カイ書林 Webマガ Vol 13 No8

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【新刊案内】

・梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動―臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか?
ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17
B5判 147ページ ¥2,750

【好評発売中】

1 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

2 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

3 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)

4 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)

5 金子惇・朴大昊監訳「医療の不確実性をマッピングする」

6 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)

7 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)

8 樫尾明彦・長瀬眞彦:問診から選べる漢方薬ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ②)

9 徳田安春:新型コロナウイルス対策を診断する

10 沖山 翔・梶 有貴編集:ジェネラリスト× AI 来たる時代への備え (「ジェネラリスト教育コンソーシアム」vol.14)


■ジェネラリスト教育コンソーシアムのムック版セット販売のお知らせ

ムック版刊行10周年を記念して、Vol.1~17をセットで販売します。特別セット価格30,000円(送料無料)です。
https://drive.google.com/file/d/1_U4zsR8-XEvE4GQQcuxjSR2FMj3MFM3x/view?usp=sharing

この機会に医局や図書室にぜひお求めください。下記にご記入の上お申し込みください。


■次回ジェネラリスト教育コンソーシアムのご案内

第18回 看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう(オンライン開催)
とき:2022年10月23日(日)13:00~16:00の3時間
世話人:筒井孝子(兵庫県立大学大学院 社会科学研究科教授)
東 光久(奈良県総合医療センター 総合診療科部長)
長谷川友美(白河厚生総合病院 副看護師長)
企画趣旨:今回のコンソーシアムは、弊社の新刊「必携 入門看護必要度」(筒井孝子先生著)の発刊記念として行います。 

看護必要度は、2つの点で重要です。

1.医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、歯科衛生士、ケアマネジャーなどすべての医療者が、看護必要度によって患者の状態を共通言語で把握できます。

2.事務職は病院経営というマクロ的視点でとらえていますが、その本質を理解するのに看護必要度は役立ちます.

当日は次の2部構成で行います。下記のフライヤーの申し込みシートからお申し込みください。

https://drive.google.com/file/d/1cJGoui5L1e_a_JgXQ059-Euwrfq6ik68/view?usp=sharing

* Mook版ジェネラリスト教育コンソーシアムは、科学技術振興機構(JST)の文献データベース収録(JDreamIII、J-GLOBAL等)および「医中誌」に収録されています。


■全国ジェネラリストリポート

多職種連携にMSW(メディカルソーシャルワーカー)が必要なわけ

秋田厚生医療センター 地域連携センター医療福祉相談室 MSW 和田美智子

総合病院では、医師、看護師、薬剤師、リハビリ等様々な職種で患者さんに関わっている。MSWも最近は知名度が上がり総合病院に複数人配置されるようになった。厚生労働省は地域で患者さんを支える「地域包括ケアシステム」の構築を推進しており多職種連携が必要とされ力を入れている。多職種連携が機能すると専門職が職種ごとの専門性を活かしてチームで働きかけ、視野や知識の幅が広がり患者さんのニーズに寄り添った支援が可能になる。現場では専門職が集まってうまく連携をとれる場合もあるが、やはり自分の専門職としての信念があり、なかなか他職種の提案をスムーズに受け入れできない場面もある。まして院外の職種に対してはさらに見えない壁があり、あちら側とこちら側が存在する。あちら側の患者さんや家族、ケアマネジャーや介護職の視点と、こちら側の医療者の視点は異なり、生活の中の一部が病気である考え方と、病気の中に生活がある考え方を一緒にするのは難しい。両者をいかに近づけるか、あちら側とこちら側を行ったり来たりはできない、ならばどうするのか?今は入院期間も短く治療が終われば生活を立て直す前に地域に戻ることになる。圧倒的にあちら側にいる時間が長くこちら側の病院での時間は生活のほんの一部となる。しかし、病気やケガはその人の生活を一瞬で変えてしまう。院内外とも多職種連携は自分の職種の専門性を活かしながらお互いの専門性を尊重し、お互いの立場に立った気持ちで臨まないとうまくいかない。MSWは「患者力」をエンパワメントする職種であり、福祉と医療の知識を持っているジェネラリストであり、病院内で「何をしているかよくわからない人」ではない。多職種連携が進めば進むほどMSWのスキルもあがる。何故なら今までやっていた仕事を他職種の皆さんもやろうとしているのだから。専門性を発揮するためにはそれを押し付けるのではなく提案し調整する力が必要である。あちら側とこちら側の架け橋となるMSWの視点が多職種連携の切り札と思っているMSWのひとりのつぶやきである。


■マンスリー・ジャーナルクラブ

非肥満・脂肪肝 vs. 肥満・非脂肪肝;日本人における糖尿病発症リスク

京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 岡田博史

①The impact of non-alcoholic fatty liver disease on incident type 2 diabetes mellitus in non-overweight individuals
Liver Int. 2016 Feb;36(2):275-83.

②Low aspartate aminotransferase/alanine aminotransferase ratio is a predictor of diabetes incidence in Japanese people: Population-based Panasonic cohort study 5
Diabetes Metab Res Rev. 2022 Jun 2:e3553.

ほとんどお酒を飲まない方におきる脂肪肝のことを非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease : NAFLD)と呼びます。一般的にNAFLDの原因には肥満や生活習慣病などがあげられますが、アジア人を中心に非肥満者におけるNAFLDの合併例が問題視されています。今回は日本人において肥満・非脂肪肝よりも非肥満・脂肪肝の方の糖尿病発症リスクがより高い可能性があることを報告した論文を2編紹介します。

【要旨】
①年齢41.5±7.4年の飲酒習慣のない健診受診者4,629名を12.8年フォローし糖尿病発症リスクを算出した。NAFLDの有無は腹部超音波検査にて評価し、BMI 23kg/m2以上を過体重とした。多変量解析において非過体重・非NAFLD群をreferenceとすると、糖尿病発症に対するHRは過体重・非NAFLD群で1.99(95%CI 1.47-2.69)、非過体重・NAFLD群で3.59(95%CI 2.14-5.76)であり非過体重・NAFLD群の方が糖尿病発症リスクは高い傾向にあった。

②年齢44.2±8.2年の飲酒習慣のない健診受診者70,688を7.4年フォローし糖尿病発症リスクを算出した。BMI 25kg/m2以上を肥満とした。多変量解析において非肥満・ALT低値群をreferenceとすると、糖尿病発症に対するHRは肥満・ALT低値群で1.09(95%CI 0.95-1.24)、非肥満・ALT高値群で1.37(95%CI 1.25-1.51)であり非肥満・ALT高値群の方が糖尿病発症リスクは高い傾向にあった。またAST/ALT比における検討でも同様の結果であった。ALTの曲線下面積は0.707、カットオフ値は23、AST/ALT比の曲線下面積は0.694、カットオフ値は0.875であった。

【コメント】
非肥満者における糖尿病発症リスクが高いことは日本人に特徴的であるが、その背景にはインスリン分泌能が低いことや異所性脂肪の存在が大きく関与していると考えられる。今回の2編の論文では日本人においてはBMIの増加以上に脂肪肝の影響が強いことを示唆しており、糖尿病の発症予防を見据えた場合、減量だけでなく脂肪肝をはじめとする異所性脂肪の存在にも注視すべきであろう。

■カイ書林図書館

世界の名著の翻訳書 近刊! Thirty Rules for Healthcare Leaders(医療者のためのリーダーシップ30の極意)

著者:Sanjay Saint, MD, MPH、Vineet Chopra, MD, MSc. 翻訳:和足孝之

本書は、米国の医療現場の第一線でリーダーとして活躍してきた豊富な経験から得た、実践的なリーダシップとマネージメントの考え方と、経験に基づく教訓が満載です。

1 安易に人を雇わない
2 理想のフォロワーを作る
3 ストレスの対処法を身につける
4 自分ばかり話しすぎていないか注意する
5 心の知能指数(EQ)を鍛える
6 引き締めるときと、ゆるめるべきときを使い分ける
7 ミスは許す、しかし忘れない
8 自分がロールモデルであることを忘れない
9 木に登っている猿であることを忘れない
10 組織を停滞させる人への対応

ほか医療者のためのリーダーシップのルール(極意)30が掲載されています。
本書は本年10月刊行予定です。

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