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作品の評価に傷つかないための方法

皆さんは、自分の作品を世に発表する前に、正当に評価してくれる誰かに聴かせた事がありますか?

家族・友人・恋人・同僚(場合によってはバンドメンバー)といった人達ではなく、専門学校の講師や作家事務所の担当など、正当に評価する事に対してお金をもらったり、自分の利益になる人達に対して聴かせた事があるかという話です。

そういう人達から自分の作品に対して
・イントロが長い。半分にしろ
・AメロとBメロに同じフレーズが出てくるのでどちらかにしろ
・サビの前半と後半であまり大胆にコード進行を変えると統一感が薄れるので、変えすぎるな
・アレンジが平坦で聴き飽きるので、緩急をつけろ
・サビに音を詰めすぎてごちゃごちゃしている

などと指摘をされて傷ついた事はありますか?

自分の一世一代の工夫を詰め込んだ作品がここまで言われると、今までの作業時間や自分の人格・人生の全てを否定されたような気になってしまう人が多いのではないでしょうか。

今回はその傷つきを回避する方法をお伝えします。


まず、前提としてですが、上記のように具体的に色々指摘してくれる人はとても誠実で親切な人だという事は忘れないでください。

家族や恋人のように自分から近しい人はだいたい「え?ちょっと待って!プロの曲みたい!!」とか「凄い!これ売れるよ!!」とか言ってくれたりします。

とりあえず「イイネ!」と言っておけば楽だというのもありますが、ほとんどの人は音楽制作の知識がなく、あなたの音楽人生を真剣に考えていないからです。

本気で良い音楽を作りたいなら、そういった感想を真に受けてはいけません。実際に戦場に出た後、自分には何の戦力もなかったのだと思い知って苦しむのはあなたです。そうなる前に、お金を払ってでも正しくフラットに判断し、正直に指摘してくれる人に聴かせるべきです。

自分が音楽制作に悩めば悩むほど、正しい指摘がどれほどありがたいものか気付くと思います。

さて、前置きが長くなりました。ここからが本題です。

実際に具体的な指摘を受けた時、頭ではわかっていてもやっぱりヘコんでしまいますよね。「もうやめようかな」と自暴自棄になる瞬間は私にもありました。しかし、ある時、ちょっとした工夫でこの傷つきは回避できると気付いたのです。悪い所をひとつなおすだけです。

一体何が悪いのか・・・?











それは、評価を聞く姿勢です。










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制作者であるあなたは、自分の作品を胸の前に抱えてしまっています。その作品が大事であればあるほど、大切なプレゼントのようにしっかりと抱きしめた状態で「この子の出来はどうですか?」と聞いているのです。これが良くない。

評価を問われた評価者は、あなたに対して真摯に向き合えば向き合うほど、剥き出しの指摘を作品に対して投げかけます。もう一度図を見てください。遠目に見ると、赤い矢印で表した指摘が、あなたに向いているように見えませんか?しかも胸に向かって。

もうお気づきかと思いますが、評価者は悪くありません。むしろ、依頼に対して誠実に対応してくれている良い人なのです。しかし、それがあなたを傷つける。

「作品の評価をしているんだ」と頭ではわかっていても、どうしたって指摘はあなたに向かって飛んでくる(ように感じる)。これが人格否定感の正体です。

これを回避するためには、一旦作品を地面に下ろしてください。そして、できるだけ遠くに置いて、評価者と一緒に眺めてください。

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評価者とあなたは横に立って、遠くにある作品を一緒に眺めていますね。この三角形の立ち位置が正しい評価を聞く姿勢です。

こうやって、二人して作品に対してあーだこーだ言い合うんですよ。作品を遠くに置けば、「イントロが長いよ」と言われても「あ~、確かにコイツにはそういう所がありますよね」と、ある意味他人事のように冷静に指摘が受け入れられるはずです。

もし、これが最初の図のように作品を胸の前に抱えてしまうと、「イントロが長いよ」と言われても「でも!この子はこの子なりに頑張ってるんです!!この方が良いと思って一生懸命作ったんです!!」と、必要以上に作品を庇う心理が芽生えてしまいます。

作品の事を思えばこそ、そのような感情は持つべきではありません。もっともっと作品をブラッシュアップして良くしていかなければならないのだから。そのために、ブラッシュアップすべきポイントをわざわざ教えてもらっているのだから。

作品を自分自身と切り離す。絶対にこれを意識して守ってください。

最後に種明かしをしますと、実はこの考え方のきっかけはとある書籍です。それは、「読者ハ読ムナ(笑) / 藤田 和日郎」という本です。「うしおととら」や「からくりサーカス」で有名な漫画家の方ですね。

該当する部分を少しだけ説明します。漫画家藤田さんは、自身のスタジオに来た漫画家志望のアシスタントとのコミュニケーションを大事にします。いくつかルールがあるのですが、その中に「おれと一緒に映画を観ろ。そして感想を言え」というのがあります。そして、感想を言う時は「おれが好きな映画でも、嫌いな部分があれば言え。お前が好きな映画でも嫌いな部分があったらおれも言う」という掟もあります。

これには「お前が好きな映画はお前自身とは別だ。だから好きな映画を否定されてもお前が否定されたとは考えるな」という思想を叩き込む、という狙いがあります。

漫画家が出版社に作品を持ち込むと、ダメな所を嫌というほど指摘されるそうです。しかし、出版社の方は別に漫画家自身を否定したい訳ではありません。一緒に作品を良くしたいと考えるからこそ、真剣に正直に全て指摘するのです。

映画の感想を言い合うのは、それを理解するための訓練なのだと言うのです。なるほど、と感心し、感動しました。なんて凄い人なんだと。

この本には、他にもクリエイターあるあるな話や、目から鱗がボロボロ落ちる話が山のように出てきます。漫画家に限らず、音楽家でも絵描きでも陶芸家でも、何にでも応用できる話ばかりなので、是非一度読んでみてください。

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