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卵の起業家

起業家が書き残す記事の多くは、事後報告で主に事業に関することが多く、そしてポジショントークが多い。

1人の人間として起業家が何に直面し、悩んでいるかを書き残しているものは少ない。
彼らはメンタルがタフで、色んな問題も問題でないかのように扱い、そして軽々しく乗り越えていけると魅せる必要があるからだ。


私は、ただの気まぐれによって起業家の1人として文章を残すことにする。

会社を作ってもう半年が過ぎたらしい。はやい。
多くの起業家はアイデアを固めてから会社を作りその上で資金調達をするが、私の場合は方向性だけ決めてノリで会社を作り、そのままの勢いで資金調達したタイプだ。

創業は1人。

最初は慣れない創業の手続きに走り回り、
その次は大量のイベントや交流会に顔を出して名刺交換をして、今後関わるかもしれない人達に事業内容を説明するのに追われた。
身体は1つなのでその間開発は進まないのはストレスだった。

イベントは売り込みの営業が多く混じっていて、話しかけられると無視するわけにもいかないず、強引に時間を奪われるのでなかなかストレスだ。必要な人にアクセスする場合はイベントでの名刺交換よりも人伝で紹介してもらうか、個人的に連絡を入れてやり取りをした方がずっと良い。
イベントは沢山あるから、どのイベントに参加するかをちゃんと判断して断るのは大切だ。

私は急足で同時にチームメンバーを探す必要があった。どこから見つけ、誰をチームに引き入れるか、だ。
周りは昔からの友人だったり大学の同期だったり、前の会社の同僚だったりが殆どだったが、(稀にイベントで意気投合やVCの紹介のケースもあり)

自分の場合は、そもそも東京に来て半年のタイミングだったので友達をつくるところから始める必要があった。
簡単にはいえど、近くで支えてくれる家族もいなければ、何かを相談する親友もそばにはいない。大学生でもないので同期もいないし、若さゆえに経験で辿れる人脈を持っている訳でもなかった。

厳しい環境条件だったけど、同時に何にも囚われず一から築き上げる自由さを持っていた。
自分がしたことは、ハッカソンを自ら企画してエックスから面白そうな人全員に片っ端から連絡して参加してもらった。大体1度目は断られるが、断られても2~3回粘れば打率はあがる。
1つの物事への取り組み方の一連をみていると、最後までやり切る人か人柄がある程度分かる。後は目星をつけて、フリーになるタイミングまで待つ。

もう一つは、大学やイベントに潜って友達をつくることだ。最初の取っ掛かりだけ突破して、キーパーソンとなる1人と仲良くなれれば後は割とすぐ輪を広げられる。

取り組む上で、明確にこの部分の作業を委託したいと見えているのなら採用は簡単だけれど、
フェーズ的には模索しながら一緒にやってくれる人が必要だ。要するに、自分で必要なことを探して自分で動けるスキルだ。そこに教科書はないし、具体的な指示をしてくれる人もいない。

創業者がその分野のエンジニアである場合は信頼してもらいやすく話が早いが、私の場合はエンジニアとしてのスキルはあるけど畑違いで、AIに関しては素人だった。大学生でもなければ、女だった。
ゆえに、最初の壁は“胡散臭さ”との勝負になった。
女であることが悪いのではなく、珍しいが故に
この人と一緒に会社をやるんだよねと友達に言えば、“大丈夫その人?なんか詐欺にでも引っかかってるんじゃないの?”と反応されかねない。
(実際にうちのメンバーのCTOは、両親に私が女であることを対面するまでずっと伏せていた)

1人採用できてしまえば、後は楽になる。
私自身はノリで動くしだいぶフワッとしているが、うちのCTOは対極に位置していて、論理的に冷静に物事を詰めていく柱となる人だ。少なくとも彼の信頼できる人柄のおかげで、こんな実態も実績もよく分からない、ふわふわした会社に3人目にめちゃくちゃマーケティングに秀でた面白い天才が入ってきてくれた。

うちのCTOに、なんでDiFunで一緒にやろうと思ったの?と聞くと
「この人頭おかしいけど、本気でやろうとしてるんだなって伝わったから」と訳の分からない
回答をされたので案外かれも論理的ではなく、少々頭がおかしいらしい。


さて、他にも障壁は山程あるが
個人的に大きかった内容を3つ書こうと思う

ひとつめ

一般的には、リーンスタートアップで言われるMVPをさっさと作ってしまって顧客反応を見てから改善すると言った手法が推奨されている。

これは分野によってはそうするべきで、そして分野によっては適さない場合がある。
どこに注力するか吟味して、全体像を俯瞰してから設計しないと、結果的に多くの無駄を生むことになる。初見のつまらなさ故の顧客離れで、彼らがもう戻ってこない分野があることには気をつけたい。

つまり殆どは、脳内で「さっさとプロジェクトを進めろ、とにかく形にしろ、つくれ」という言葉との戦いだ。

多くのプロダクトは着手することを決定するまでに構想と計画でかなり時間をかけている。しかし然程の文体では、そこを省略して取り組む内容が決まってからの動き方しか書いていない。
作るのに着手し始めた場合はなるべく早く終わるほうがいいが、それ以上に計画の段階は丁寧にじっくり調査する必要があるのに、そこをスッポ抜かして兎に角作れという無言の圧を感じる。

実際その方が動いてるように見えて起業家としては華やかだ。
そのプレッシャーとの戦いは結構大変だ。
さっさと作り始めてしまえば、物事を進められているという安心感があるからだ。

めちゃくちゃ流されるし、焦るし、何故か自分がダメダメにも思えてくる。
自分は落ち着いてて頭ではわかっていても、外からの声で比較される場合があるので避けられない。

圧を感じても流されないのは結構大切だ。
どの選択にしろ、最後に責任を取るのは自分自身だから。

ふたつめ

誘惑がめちゃくちゃ多く、ぶれやすい。

最初になるべくどの方向に転んでも応用が効くように基盤となる技術の蓄えから始めた。
そうして色々取り組んでいると、少し別軸で当たりそうなアイデアが何個か見えてくる。同時に受託の案件もよく耳にするようになった。
要するに、高確率で当てられる内容ですぐにマネタイズ出来る内容に手を伸ばしたくなる。

ここは本当に沢山迷った。

そしてチームメンバーの中心にいるため、それぞれのやりたいことも沢山聞くし常に色んな情報の中心に晒される。故に、もの凄く引っ張られるのだ。
悪く言うと、やろうとしている内容がコロコロ変わる。
良く言えば、人の話をしっかり聞き、色んな方向から検討して最適解を常に探していた。

2人(+1人)の時はチーム内で私の意見がどうしても強く反映され、上手く制御出来ていなかった。けれども、最近新しく入ったメンバーのおかげで、やっとバランスが取れるようになった。

私の話が脱線しそうになると、
「ダメです、戻ってきてください。」とちゃんと止められる人だ。

「一度決めたら振り返らない。それが鉄則です。それを約束してください。」

そんな彼の言葉のおかげで、私の中でも決意が固まった。

丁度その時、本屋で彷徨っていて南場さんの本「不格好な経営」を手にして読んだ。
コミカルな文章を書く方で、強烈に惹かれ、もの凄く会いたいと思った。
周りに、めちゃくちゃ南場さんに会いたいんだけど知り合いやったりせんかぁ!!!って言いまくってたら3日後くらいに、1週間後南場さん講義に来るよと情報を仕入れた。

「講義後はすぐ帰ると思うけど、流石にその後追いかける人はいないと思うから話せるとしたらそこがチャンスかな。出口近くで張ってようか」

と。
全部予想通りで、授業途中でぶった斬って走って追いかける人は他に居らず、ほんの一瞬だけ話せる時間を作れた。

「どれが正解か分からなくて、私、ぶれやすいんですよね」というと

「自覚しているんだったら大丈夫よ。絶対上手くいくから。」

そう言って、
“がんばって!道のりを楽しもう。”
と忘れちゃいけない大切な言葉を贈ってもらった。

講義にユートラの代表岩崎さんもいらっしゃって、列に並んで少し話すタイミングをいただいた。

「どの方向に進むべきか分からないんです。今取り組んでいる分野において市場が存在するのかも、そこを開拓出来るのかも、果たして技術的に何処まで実現できるかも読めなくて、あまりにも不確定要素が多い。ただの博打になってしまわないか心配で、もっと確実に結果が出る方向に進むべきか分からなくなりました。そして、その判断基準もわからなくて、判断材料に使える数値もしっかり取れない状況で…。」

そしたら
「決めるだけだよ。とことんやってみたら良いと思うよ。」と言って、
“LINさんなら絶対にできる!!”と力強い言葉を贈ってくださった。

判断基準がわからないと相談したのに、岩崎さんも南場さんも“決めるだけ”と言っていた。

意味がわからんなぁと思ったけど、2日くらいかけて咀嚼して、それが真理かもなと思った。

私に必要なのはたった一つ、覚悟だった。

それは数年赤を掘り、よめない領域で勝負する事を決める覚悟だった。

そして、やらない事を決めた。
目先のお金稼ぎや受託はしない。
私がやる必要はない。
惹かれるアイデアがあるけど、それは今取り組んでいるのがダメになった後に取り組んでも十分何とかなる内容だから、その時3人でまた会社を作ってやろっか、と。

黒字というのは惹かれる。
でも、お金稼ぎはいつでも出来る。
リスクをとって市場開拓してやろうっていう馬鹿は1人くらい居なきゃだめだ。そう思った。

みっつめ

物事への取り組み方

どうやってやったら良いのか分からない。それの連続だ。何もかもが分からない。分からないことなんて無限にある。

煩雑な書類手続きから、
技術の扱い、一体どの技術を選び取り使うのか、何処の開発に注力するのか、どれほどの知識があればエンジニアと話せるようになるか、どのスペックを持ったエンジニアを採用するべきか、彼は一体どこにいるのか、どうやったら不審がられず仲良くなれるのか、技術は時間をかけて内製化するべきかそれとも業務委託で時間短縮をしてしまうべきか、
市場調査はどうやってやるのか、何処から数字を取ってくるべきか、どうプロジェクトを企画するか、どうチーム構成をするか、チームメンバー1人1人とどうコミュニケーションを取るのが最適なのか、きつく言うべきか褒めるべきか、プロジェクトをそもそも最後までやり切るにはどうしたらいいか、何処までこの企画に予算を振るべきか、資本政策はどう組んでいくか、そもそもこれは私がやるべきなのか人に任せるべきなのか、対外的なキャラクターはどう使い分けるべきかetc

ググったって大した内容は出てきはしないし、教えてくれる人なんていない。

その中でどう進むべきか

結局出来る事をやるしか無いのだなと思った。

そしてここは、人によってやり方が恐らく変わる。と言うのも、人によって適性や得意な内容が違うからだ。

私の場合は片っ端から本を読むことだ。
最低限自分が出来る努力、1番最初の取っ掛かりで真理的ハードルが低いのが私にとっては本だったのだ(これ気づいたの最近なんだよなぁ)

もっと言えば、この人すげぇな!って先輩経営者にあたる人達にDMして、“今の私のフェーズでおすすめの本教えてください”と聞いた本を読む事だ。

正直前迄、経営系の本はそんなに読んだ事がなかったし少し馬鹿にしていた。
が、思った以上に物事の考え方や進め方、動き方が体系化されていて綺麗に纏められているから凄く参考になる。
案外1冊の本を読み込んで、読みながら自分の現状と照らし合わせて、自分は出来ているっけ?と深掘りながら本に沿って考えていくとやりやすい。

“読まないより、読んでた方がいい。”

のマインドで取り組んでいる。それが自分にとって無理なく出来る最低限の内容だからだ。
これが人によっては、“片っ端から人に会う”かもしれないし、“講義動画で学ぶ”かもしれないし、“チャットGPTと会話しながら深ぼる”かもしれない。

私の場合は、人に連絡したり会う事には抵抗はないが、かなり体力を消費してしまうので数をこなせない。なので割とピンポイントで狙いを定めて会いにいく事が多い。

分からない事があれば、先輩経営者にあたる人達にDMをすると応えてくれる。

この世界はやさしさでできている!!!

本当に皆んなめちゃくちゃ優しい。
こんなわけ分からん馬の骨の唐突なDMでも答えてくれるし面倒みてくれる。

最後に

起業家にとってめちゃくちゃ大切なのって案外メンタルコントロールだったりする。

私は自信があるタイプの人間であるけれど、同時に自信がないタイプの人間でもある。
自信の種類によって違うし、環境条件で変わってくる。

何かというと、自分なら絶対に最後までやり遂げられるし形に出来る根拠なき自信はあるけど、自分は自分をそこまで優秀と評価していない意味で自信がない。
自分のやり方があっているのか自信がなくて、ダメダメなんだろうなって思ってしまう。
でもその状態だと他人の言葉に凄く傷つきやすくて、ブレる原因にもなる。

アドバイスという名の元に、自分の言いたいことだけをいって人をコントロールしようとする人はいる。
発言者が自分で物事を一から考えて、実際に動かす難しさを経験した訳じゃない場合には、それが例え善意でも割と見当違いな場合もあるので、
誰の意見に耳を傾けるかは選び取ることは大切だ。それに扱う分野によって、最適とされる動き方は変わる。

大人とはいえ、言葉選びという身だしなみも碌に出来ない人間は一定数いるし、遭遇した場合はなるべく距離を取るしかない。

だから閉心術は本当に大切。
その為には自分で自分の事をちゃんと評価する習慣を身につけようと思った。

結局どの選択でも、最終判断の責任を取るのは他の誰でもない自分だから。

それは単にどの事業に取り組むかだけじゃなくて、誰をチームに迎え入れて、どのアドバイスは聞いて無視をするかとか、目先すぐ見える形にこだわるのか、それともしっかり設計して打ち出し方までこだわるのか、とか全部。

個人的に起業の難しさって、

何が分からないのか分からなくて、何が必要か分からなくて、何が欲しいか分からない事だと思う。
もし分からない内容を明確に一つ一つ言語化できて、必要なものがはっきりと分かるのなら、後は行動を起こすだけでそれは必ず手に入るから。

以上、ただの気まぐれ日記でした
またね

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