岡山県の来訪神①
岡山県の来訪神とは
小正月に来る来訪神
岡山県には小正月に「コトコト」や「ホトホト」などと呼ばれる来訪神がやってくる行事があった。
『岡山県史 民俗Ⅱ』にはこの行事について
とある。
行事のプログラム
県史での説明を整理すると次のようになる。
簑・笠をつけ仮装をして家々を廻る
縁側に盆などに乗せた藁の馬を置き、雨戸をコトコトと叩いて隠れる
家人は雨戸を開けてコトコト馬を取る
家人は盆の上に餅や蜜柑を置く
様子をうかがいながら盆を取り、次の家へ向かう
つまり、仮装した人が姿を見られないように家々を廻り、藁馬などと餅などを交換してもらうという行事となっている。
行事の行われる範囲
行事が行われる範囲はかなり広い。中国地方の広範に小正月に同じように来訪神があったことが『小正月の来訪神:中国地方』(22世紀アート)を見るとわかる。
県内では美作・備中・備前西部で行われていたようである。また、鳥取でも同じように「ホトホト」と呼ばれていることにも注目したい。
コトコトは来訪神なのか
仮面で仮装した来訪神が一年の決まった時間に現れ豊穣や幸福をもたらすとし、その来訪神「まれびと」は常世の国からやってくると折口は提唱したが、これもそれにあてはまるだろうか。
コトコトは確かに簑笠で仮装し、小正月という決まった時間に現れる。小正月は正月元日を中心とした大正月に対して、満月の旧1月15日を中心とした日であり、年越し・新年に訪れている。
では、豊穣や幸福はもたらしているのだろうか。内容を確認すると、仮装者と家人は藁馬と餅の交換をしているだけのように見え、家人に豊穣などは訪れていないように見受けられる。更には水をかけるという点に関して言えば、水をかけられた仮装者は厄が落ちるというところまであった(湯原町本庄など)。
しかし、持って来たコトコト馬を年神に供えるという点を見れば、年神との間の介在者として見ることができる
県内の他の来訪神
︎︎県内には他にも来訪神の伝承がある。それは大歳の客という民話で大晦日の晩に訪れた客(弘法大師や乞食など)が気付くと金などに変わっているというものである。
︎︎この話は大歳の火という火から目を離してしまう話と一緒に語られたり、年桶の由来譚として語られる。
次回からこの行事の個々の事例を数例見ていきます!