定期券
今日あった、とても嬉しいことを記しておこうと思う。
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夏の合唱コンクールの時期(支部大会は10月で秋だけれど)がやってきた。
今回扱うのはフランス語で、私が大学生1年生の時に、同じく夏のコンクールで取り組んだ思い出深い曲だった。
高校の合唱部で取り組んだ曲の言語はラテン語とマジャール語と、フランス語、だったけれど…あの頃は発音記号なんて自分たちには到底理解できないと思っていたし、面倒くさかったし、CDプレーヤーから流れる音から発音を聞き取り、カタカナで表記して揃えて歌っても、県大会を抜けて支部大会へ出場でき、しかも金賞をいただけたものだから、本当にCDさえあればやっていけると思っていた。今ではとても考えられないけれど。
そんな高校合唱生活を送っていたため、大学1年生でも結局はカタカナで覚えるしかなかった。熱心に教えてくださった先輩方、ごめんなさい。
フランス語合唱曲の大曲(と私は認識している)、8曲で構成されており、そのうちの1・8曲目しか歌ったことがない。2〜7曲目もいつか演奏したい。
8曲目に至っては3回目なのに…。
発音にはとても苦労しているが、たくさん聴いてたくさん歌えば習得できると信じている。しかし言葉の意味はどうしても母語の直感が存在しないため、ただ覚えるだけなのだ。その語の含有した独特な語感は、一生得ることができないだろう。悲しい。それでも歌を歌うのであれば、その語がどのような意味なのか知らなければいけない。知りたい。手に入れた本番の機会を、今後もう来ないかもしれないこの曲の演奏機会を、もう無駄にしてはならない。
コメダ珈琲のアイスミルクコーヒーたっぷりサイズを注文し、広めのカウンター席を満喫する。ここで、次の職場をどうするかを考え、フランス語の日本語訳を確認・書き込みをして、恋人に会える22:00になるのを待とうと思った。
彼からこんなに早く連絡が来るとは思わなかった。「そっちに向かおうかと思います」。
結局彼の懐事情をふまえ、私の自宅で各々が作業をする時間を取ろうという結論に至った。
私が乗っている電車に彼が乗車、合流してくれるという手筈。早く会いたい。
乗ってきた。二人ともそれぞれが好きな合唱曲をイヤホンで聴きながら、ほとんど会話することもなく自宅の最寄駅まで隣同士で揺られた。
最寄駅に到着したため、二人で降りて、ホームから改札口までの階段を並んで降り始める。彼は徐ろに定期入れを、そこからさらにPASMOを取り出した。PASMO本体を取り出さなくとも通過できるはずなのに、何故?
不思議に思っていると裏側だったPASMOをまた返して私に表面を見せてきた。驚いた。なんと彼の自宅最寄駅から私の自宅最寄駅の定期券を購入していたのだった。
通学定期券でないということは、通学定期券に比べてかなり高額だし、頭の中は何故?何故?何故ばかりだったし、口から出てくるのは「え?」「なんで?」だけ。彼は「ん?」と笑うだけ。手を引いてくれるだけ。
家に着いて混乱が落ち着いてきたのでちゃんと問いただす。「なんで?」「これからたくさん来るので」。
倹約家の彼が、たかが(と言っては彼の気持ちに非常に失礼かもしれないが)恋人の家に行くための高額な定期券を購入するなんて、そんなことが起こるなんて、誰が予想できたんだろうか。そんな高額定期券を買うくらいなら、普通ならば、来る回数を減らすという結論に落ち着くだろうに。
先にも述べたように倹約家である彼ならば、定期券を買ったらその元を取るために、嘘偽りなくしっかり自宅に通ってくれるのではないかと予想している。知らんけど。
嬉しい動きがあった、私も次に進まなければいけない。
次の職場が決まるまでのアルバイトも応募したし、なるべくそこで決めたい。応募しただけではお金はもらえないのだ。応募するだけで満足してはいけない。甘えてはいけない。
転職活動の面接日程も確定してきた。本気でやるし、今の自分がしっかり納得するように取り組む。
もう自分を守れるのは自分だけだし、自分を生かせるのも自分だけ。親や兄弟、恋人や友人が死んでも、私は生きなければならない。人に生かしてもらおうなどともう思ってはいけない。
少しずつ確実に強くなっていきたい。
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