令和3年度会計士試験(論文)素点&答案公開+企業法書き起こし

Twitterでの宣言どおり、私の開示答案が届きましたので素点と内容を公開したいと思います。PDFデータにしており、容量が重くてすみません。
皆さんご興味あるのは企業法2位答案くらいかと思いますが、弁護士が800時間で到達した答案としてご笑覧ください。
注)企業法はあまりに字が汚すぎて信じられないというご意見を頂戴しましたので、全文書き起こしました。「企業法」の項目をご覧ください。

【総合得点及び得点率(偏差値換算後)】

総合  55.71
会計学 49.21
監査論 53.90
企業法 73.60
租税法 57.35
民法  57.50

【会計学午前】

当日の手ごたえ:計算もしっかり考えたし、直近の答練を考えれば偏差値50はあるだろう。なんとか守り抜いたか。
実際:第1問は素点13点(換算後18.8)、第2問は素点6.5点(23.65)
感想:第2問は計算4か所しか合ってないやんか。。。。。学習時間9か月ではこれが限界なのかな。周りの平均点が低くて本当に助かった。

【会計学(午後)】

当日の手ごたえ:計算はそれなりに簡単なように見えたがどうだろうか。第4問の理論はLECでやったところがいくつも出てありがたい。第5問の連結はあかんだろうな。
実際:第3問は素点24.5点(換算後29.75)、第4問は素点42.5点(換算後38.7)、第5問は素点31点(換算後36.55)
感想:おおむね各問平均点前後は取れていたのは意外。第5問は意外に合っていた。

【監査論 53.90】

当日の手ごたえ:相変わらず何をどう書いたらいいのかわからないし、どこまで基準集を書き写せばよいのかわからん。いくつかは確実に題意を捉えたのがあるので、偏差値52はあるかな。
実際:第1問は素点15.5点(換算後24.7)、第2問は素点22.5点(換算後29.2)
感想:第1問が意外と伸び悩んだが、分量は正義なのだろう。

【租税法 57.35】

当日の手ごたえ:理論は書けたと思うが、計算はもうわからん。計算の問題数が例年よりも少ないから、配点読めない。所得も消費も、答練よりは遥かに簡単に思えた。
実際:第1問は素点18点(換算後20.95)、第2問は素点32点(換算後36.4)
感想:第1問が伸び悩んだのは条文指摘や具体の数値・要素への言及が甘かったからだと思われる。第2問計算は、よくここまでこれた。消費6点(10点中)は最大の成果。

⇒ここまでが必須科目。私は司法試験合格者なので、企業法と選択科目(民法)は免除されるため、本来であれば上記科目だけ受験すればよかったのです。
しかし、合格を確実なものにするため、貯金用として企業法・民法も免除を申請せずあえて受験しました。

なお、これはただの結果論ですが、企業法・民法を免除していても、総合偏差値51.5はギリギリ超えているので合格していたはずです。

【企業法 73.60】

手ごたえ:法曹なら解けるだろうが、これを会計士試験受験生に問うのは厳しすぎないか。第2問の問2は俺でもよくわからん。
実際:第1問素点38点(換算後35.4)、第2問素点40(換算後38.2)
感想:2位ということで法律のプロの威厳を見せれてよかった。1位の友人(弁護士)は73.9だったので、1位にはあと少し足りなかった。

(追記:企業法の答案の書き起こし)

第1問
問題1
本件譲渡はそもそも取締役たるAにより行われているところ、甲社は取締役会非設置会社であり、他に代表者の指定もないからAは甲の代表権を有する(会社法(以下「法」)349条)。ここでAによる甲保有の乙株式譲渡は、単なる株式譲渡(法127条)ではなく、甲の総資産の半分を占め、その議決権比率の100%を譲渡するものであるから重要な子会社株式譲渡にあたる(法467条1項2号の2イ及びロ)。そのため本件譲渡には株主総会の特別決議による承認(法309条2項11号)が必要となるが(同条1項但書)、Aは他の株主に知らせず本件譲渡をしたのでこれを欠く。そうすると、法令上必要な株主総会決議を欠く重要な子会社株式譲渡の効力が問題となるが、法が組織再編や事業譲渡についてその重要性にかんがみて総会決議を求めていることや、これを欠く行為を有効とすると法的潜脱が生じることを考慮すると、かかる譲渡の効力は無効と解するべきである。したがって本件譲渡は必要な株主総会決議を欠くため無効となる。

問題2
Bによる本件総会の決議取消請求は、本件総会の開催日から3か月以内にされており、Bは株主であることから形式要件は満たす(法831条1項)。次に実体要件については、本件ではAの相続財産である40株の準共有株式の権利行使の有効性が論点となるところ、これが無効であれば本件総会は考慮すべきでない40株を考慮して決議をしたことになるから「決議方法の法令違反」があったといえる(同項1号)。ここで準共有株式については、これも「共有に属する」株式として扱われ、法106条の適用を受ける。法106条は共有株式について、共有者は権利行使者を1人定めてその旨を会社に通知しなければ、その共有株式について権利行使できないとするところ(法106条本文)、本件ではB、C、Dらの共有者は事前に権利行使について何らの合意もしていなかったから、上記の権利行使者の指定はなく、ゆえに権利行使は違法である。この点について、甲社が、実際にCによって強行された準共有株式の権利行使に同意をしていることをもって、法106条但書に定める「同意」があるとして本件準共有株式の権利行使を有効と考える余地はありうる。しかし、法106条但書の趣旨は会社側では共有者側の事情をわからず、株主総会の円滑な実施という事務上の便宜にあると考えられるから、会社が共有者間の事情を把握しており、少なくとも共有者間で過半数の同意がないことを知っていながらこの同意をしたとしてもそれは無効と解するべきである。本件は甲はB、C、Dのみを株主としており、かつBはこの準共有株式の行使に反対していたことは株主総会の場で明らかなのだから、共有持分の50%をもつBの反対によってCを権利行使者とすることの過半数の同意がないことは会社において知っていたといえる。したがって但書の同意は無効となり本件40株の準共有株式の権利行使は違法であって無効であるから、本件総会決議には決議方法の違法が認められる。よってBの請求は認められる。

第2問
問題1
本件において取締役であるAは会社戊との関係において忠実義務(法355条)及び善管注意義務を負っており、会社財産に任務懈怠をして損害を与えてはならないとされる。ここでAの主張する「経営判断原則」とは、会社経営が高度に専門的であり、かつ予測が困難であるにもかかわらず裁判所が後知恵で任務懈怠を認定しないよう、一般的な経営者を基準として、その経営判断の基礎とした事情や内容、過程に著しく不合理な点がなければその判断を尊重し、任務懈怠を認定しないという準則のことを指す。しかしながら本件でAは虚偽記載という違法をしてまで目的を果たそうとしているところ、経営判断原則と法令遵守の関係が問題となる。そもそも取締役は法355条において「法令・・遵守」義務を明確に負っており、この法治国家において法令に反してまで会社経営を優先することは想定されていないことから、経営判断原則はあくまでも法令の範囲内で認められるものと考えることが相当である。したがってAの主張は金商法違反行為があるにも関わらず経営判断原則の適用を求める点で妥当ではないから、Aの主張は認められずAの355条違反が認められる。

問題2
本件訴えは株主Dによる取締役Aの任務懈怠による会社に生じた損害賠償請求である(法847条 法423条1項)。本請求が認められるためには、①取締役の任務懈怠、②会社に損害が生じたこと、③任務懈怠と損害との間に因果関係があることを満たす必要がある。ここで①についてはAには金商法違反による虚偽記載が認められるものであり、これは意図的にされているから満たす。次に②については会社は金商法の罰金を納付しており1億円の損害があるといえる。そして、③については、Aが虚偽記載をしなければ、会社は②の1億円を納付する必要はなかったといえるから、Aの任務懈怠(違法行為)と会社の損害との間には因果関係が認められる。ここでAは本件罰金はあくまでも戊社という他者に科されたものであって、金商法は戊が支払って終わりとすることを求めているからこれを自らが求償されることは不当であるという趣旨の主張をしていると考えられる。確かに戊会社はAとは別個の法人格を有しているとはいえるが、戊は会社であって個人ではなくAら取締役の行為なくして何らの活動もなしえないこと、Aは戊の代表取締役であって戊とは実質的に同一と考えることもできること、金商法207条1項は行為者への求償を明確に否定していないことからすると、Aの行為と戊社の損害の因果関係をAのような主張によって切断することは相当ではない。これを認めてしまうと、法が423条をもって、自ら独立活動し得ない会社損害の救済を認めた趣旨にも反してしまう。よってDの請求は所定の要件を満たすから認められる。

【民法 57.50】

手ごたえ:こっちも難しいな。法曹なら解けるだろうが、法曹以外で民法受験している人がいたら悲劇だ。
実際:第1問素点24点(換算後26.55)、第2問素点42.5点(換算後30.85)
感想:受験者レベル高すぎる。第2問に至っては得点率8割超でも偏差値60って、周り全員法曹やろこれ。

【まとめ ⇒ 司法合格者は必須3科目+企業法でいくべし。民法は免除を使った方がいい。】

今回の受験で費やした800時間程度の勉強時間の内訳は、
管理会計:3割程度
財務会計:4割程度
租税法:2割程度
監査論:1割程度

くらいではないでしょうか。あきらかに管理会計は勉強時間の投入のわりにリターンが乏しかったですね。。。悔しい。

詳しい勉強方法などは、また改めて記せればと思っています。

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