華,岡田 悟

The impact of nutritional support on malnourished inpatients with aging-related vulnerability Nutrition. Volume 89, September 2021, 111279. PMID

 栄養不良は,超高齢(80歳以上),身体フレイル,または認知機能障害(以下,加齢による脆弱性)のある患者に非常に多く見られ,疾病罹患と死亡のリスクを高めてしまうことが示唆されている.急性期病院での加齢による脆弱性のある患者に対する個別栄養サポートが死亡率やその他の臨床転帰に及ぼす影響を評価するために,EFFORT試験の二次分析が行われた.

<内容の要旨>
方法:2019年に行われたEFFORT試験では低栄養状態にある内科入院患者を対象として,栄養士監督下の個別栄養サポートが通常の病院食提供と比べ,総死亡を0.73倍に有意に低下した.本研究はEFFORT研究の対象患者のうち,80歳以上,フレイル,または認知機能障害のある患者のみの結果を抜き出した二次解析である.
 割付け方法は中央割付けで行われ,隠蔽化されていた.マスキングは行われなかった.Primary endpointは試験介入後30日間の全死亡率に設定され,解析はすべてITT解析で行われた.

結果:割付けされた両群の患者背景に明らかな差はみられなかった. 個別栄養サポートを受けた患者は通常の病院食を提供された患者と比較して, 30日間全死亡のリスクが50%以上減少した(60/442 [13.6%]対31/439[7.1%];オッズ比:0.48 ; 95%信頼区間,0.31〜0.76; P = 0.002).

結論:加齢による脆弱性のある栄養不良患者を入院早期からスクリーニングし,個別栄養サポートを行う有用性が示唆された.ただし,本研究はEFFORT試験の二次解析であり,その結果は限定的である.

<コメント>
 
本研究の対象患者のBarthal Indexは約30点であり,多くの介助を要する状態だった.本研究では30日間の全死亡リスクを減少させたが,サブグループ解析では交互作用の検定で180日間の全死亡リスクの低減は証明できず,個別栄養サポートの有用性の示唆はあくまで短期予後の改善にとどまっている.一方で,本研究のKaplan Meier曲線をみると,介入群はコントロール群と比較して30日間までの死亡率の傾きが緩やかであることが分かる.ここから,一見30日以内に死亡してしまうような状態の悪い患者に対しても栄養的介入をすることで一定の効果が得られる可能性を示唆している.総合診療科では本研究の対象となったような脆弱性を背景にもつ患者が多く入院する.こうした患者に対しても「もう年だから」と栄養を控えるのではなく栄養介入をすることで,最期の時間を少しでも延ばすことができるという可能性は本人,家族にとっても意味のあることではないかと考える.


■カイ書林図書館

新刊「必携 入門看護必要度」の読者の評価をご紹介します。

徳田安春
カラーと図表で理解しやすい
 理想的な教科書。カラーと図表で理解しやすい。看護必要度についての基本的な知識が短時間で得られる。ビデオ教材も付いており、実践力が身に付く。多くの医療者にお勧めできます。

●東光久
 
病院関係者に必須の知識である、看護必要度が分かりやすく学べます!!
看護必要度は2つの点で重要です。
1.看護師のみならず、医師を含むすべての医療者が患者の状態を共通言語で把握できます。
2.事務職は看護必要度を病院経営というマクロ的視点でとらえていますが、その本質を理解することができます。
 本書はこの2点を分かりやすく解説し、すぐに行動に移せる内容が満載された書籍であり、すべての医療関係者にお勧めできます。文字通り、手に携えたい、必携の書籍です。

●長谷川友美
動画で学べるのが画期的!
 QRコードを読み込んで動画を見れば問題設定の状況がわかりやすいし、すぐに現場で活かせるので、今までにないほど、わかりやすい本でした。
追体験で学べるので、教育効果も高くて院内研修にも活用しやすいです!


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