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村上隆のイマジネーションを「形」に。「日本を背負う」という責任感

世界的に活躍する現代美術家・村上隆の絵画を制作する「絵画制作(ペイント)スタッフ」。その現場監督である二人に、仕事内容や学生時代の経験について聞きました。今回は、11年間村上隆のアートを生み出す現場で絵画制作にあたる、彼らの意識の変化や仕事へのモチベーション、私生活までを深掘りします。

プロフィール
氏名:Y.I(男性)
学校:美大卒(彫刻専攻)
経歴:2011年入社 参加プロジェクト「An Arrow through History:Gagosian Gallery(2022年)」「村上隆の五百羅漢図展:森美術館(2015年)」など複数。現在はペインティングディレクター職として勤務。

氏名:A.F(女性)
学校:美大卒(グラフィックデザイン、イラストレーション専攻)
経歴:2011年入社 参加プロジェクト参加プロジェクト「An Arrow through History:Gagosian Gallery(2022年)」「村上隆の五百羅漢図展:森美術館(2015年)」など複数。現在はペインティングディレクター職として勤務。

締め切りとの闘いは常に隣り合わせ

——毎月、どのぐらいの作品が制作されるのですか。
Y・I:月によって大きさも個数もバラバラです。直近では、60センチメートル四方の作品を1カ月で108作品制作しました。別な月には、縦5メートル横15メートルに及ぶ巨大壁画のような作品を手掛けました。作品制作は、村上の閃きやクライアントからの発注に基づくため、制作数はまったく読めません。

——制作していて大変だと感じることはありますか。
Y・I:制作に3カ月は必要そうだ、と感じる作品が「1カ月の納期で」と言われると苦しいですが、完成した時の充実感はハンパなかったです。締め切りが明確にあっても、なかなか思い通りに進まないことがほとんどです。デザインができあがってから「絵画制作(ペイント)スタッフ」の現場に降りてくるため、私たちが間に合わせるための最後の砦になっています。

たとえば2014年に、ニューヨークの展示会になんとかして間に合わせるため、日本の制作スタッフ30人が現地に飛んだことがあります(笑)。アトリエにこもって描き続けて時間との闘いでしたが、大きな達成感もあった印象深い出来事です。

2014年、ニューヨークの展示会にて

芸術の歴史の1ページを創造する重み

——入社してからいまに至るまで、意識の変化はありましたか。
Y・I:入社した当初はとにかく必死でしたが、ある程度の工程を覚えてからは「職人としてのやりきり」を意識するようになりました。美術大学では作家になることを目指し、自分が意思決定者となり制作しますが、カイカイキキの作画工房では、それとは違った村上隆の頭の中をシミュレーションしていくことが出来ます。

漫画の世界でも、アシスタントが先生に付いて、プロの世界を理解できるような感覚に似ていると思います。

作業中のメンバーたち 右端 A.F氏

——日々のモチベーションについて教えてください。
A・F:展覧会場で、世界中の人々に驚きと感動を与えるものへと作り上げた瞬間です。ここ数年では、SNSでもリアクションの強さ弱さで手応えを感じたりもします。全くの新しい絵柄で「これは無理だ」「できないかも」と感じる要求もあります。しかし、それを突破し、村上が見ている景色が工程を踏んでいく中で理解できるようになっていくと「世界のトップの芸術を創り上げられた誇り」を感じられますね。

Y・I:村上の作品が好きで、作家として大変尊敬しています。新しい展示会などで絵画制作の段取りを作れる、携われていることや、責任ある立場を任されていること自体がモチベーションになっています。

オンオフの切り替えを大切に

——年数を経て、最近悩みや感じることはありますか。
A・F:管理職の立場となってきたことで、部下の教育について考えますし、「絵画制作(ペイント)スタッフ」全体をどうやって組織で回していくか悩むことがあります。

左・A.F氏と作業中のメンバーたち

Y・I:新入スタッフとの年齢が離れてきたので、教育の際、意識のギャップについて考えてしまうことがあります。仕事の進め方の緩急や、ピリッとしなければいけない場面など、そういうメリハリを20代前半の若者に伝えるのは難しいですね。

——ワークライフバランスについて教えてください。
Y・I:夜勤が長いのですが、家族の理解があるので何とかなっています。休日は大学時代から続けているバンド活動をしています。 

A・F:入社当初は無我夢中でしたが、ここ最近は、責任をもって仕事をしていく上で健康面も意識するようになり、現在はオンオフの切り替えを大事にして、より良い仕事、制作を行えるよう気をつけています。

働いて得られる経験値

——ペイントの仕事は作品を作り出す「会社の顔」のような存在ですよね。それについてはどう感じていますか。
Y・I:純粋にモチベーションになっています。社長である村上はよく現場に来て叱咤激励するのですが、「日本を背負う」というニュアンスもあり、一層身が引き締まります。一美大生では到底関われない、この規模感が励みになりますね。

——ペイントスタッフとして働きたい人へメッセージをお願いします。
Y・I:規模感の大きい作品や、個人ではできない経験、何にしても世界一の芸術創造の体験がここにはあります。アートが好きな人にしてみれば、教科書に載っていたり、ニューヨークのトップギャラリーで取り扱いのある作家の作品制作に携われたりすることは本当にすごいこと。かけがえのないものだと感じます。

まとめ

村上隆の作品制作現場だからこそ体験できる世界が、カイカイキキにはあります。世界的に活躍する現代美術家の、世界一の絵画制作ノウハウを持つ現場で一緒に働いてみませんか。アートの最先端で働きたい、芸術の世界で生きていきたい、そんなあなたの応募を待っています。









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