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プロデューサーが甘奈になったお話し。甘奈がプロデューサーになったお話し。

 金曜日の今日はアルストロメリアにとっては大きなお仕事が入っている。以前甘奈がプロデュースしたリップとコスメポーチの会社およびそのグループ会社での雑誌の撮影の仕事でアルストロメリア3人で写真撮影。今回は甘奈だけではなく、それぞれ甜花、千雪モデルもこの度販売になり、仲良し組でつけると、寂しくてもこの匂いを嗅ぐことでみんなはどこでも一緒にいるよというコンセプトとのことだ。そのあとは移動し21時~22時の超長寿音楽番組でアルストロメリア・イルミネーションスターズ・シーズの初出演が決まった。生放送ということで未成年組のTV出演時間も考慮されて1組目になる。長い一日になりそうだ。

「大崎甘奈さ~ん、表情が硬いですね。ポーズを変えながらまた撮りましょう!」
「ご、ごめんなさい。よろしくお願いいたします」
カシャカシャカシャカシャ。
ここはとある撮影スタジオ。アルストロメリア3人は今、花の妖精をイメージしたデヴォーティングリンネのピンクの衣装に身を包み撮影会をしている。そこで表情が硬い甘奈を甜花と千雪、そしておろおろしている男性が撮影現場を心配しながら見ている。そんな男性にスタッフの人が声をかける

「甘奈ちゃん具合でも悪いのですかね?まるで初めて写真撮影をしている感じがしますね」
「あま・・・彼女は大丈夫です。きっと少し緊張しているだけですよ」
「なーちゃん・・・」
「・・・・・・」
甜花は萎縮して、千雪は黙って事を見守り続けている。
「まぁプロデューサーさんがそう仰るなら大丈夫かもしれませんね。それでは私は次の衣装の準備をするのでこれで」
と3人から離れるスタッフ。
「プロデューサーさん、やっぱり止めたほうがよかったのかな。心配で心配で。」少しソワソワしている千雪と
「ううん、せっかくの大きなお仕事だもん。甘奈もプロデューサーさんも甜花ちゃんと千雪さんに迷惑かけたくないもん」と低い声でプロデューサーが言い、
「あぅ~、なーちゃん・・・」泣きそうな目で祈る様に言う甜花がいる。

 向こうで千雪と甜花と甘奈が心配そうな顔をしなががらまだ写真を撮られているを見ている。
そう、既になんとなくお気づきかもしれないがひょんなことでプロデューサーであるとアルストロメリアの大崎甘奈身体が入れ変わってしまったのだった。その影響で俺は今大崎甘奈として甘奈の変わりに撮影をしている。こんなあざといポーズもしながらだ。

 ことの始まりは撮影現場の当日。午前中は甜花と甘奈は学校で千雪は昨日の夜MCを務めるラジオ「パジャマ・ジャム・ジャミング」があったため午前はお休み。お昼は4人で事務所で弁当を食べながら仕事の打ち合わせをすることになっていた。俺は朝から放クラメンバーを現場に送り出し、そのまま事務所に戻って溜まっている庶務処理をしようとしていた。事務所に帰ってくるとはづきさんがアルストロメリアのファンレターの仕分けをされていて丁度終わるタイミングだった。

「あ、プロデューサーさん お疲れ様です~。帰ってきて早々にすみませんが、ファンレターの一つ確認してもらいたいものがあって~」
「了解しました。なにか過激的なファンの手紙があったのですか?」
「いえ、そうではないのですけど・・・」
とはづきさんが俺に手紙を渡してくれた。その中にはこんな文章が書いてあった。

大大大好きな甘奈ちゃんへ
いつも甘奈ちゃんの明るく元気な声や楽しそうな振舞い、かわいらしいフリフリの服やちょっとセクシーな服もなんでも堂々と着こなしていて本当に尊敬しています!時々ちょっと悩んでいる感じの表情もあったときはギャップも感じて、そんないろんな甘奈ちゃんを見ていて同性の私もドキドキさせてもらっています!
でも、ちょっと変わった新しい甘奈ちゃんも見てみたいな~と思ってこちらプレゼントします!千雪さん風なちょっと大人びている甘奈ちゃんと可愛さ溢れる甘奈ちゃん風な千雪さんも見たいのでどうか2人でこのアロマの匂いを嗅いでください!
P.S.おそらく効力は1日~2日程度かと思います!


 そしてこれがそのアルマです、と渡されてきた。はづきさんもパッケージをチェックした限りでは特に問題なく、ネットで会社や商品を調べても怪しいものは見つからなく、ネットのマップでもしっかりと会社を構えているのが見れたということだった。

「はづきさんがそこまで調べて出てこないなら問題なさそうな気はしますが文章を考えると・・・。ちょっと嗅いでみて怪しくないと判断したら甘奈に渡してもいいかもしれないですね」 と窓を開けてアロマの蓋を開けて手で仰ぐようにして嗅ごうとしたら今日は風が強くよくわからなかった。仕方なく鼻をかなりアロマの近くまでもっていき直接嗅いだ。・・・・・・・・・が、特に問題なく良い匂いだった。「特に問題なさそうなのでこのまま甘奈に一応確認して渡します」「了解です~。それじゃあ私はレッスン室に点検業者が来ますのでそっちの対応したのちにそのままお昼いただきますね~」

 暫くして今月の溜まっていた交通費精算と車検の予約とメール処理が終わり、そろそろ甘奈と甜花が来る時間帯と確認したタイミングで扉が開き
「あ、プロデューサーさんお疲れ様です。そしてごめんなさい。甜花ちゃん課題のプリント今日までに提出するの忘れていたらしくて、少し遅れることになりました。おろおろしていてめっちゃ可愛かったな~」
相変わらずだな甜花は。そしてそれを可愛いと言う甘奈も甘奈だ。
「わかった。特に問題ないぞ。
 そして丁度よかった。甘奈ちょっといいか?」
甘奈を手招きするとパーッと嬉しそうな顔をしながら小走りで来てくれた。甘奈のこういう笑顔は本当に元気が出る。来てもらったところでさっきのはづきさんとのやりとりを説明したところ、手紙を確認して
「はづきさんもプロデューサーさんも確認したなら大丈夫です!今嗅いでみてもいいかな?」
まぁ特に断る理由もなかったし、それにいい匂いは確かだったため許可をし甘奈も匂いを嗅いだところで・・・・・・

「なーちゃん!なーちゃん!起きて!」
「プロデューサーさん!大丈夫ですか?」
あ・・・れ?なんだか頭がボーっとする。気持ちよく寝ていた時に起こされているような・・・そんな感じ。そして頭が少しずつ覚醒するときに甘奈なんで寝ているのか、どうなったのか少しずつ思い出す。甜花ちゃんが声をかけて身体を揺らしてもらうのも普段とは逆な感じでちょっと新鮮で嬉しいな~と思いながら目を覚ますと、千雪さんが私を起こしていた。・・・千雪さん?
「あ・・・れ?」
ん、なんだか声もかなり枯れているのかな。とりあえず上半身を千雪さんに頭を支えてもらいながら起こしてもらいうと、目の前には見覚えがある制服の2人がいた。もちろん一人は甜花ちゃんだけど、もう一人は...え?
「あ、甘奈?」
と少し強く叫んでしまってようやく気付いた。この声は聴いているとちょっと安心してとっても頼りがいがある声だな。と思いながら自分の身体も見る。カッターシャツにスーツズボン、手も身体も私より大きいまるで男の人の、身体。
そして甘奈の体も甜花ちゃんによって起こされて甘奈と同じく身体を確認して一言、
「お、俺が目の前にいる」
と普段の甘奈とは違う口調で喋る大崎甘奈が目の前にいたのでした。

「え~っと、つまりプロデューサーさんが今甘奈ちゃんの見た目で、甘奈ちゃんが今プロデューサーさんの見た目ってことでよね?」
ソファーに俺と甘奈が座らせられ、甜花と千雪が再度確認してくる。
「ああ、そうみたいだな。あの手紙はこういうことだったのか」と俺が腕と足を組んで考えると、
「プ、プロデューサーさん。足を上げるとなーちゃんの下着が・・・」
「え?・・・あ!?」と急いで足をもとに戻し、スカートを抑え込む。
「す、すまん。つい無意識とはいえ、その、すまない」
「あ、あははは。気にしないでプロデューサーさん。甜花ちゃんとは下着もおそろだし大丈夫だよ」
なるほど、甜花と甘奈はお揃いの下着なのかって違う違う!そして何が大丈夫なんだ?でも甜花も言いながらじー-っとスカートの中を凝視しているような・・・ちょっと目が怖い。
「いろいろとお話ししたいことは山ほどありますが、先ずはこの後のおしごとどうしましょうか?さすがに甘奈ちゃんお休み・・・ですよね?」
「まぁ・・・そうだよな。先方達には迷惑をかけてしまうが急遽体調不良ということで連絡するか。あ、でも俺がこのまま電話するわけにはいかないし、はづきさんが帰ってきたタイミングでも頼んでみるか」
「ま、待って!今日って撮影と生放送なんだよね?準備とかしてもらっているのにそれってめっちゃ迷惑をかけてしまうことになるよね?」
「まぁ・・・大きな仕事だったことは確かだが・・・でもこういうときに頭を下げるのが俺の仕事だし甘奈は気にしなくても」
「だ、ダメだよ!そんなこと!ファンの人たちを困らせたくないし、プロデューサーさんは甘奈たちの歌とか踊りもよく見てるから歌えるし踊れるでしょう?」
「・・・・・・細かい点を教えてもらえればできなくはないな」
「甜花ちゃん、千雪さんお願い!お仕事を無下にしたくないの。アルストロメリアはやっぱり3人でアルストロメリアだし、大崎甘奈としてファンにもプロデューサーさんにもフォローお願いしたいなーなんて」
「あぅー、千雪さん・・・」
「でも甘奈ちゃん」
「今回の撮影の企業さんには初めてモノを作るというすっごくて大変な思いをして何度も諦めそうになってこれが作るというお仕事なんだなーと経験をさせてもらえて、千雪さんにも相談してもらって販売できた。あの時の匂いを嗅ぐと楽しい思い出を思い出してもらうようにってことだったけど」
きりっと決意を固めた俺の顔で
「今度は3人での販売だもん。アルストロメリアの3人があの時よりももっと仲良しということをファンにも見てもらいたい」
千雪はちょっと観念したような顔で
「わかりました。プロデューサーさんは大丈夫ですか?」
「おう。俺も甘奈の気持ちに応えるのが仕事だ。2人共ビシバシ悪いことは言ってくれ」と胸に拳をドンと当てて笑うが、
「なーちゃんはそんな動きしない。プロデューサーさん絶対にそれしちゃ、だめ」ビシッと指をさされた。
 その後も打ち合わせをしながら甜花からの言動の注意は数多く、はづきさんが帰ってきて事情を説明する間に甜花のしわがかなり寄った気がする。メイクさんになにも言われない程度に戻しておいてほしい。はづきさんへの説明も最初は驚いていたが、思ったより冷静だった。
 移動も車の予定だったが当然俺が運転することになっていたのだが、今の俺は甘奈の姿。甘奈が運転したら世間体として大変なことになるし、俺の姿をした甘奈は勿論のこと運転ができない。そんなことすら頭から消えていた俺たちはタクシーを呼ぼうとしたのだが、急遽はづきさんが運転で送り迎えをすることになった。はづきさんは週末の他のバイトを全て休めるようにまで調整したらしく今度お酒を奢ることにしよう。

 現場到着がギリギリになり、急いでアルストロメリア3人で挨拶をおこない、バタバタした状態で楽屋に入り衣装をきることになるのだが、そこで問題も発生する。そう、着替えだ。千雪の上着が脱いで肌色がものすごく多くなり「あっ・・・と千雪・・・」と声を出したら千雪も気づいてしまい、そこから顔を赤くして物凄く、機敏に後ろを取られタオルで目隠しされた。数分後着替えが終わったらしい甜花と千雪に未だに目を隠されたまま右足を上げてください、バンザイしてもらって...いい?など服を脱がしてもらい衣装を着てもらって目隠しを外してもらった。
「お、おぉ~」
鏡を見ると完全にアルストロメリアの大崎甘奈がそこに立っていた。改めて俺が今甘奈なんだなと実感する。コンコンとドアがノックした後にはづきさんと俺の姿をした甘奈が入ってきて、話す暇もなくそのままスタッフの人が入ってきて撮影会場まで誘導された。そして今に至る。

 なんとか甘奈の分は写真は撮影終え、次に甜花が写真撮影を開始した。千雪にお水を貰いながら甜花の撮影を見る。・・・うん、いつも通りでこれなら問題ないだろうな。それにしてもこれまで仕事で築いてきた営業スマイル的な感じでうまくいくとは思わなかった。前に円香が言っていたこともバカにできないぞこれは。そうこう考えている間にも甜花は特に問題なく終わり、千雪の番となる。千雪も特に問題なく終わり、次は3人で撮影となる。コツがわかってきたからなんとかなるだろう。
「次は左から桑山さん大崎甘奈さん大崎甜花さんと並んで3人で抱き合うようにお願いします」
世界ってどうにもならないことはあると思うのだが皆さんはいかがだろう。さすがにそれはまずいのではないかと考えているのもつかの間。甜花のほうにちょっと身体を向いて、顔はカメラのほう。後ろから千雪の左腕が肩から胸の前に回され右腕はお腹に手を当てられて身体がかなり密着状態に。背中には千雪の物凄く柔らかいものがむにゅむにゅっっと背中にダイレクトに伝わり、顔の隣には千雪の美人の顔があり隣を向くとほっぺたがぶつかりそうなくらいな距離で、前からも甜花が両肩に手をつき肘をまげて目の前の甜花の瞳孔から甘奈の姿が見えるくらいの距離に顔がありカメラの方を見ている。甜花が抱き着くと右肩に乗せていた甜花の手の甲に千雪がストンと顔を乗せる。前からも後ろからもいい匂いがして柔らかい感触があちこち感じられて目の前には甜花の顔が大きく視界を遮っていた。いろいろと耐えながらなんとかカメラの方を観る。
「お~3人共本当に仲がいいね~。躊躇なくそんなに抱き着けるなんて普段から信頼している関係ってことかな?」とカメラマン。
「にへへ~甜花、なーちゃんも千雪さんも大好きだから」と俺の方に少し押しながら言う甜花に
「私も可愛い2人とこんなに仲良くなれて嬉しいです」と千雪もバランスを均衡するために少し押す。ええぇい前からも後ろからもそんなに押すな押すな。いろいろと体にあたっている感触から想像してしまうじゃないか。特に甜花はわざと押しているだろう。後で聞いて故意的と判断したら仕事1個休日の朝に入れるぞ。
「カ、カメラマンさんお願いします!」なんとか恥ずかしさを紛らわしたい俺は急いで撮ってほしい旨を伝える。
「おや、甘奈ちゃんちょっと恥ずかしかっているのかな?でもその表情もいいね~それじゃあ撮っていきます!」

 身体が入れ替わりドタバタしていたのも終わり、撮影も順序良く行っているのを見てようやく少し落ち着いた感じがしてくる。外から「アルストロメリア」を見るというのも不思議な感覚だ。あんなにくっついて写真撮っている姿を見るとちょっと羨ましい。プロデューサーさん恥ずかしがってるな~。と少し笑えるぐらい甘奈自身も余裕が出てきているのも分かる。外から見る撮影というのも甘奈が普段見ている景色とはまた1歩後ろから見ているとちょっと面白い。カメラマンさんやメイク係さん、スタイリストさんはよく甘奈達にも声をかけてくれる。カメラマンさんへの指示とプロデューサーさんがよくご挨拶してモニターをずっと見ている人がディレクターさんはなんとなく分かるのだけど、ここに来る前にプロデューサーさんから車の中で教えてもらった人たちを見ていると他にもレタッチャーさんや商品管理者の方、タイムスケジュールの方、現場コーディネーターの方、差し入れなどを提供するフードコーディネーターの方、いろんな人たちが甘奈達が見えない場所ではかなり忙しく、声も控えながらもあれはどうなっている、これもすぐに用意して!など切迫して準備などをしているのに、いざタレントの人の視界に入る直前には余裕のある表情に変化して声のトーンも変えて決して裏のことを悟られないようにクールな立ち振る舞いをしている。同じ空間なのにこんなにも温度が変わるのかというくらい違う。甘奈が知らないだけとはいえこんなにも現場って大変なんだと思う。これがプロデューサーさんが見ている世界なんだ・・・

 なんとか撮影も終わり歌や踊り、立ち位置の確認もしないといけないので急いで次の現場に向かうことに。挨拶ははづきさんがしてくださるので4人で衣装はそのままでタクシーで次の現場に向かう最中に歌詞を念入りに頭に入れながらテレビ局の1室お借りして振り付けと立ち位置を確認する。この時になりやっとまともに身体を動かすのだが、俺がおもっているよりも腕や足の動きのギャップ差が埋められない。女の子の身体ってこんなに細いのによく動けるなと感心する。甘奈と動きを確認していると他のユニットメンバーも入ってきた。
「お疲れ様で~す!ねぇねぇプロデューサーさんと甘奈が入れ替わったって本当?」
「め、めぐる。いきなりそんな失礼じゃ」
「おうお疲れめぐる。今回はすまんな、なるべくみんなに迷惑をかけないようにはするから」
「おぉ~!甘奈の声でプロデューサーさんの口調だ~~!」
果歩みたく目をキラキラするめぐる。いや、面白くない状況だからなコレ。その後ろでジト目でやや呆れた感じでにちかが
「まったく、初めから迷惑をかけるからよろしく~みたいに言わないでください。それでもプロデューサーなんですか?」
「いや、まぁそうなんだが。どうしても迷惑をかけない自信がないのは確かなんだ。頼む」申し訳ないように言うと
「・・・その容姿でそんなこと言われるとこっちも調子が狂います」と踵を返す。
「ほわぁ、じゃあはづきさんが言っていたことは本当なんだ。プロデューサーさんの姿だけど甘奈ちゃんでいいんだよね?」
「うん、甘奈は今プロデューサーさんの姿だよ~。おっほん。きみの中には光輝くものがある。アイドルとなって、今までとは違う世界を見てみないか?」
「ほわぁ、プロデューサーさんに初めて会った時の言葉だ。・・・はい、私アイドルやりますっ」その後くすくすと笑いあう2人。
「お疲れ様です。プロデューサー私も教えようか?」
「ああ。頼むよ美琴。俺が思っている動きとのギャップがかなりあるんだ」
「なるほど。プロデューサー。実は男性と女性って身体を動かす際の使用するパフォーマンス力に差がないって知ってる?確かに男性は女性より力持ちで速く動かせるけどその程度なの。ダイエットのも男性と女性で運動する量が違うというわけではないでしょ?そして女性は酸素を運ぶ能力は男性より上なの。だからプロデューサーが感じている感覚って~~~~」

 プロデューサーさんと美琴さんが動きについて確認している。千雪さんと甜花ちゃんは他のユニットの人たちと話しながらプロデューサーさんを見ている。迎えに行っていたはづきさんがひょいと扉から顔を出し手招きで甘奈を呼ぶ。撮影現場に向かう途中にはづきさんがテレビ局に着いたらタレントとは別で挨拶回りに行かないといけないということで行くことに。はづきさんが基本的に喋る手はずだが甘奈もどうしてもプロデューサーさんとして喋る場面も出てくると言われたけど、「またお時間ある時に改めてお伺いします」と言って次があるようにすれば大丈夫とプロデューサーさんが言っていたので顔の特徴とどういうことを言われたかを覚えてほしいとのこと。
 はづきさんのフォローもありお相手も難しいことを何か言っていたが正直よくわからなかった。他の事務所の人と挨拶する方がよっぽど疲れない。これが業界人としての挨拶なんだと。でもなんだかんだあったが特に大きな問題なく事が終わり楽屋に戻ろうとすると一人の人が声をかけてきた。
「おぉおぉ~!283さんのところのPじゃないですか。ご無沙汰しております。」
 さわやかな色のテーラードジャケットを着こんだ中年男性ぽい人だとわかるが深々と帽子をかぶり顔がよく見えない。はづきさんが
「大変申し訳ございません。顔がよく見えなくて。どちら様になりますか?」
「おっと大変失礼。ただ私の立場上あまり顔を明るみに出したらいろいろと仕事に支障が出るから勘弁してほしいもんだ。ほらお世話になった案件で言うとオタクのアイドルを密着取材したり、アンティーカの同居のこととかイルミネのサッカーの試合の時のお客の反応を書かせた貰ったところと言えばわかりますかね?」
 それを聞いて一つ思い当たる節がある。それは甘奈達にもプロデューサーさんから注意を受けたとあるゴシップ誌。今は世間体もいい感じだけどノクチルのみんながここの阿久井徳次郎って人に密着取材をされて仲良し幼馴染のごっこアイドルとして世に知れ渡り他のアイドル達やテレビ・他の雑誌でも扱いが酷くなったり、アンティーカの同居する番組のスポンサーだったため面白いからと編集でアンティーカ不仲説を見せた方が数字も伸びると間接的に誘導したり、デリバリー会社がサッカー事業を展開した際のイルミネのライブの時に起きた観客同士のいざこざを他の週刊誌より大きく取り上げて記事にしたりと283プロダクションに取っては相手にしちゃいけないところ。はづきさんもそれに気づいて
「大変申し訳ございません。急いでいるのでこれで失礼します。なにかありましたらまた後日ご連絡ください」と歩き出すはづきさんに付いていこうとするも
「まぁまぁ、こっちもそこのプロデューサーに仕事の依頼をしているのにうんともすんとも返事が来ねぇから直接聞きに来たってのにそんなあしらわなくてもいいじゃねのか」
 プロデューサーさんがそんな返事をしないというのはなにかしら理由があるに違いない。ましてや胡散臭いところであれば返事するだけで突っ込んでくるので無視しているかもしれない。そう考えると自然とこの言葉が出た。
「申し訳ございません。その件につきましては今回は見送らせて貰っています。返事ができていなかったのはこちらの落ち度ですがどうかご了承ください。それでは失礼します。はづきさん行きましょう」
「あ、ちょっと!」
なんか言いたそうにしていたけどそのままその場を後にした。
「甘奈さん、今のはよかったですよ~」
「そう・・・かな。プロデューサーさんに迷惑ならないかなとやって少し後悔してます」
「いえいえ~。ああいうのは私たちの仕事ですよ~。プロデューサーさんには私から伝えますね~」

 楽屋に戻るとプロデューサーさんの動きが出る前と違ってしっかりとできていたらしく、甜花ちゃんが少し興奮気味に甘奈に報告してくる。
「プロデューサーさんはコツを掴むと一気に開花するタイプ。ダンスゲームの才能もあるかも」
「うん、これならなんとか形になってるかな。声も出ているし動きも短時間で覚えられている。いいね」
ちょっと自信満々な甘奈の顔でプロデューサーさんが
「伊達にみんなの歌やダンスのレッスンを近くで見ていないからな!」
「うわぁ~、ちょっとキモイです」
「プロデューサーさんも元の体に戻ったら283初の男性アイドルとしてデビューしたらどうですか?」
「千雪、それは冗談で済まないからやめてくれ」
「えぇ~!プロデューサーならいい線行くと思うのだけどなぁ。なんならイルミネの4人目のアイドルとして加入もいいかも!」
「めぐる、それはいくらなんでも私たちとプロデューサーさんはバランスが悪い」
「ほわぁ、だったらピーちゃん加入もどうかな?」
「真乃まで・・・」
プロデューサーさんはなんだんかんだで馴染んでいるな~。そしてあっという間にリハーサルが来て流れを確認し本番を迎えることになる。この時も撮影現場と同じくいろんな人が忙しく動き回っていた。

 番組開始から聞き覚えるのあるアーティスト登場曲が流れOPが終わり大物芸能人が283プロダクションの紹介を始める。そこで真乃ちゃんと甘奈と美琴さんが椅子の前に座り他メンバーが後ろへ。それぞれの自分のユニットの紹介もそこは流石プロデューサーさん。スムーズで違和感ない案内だった。
少し雑談系の話しなどが始まるとプロデューサーさんはあまり前めりで喋らずにちかやちゃんやめぐるちゃんが主導となる。そして会話パートも終わり曲の準備ということで一旦フェーズアウトをし、CMに入る。甜花ちゃんと千雪さんが甘奈に向かって大丈夫という顔でこちらを見ている。甘奈も軽く頷いて返す。そのまま見届けようとしたところで急に腕を引っ張られた。スタジオはステージ以外は少し薄暗く誰なのか認識できないまま大きなスタジオの端っこに連れていかれた。
「は、離してください!」と大きく手を振り払うと甘奈を連れ出したのはさっきの中年男性だった。その人を認識した時点でSecret utopIAのイントロが流れ始めた。
「いや~すみませんね~。こうでもしないとあんたとまともに話せないのと思ってね」
こういう人には黙っておけばいいと思い甘奈は黙り込む。男は喋りだす。
「こっちも283プロダクションのおかげで飯食べれてるところもあるんだ。おたくらにとってはマイナスばっかりじゃ悪いと思うからメール送った通り仕事を依頼しているのにつれないな~。まぁ見てないかもしれないから今こうして伝えるがどうだ、アルストロメリアのグラビア撮影考えてくれないか」
 まさかアルストロメリアのことだとは思わなくピクっと反応してしまった。それが好反応と思われてしまい続けて話す。
「桑山千雪の女として完成されたグラマラスのスタイルに大崎姉妹も実はかなりいい身体じゃないか。着るもの着れば男性層からの人気も一気に爆発すると思うぞ」
え・・・?
「撮影は俺の知り合いにAV撮影経験者がいるから女を魅せるIVの撮り方や衣装もそいつから際どいやつを用意させるし身一つあれば問題なく収録できるさ。なぁ~に安心しろ。出たらヤバいやつは勿論編集でカットはするさ。ま、修正前のデータは残るかもしれないけどな、クックック。恥ずかしがってもひたむきに頑張るアルストロメリアって想像するだけでもかなりそそるじゃねぇか」
「そ、そんなもの受けるはずないじゃないですか!そんなことをして今より人気になるわけないじゃないですか!アイドルの、女性の身体をなんだと思っているのですか?」
 つい我慢できずに返してしまった。甘奈達の身体を見世物にして売るなんてそんなのアイドルじゃない。それは断言できると思ったが、その人はイヤらしく笑っていた顔が突然ぽかーんとした顔をする。
「おいおい、まさか天下の283プロダクションのプロデューサーさんは童貞なのか?な~に馬鹿みたいなことを正しい風に言ってんだ?何故エロ系の動画や写真集がこうも堂々と販売されている?逮捕されない?婦警系の作品もあるのに警察はなぜやめろとは言われない?許可撮って撮影しているし人間の3大欲求を満たすためだろ!援交が何故なくならない?見返りの金があるから同意しているんだろ!有名なアイドルが突如そっちで再デビューしてより有名になったやつもいるじゃねぇか。自分で自分の裸体を見せて、それを世に広げるために撮影して、編集して、お金貰って食ってるやつも業界には多くいるんだぞ?そんな奴らのことも全てお前さんは否定するのか?お前さんは誇りもって身体を売り物にしている女に女性として否定するのか?あぁ?」
 ドスが聞いた声で詰められるため後退りをする。面喰ってしまい甘奈が知らないだけでそれが常識なの?・・・かな。そういう噂も聞いたことがないわけではない。甘奈達の学校にも女子校生という地位がとても魅力的と知って夜街に出て遊んでいる人がちょっと高いポーチやおしゃれ道具を持っているとか。普通の学生で高いものを買うにはそういうのがあるのかもしれない。でも・・・
「それは・・・その人が自らの意思でしているのであって、他人がしているからそういうことをしないといけないってはならないと思います。そういうことを強制する力はない・・・はずです。あ、甘奈達もそれは望んでいない!今までのやり方で甘奈達輝いてきた。だったら今後も苦労するかもしれないけど甘奈達のやり方でもっと輝くに決まっています!」
「そうです!アルストロメリアのやり方はアルストロメリアで決めます!もしご縁がある場合はまた連絡させていただきますので、今回はこれでお引き取りを」
後ろから普段発する声が聞こえる方を見ると甘奈の姿をしたプロデューサーさんが立っていた。
「チッ。はいはい、こんなあまちゃんとはこっちも思わなかった。ま、今後もなにかしでかしたらその時はまた書かせてもらいますので今後ともよろしく頼みますぜ」と言い残し甘奈達から離れていった。
「甘奈すまなかった。大丈夫だったか?」と腰をぱんぱんと優しく叩いてくれる。
「ううん、甘奈は平気だよ。でもごめんないプロデューサーさん。勝手なことをして」
「ん・・・?そんなことないぞ。もし俺のままだったとしても受けずに追い返していたしな」
「それよりプロデューサーさん、撮影は大丈夫なの?」結局歌や踊り見れなかったけど無事に終わったのかな?
「おう、今は歌い終わって水休憩で少しだけ自由になれそうだったから千雪に任せてきた。曲が始まる前に連れていかれるのがチラッと見えたから心配だったんだ」
本当、プロデューサーさんは自分のことで精一杯のはずなのによく周りが見えているなぁ。挨拶回りで少しはプロデューサーさんの仕事も分かったかなと思ったけど全然追い付けそうにないや。
「ありがとうプロデューサーさん。もう甘奈は平気だから戻ってもらっても大丈夫」
「あぁ、おそらくあと30分後には皆はけると思うからもう少し待っていてくれよな」とせっせと戻るのであった。

「お、終わった~」
何とか甘奈の変わりをやれた俺はワゴン車に全員乗り込みはづきさんが運転し恥じてようやく大きく緊張を解いて姿勢も崩す。
「プロデューサーさんお疲れ様です。こちら、お水ですのでしっかりと水分補給してくださいね」
「ありがとう千雪。他のみんなも今日は助かった。お礼を言わせてくれ」
「プロデューサーさんのなーちゃんのダンス。・・・にへへ~可愛かった」
「そうですね、私も本当にプロデューサーかどうかわからいくらい良かったと思います。あ、千雪さん奥にいる真乃とめぐるのは私が手渡しするのでいただいてもいいですか?」
「灯織~。占いで2人がいつ頃もどるか占ってみたら」
「私はそんな占いはできないし、それこういうことは占いようもないと思う」
「そういえばアルストロメリアはこの後本来であれば甜花ちゃんと甘奈ちゃんのお家にお泊り会なんだよね?」
「あぁ、幸いにもご両親が今日からお母様の実家の富山に行かれるということで一応俺含めて4人でお邪魔する」
「え?それ大丈夫なんですか」にちかが怪訝そうに見てくる
「さすがに甘奈の身体を違う環境にするのも悪いし、俺の身体の甘奈にもストレスを与えたくないしな。千雪も甜花も承諾しているん・・・だが・・・」ブルッブルッ。こ、この感覚はまさか。
「ん?プロデューサー?」
「あぁ~。言いにくいんだが・・・」ソワソワとほっぺをかきながら
「プロデューサーさん?どうかされましたか~?」運転しているはづきさんも耳を傾けながら異変を気づいて聞いてくる。
「・・・トイレ行きたくなった」と正直に話した
「「「「「「「「!!??」」」」」」」」
「そ、そういえば事務所出てからさっきまで甜花達も気を遣ったりドタバタしてたからお手洗い行ってない・・・」
「は、はづき!事務所まであとどのくらい?」
「あと10分後には事務所前につく感じかな」
「プロデューサーさん、この際お風呂とかお手洗いとかどうしようもない部分は正直ももう諦めているんだ」
「お、おう」
「甘奈も女の子だからプロデューサーさんにいろいろと見られたくないのは分かってくれる?」
「も、勿論だ。そこはなるべく俺も目をつむる」
「ううん、それだけじゃダメだから、プロデューサーさんには悪いけど耳栓と目隠しをしてもらいます」
「あぁ~、まぁそれで甘奈が気を済むならこっちもやぶさかでない」

ということで、その後は何故か甜花が介護したいという意思がものすごく強く、甘奈も最初は否定したがこんなにも甘奈を思ってくれる甜花ちゃん優しいということでトイレも2人に連行された。甘奈、絶対甜花は下心あったぞ。罰として連休は全て朝に仕事を入れておいてやる。
 その後は解散し、はづきさんに大崎家に送ってもらい、お風呂のことでまた甜花がなーちゃんの身体とは入りたいと暴走し(さすがに甘奈は遠慮した)、目隠しをして甘奈と2人でシャワーを浴びて目隠しを外すと顔を真っ赤にしている俺がいて、「プロデューサーさんのプロデューサーさんが」と呟きながら奥に引っ込んでいったため仕方なく甜花に髪を乾かしてもらった。にへへ、なーちゃんの髪を乾かすのは小っちゃい頃以来と意気揚々と乾かし(どさくさに紛れていろいろと触ってきたが)、千雪はお風呂上がってから何故か1度も頑固として俺の前に現れなかった。リビングに来客用の布団を敷いてもらい俺と甘奈はリビングで夜を明かすことになる。これで長く大変だった1日が終わった。

夢を見た。それは俺が今日体験したものなのか。それとも甘奈が普段見ている追体験なのか、俺が普段舞台横で見ている景色なのかは不明だ。でも鮮明と場面は思い出せる。


 不思議な体験だった。今回はテレビだったが、そんなに観客がいたわけではないが、歌っている時のペンライトは綺麗だった。ペンライトを持っていない人もタオルなどで盛り上げる。いい景色だった。
 いつも袖からはアイドルたちが歌う曲に合わせて袖裏でのスタッフ達の忙しない声がよく聞こえる。それがいつもの俺の席。たまに観客席を見回るために見回るのだが楽しんでいるのもいればマナーがこれはどうかと思うお客もいるが、度が過ぎてない限りではあまり声をかけることはない。声をかけることによりアイドルたちが作り出した空気を壊したくない。ただ表立って観客を見ている甘奈の景色は、本当に色鮮やかで美しかった。この美しさを作り上げていくのが俺の仕事。中にはアイドルたちが知らなくてもいい仕事依頼なども来ているのは事実。が名前を売るためにそれで彼女たちの純粋さを汚したくない。裏の汚い依頼は俺がそのまま闇の中に捨てる。それが俺の仕事でもあるんだ。

夢を見た。それは甘奈が今日体験したものなのか。それとも普段プロデューサーさんが見ている追体験なのか、甘奈が普段見ている景色かはわからなかった。でも鮮明と場面は思い出せる。

 不思議な体験だった。今回はテレビでの撮影だったから、そんなに観客がいたわけでもないし、ペンライトも持っている人もいれば持っていない人もいる。ペンライトを振っている人はいたけど、他の周りの人との温度感があって正直浮いている感じがする。一体感などもなく正直あまり気持ちの良いものではないと思ってしまった。
 いつも舞台から甘奈達の歌に合わせてコール&レスポンスなども楽しそうな熱が籠った声が聞こえる。これがいつもの甘奈の席。他アイドルが歌っている時の控室や待機場所ではファンの人たちの嬉しそうな声がよく聞こえてアイドルとファンが一体になっていることかなと思う。だからこの空気をどんどん大きくしたい。ただ裏立ってファンを見るプロデューサーさんの景色は、綺麗だけではなく・・・汚れてもいた。スタッフ同士の連係ミスによる犯人捜しやファンの悪目立ちな行動。この汚れているのを綺麗に拭いていくのが甘奈のアイドルとしての役割でもあるのかな。甘奈達が見える景色をもっと羽ばたかせるようにプロデューサーさんが選んだ仕事を頑張ってこなしていこう。変な依頼があるっていう事実も今日は知れて、それをプロデューサーさん達は隠している。それは甘奈達が知らなくてもいいことであるというのであれば甘奈は見える部分でアルストロメリアとして今後も頑張る。それが甘奈の仕事でもあるんだ。

陽射しが差し込み目を開くとそこは見慣れない天井。でも昨日の夜に見た節がある。そう甘奈と甜花の家。身体を起こすと違和感がある。「おぉ~!?」思わず声を挙げてしまった。何故なら見慣れた腕にペタペタ触って分かる顔の骨格。確証を得るために俺が昨日寝たところまで近寄っていき布団を捲ると甘奈がいる。よかった、無事に戻れた。と一安心していると、甘奈の身体がビクッとなりゆっくり目を覚ました。甘奈が顔だけを動かして俺を見るとぼーっとした顔から急に目を大きく見開き顔を赤くなり始める。
「よう甘奈!おはよう。無事に戻れたな」
「プ、プロデューサーさん!!」布団で顔以外を隠しながら驚いた大きな声で甘奈が喋る。やっばい、またプロデューサーさんに寝顔見られた。しかも今度は布団を捲られて近距離で・・・まるで・・・とかなんとか呟いてバタバタしている。ドタバタと上から降りてくる足音が近づいてきてドアが開くと千雪が慌てて降りてきた
「千雪おはよう。迷惑かけたな。おかげで元に戻ったぞ。良かった良かった」
おはようございますと少し目を細めながら、甘奈と俺を交互に見てそのままずいずい俺に近づいてきて
「昨日からいろいろあってプロデューサーさんも思う節はあるかと思います。が、取り敢えず今は直ぐに出て行ってください」
「え?・・・いやそんなに急がなくても。甜花にも報こ「女の子にはいろいろとあるんです!甜花ちゃんには私から言いますし、今は甘奈ちゃんのために着替えて荷物を持って出て行ってください」
とトイレで忙しく着替えられてそのまま千雪に追い出させるように家を後にした。

2日後。2日間事務所のアイドル達から身体が入れ替わった時やお泊り会のことなど結構ストレートに聞かれるが、千雪からはぐらかすようにと言われてそうのうにしたら皆から教えてくれないと少し好感度が下がった気がする。大型ショッピングセンターで今日はアルストロメリアのリップ発売日でもあり、ライブとライブ後にあるアルストロメリア直々の販売会でCDとリップのセット購入者にその場でサインをするイベントである。控室に通されたが甘奈は挨拶回りという呈で動き回る許可を取り音響機械がある場所やステージ周りを確認しているスタッフさんを見ている。そしてうんと何かを確認して満足した表情だった。聞いてもとくには何もないから大丈夫だよと言われライブを迎えた。特に顔色が悪いわけではないので俺も深く追求しない。

「行くよ甜花ちゃん、千雪さん」
「うん、甜花いつでも大丈夫」
「えぇ今日も頑張っていきましょう♪」
3人で手をつないでステージ上にあがる。ステージから見るお客さんたちはキラキラと今日も甘奈達を見てくれるファンがいる。ファンのために甘奈達ができる最大限のことをすることで裏で働いている人達も尽力した人たちへのお返しにもなる。ファンも大事だけどこのステージを作っている人たちにこそ恩返しで楽しんでもらわないといけない。甘奈達だけがファンを喜ばせているわけではないんだ。表だけ見えるのではなく裏方の人たちにも喜んで貰えるようなステージにしないといけない。それを今日から甘奈は目指そう。ファンだけではなくスタッフさんにも伝わる様に、

「みんな~~!今日もはりきっていこうね~~!」





ハバネロ様主催の第5回シャニマス投稿祭に参加させていただきました。
第4回時に投稿した記事もよろしければ読んでいただけると幸いです。



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