見出し画像

怪獣着ぐるみ解剖実験

俺は、ドマイナーだが根強いファンがついている特撮番組で、着ぐるみアクターの仕事をしている。
特別脚本が良いわけでもなければ、これといった人気のキャラクターがいるわけでもなく、着ぐるみの造形がいいわけでもない。

じゃあ何が人気なのか。
それはDVDの特典に、やたらマニアックで手の込んだ映像を追加撮影するからである。

今日も追加撮影の収録だ。
怪獣ができるまでを映像にする。
流れ的には遺伝子工学を用いて実験的に強い個体や能力を厳選してます、という映像をとる。
今回はその強い個体の評価パートの撮影だ。

今日オレがやる役は、遺伝子改良中の怪獣だ。

怪獣が手術台の上に寝かされ、手足を頑丈な枷で拘束し、身動きできないように固定された。
かたわらで手術着を着た怪人が俺の怪獣の遺伝子データをながめたり、戦闘員が道具をそろえたりしている。

実験を指揮する怪人は、おもむろに怪獣にメスを突き立てY字に胸と腹を切り開いた。
腹圧で腸のような器官がぷりぷりと傷から押し出されてきた。
肋骨のすぐ下から膨らんだりしぼんだりする肺と、その奥に脈打つ心臓が見えた。

麻酔無しで行われるため、怪獣は激痛に悶絶するが、拘束が強くどうにもならない。
怪人は感情は見せずに事務的なようすで、内臓の間に手を突っ込んでかき回した。
内臓はさらに腹から飛び出し、腸の一部が傷から飛び出て垂れ下がった。
怪獣は激痛でもがいている。

怪人は肋骨の下に手を差し入れ、心臓を直接掴んだ。
ぎゅっと力を入れると、怪獣はよほど苦しいのかさっきまで大暴れしてたのが急に動きが鈍くなる。

怪人は、周りに指示を出して怪獣の拘束を解いた。
怪獣は、苦しそうに心臓を握る怪人の手を掴み、何かを訴える表情をする。
こころなしか悲しそうにも見える。

しかし怪人に慈悲なく、心臓を力任せに引き抜いた。
怪人の掌で心臓は鼓動を続ける。
怪獣の心臓なのでかなりでかい。

怪獣は、再び大暴れをはじめた。
手術台から転げ落ち、立ちあがって胸をかばう様子を見せながらあたりのものや戦闘員を見境なく蹴散らした。
その間、内臓は傷口からこぼれる一方だ。
腸を大部分引きずり、胃や肝臓やこの怪獣特有の臓器たちがだいぶずり落ちて完全にはみ出してきている。
腸は怪獣が自分で蹴ったり踏んだりしているので、かなり傷つきところどころ破れている。
肺の裏からはドバドバ血が流れ出ていて、下半身はもはやそのせいで真っ赤に濡れている。

あまり派手にやりすぎると、赤い全タイを着て内臓の後ろに隠れている俺の身体が見切れてしまうと心配したが、映像を見る限り見切れててもあまり気にならなかった。

出血と内臓が傷ついているせいで、怪獣は急激に弱ってきた。
膝に力が入らない様子で、頻繁にガクッと膝をついてはまた立ち上がっている。

やがて、怪獣は自分から飛び出た腸を思いっきり踏んでバランスを崩し、そこからいよいよ立てなくなった。
逃げ回っていた戦闘員たちが集まってきて、怪獣をリンチにしはじめた。
これ以上研究室を破壊されると困るからだ。

戦闘員たちは手近な棒で怪獣を滅多打ちにしたり踏みつけたりして怪獣を必死に弱らせようとする。
当然全員内臓を狙うので、作り物の内臓ごと赤全タイの生身の部分に攻撃が当たって痛い。
言っても仕方ないので我慢する。

最初は怪獣は這いずりながら内臓を引きずって逃げようとした。
しかし戦闘員の執拗な攻撃に屈して、倒れ込んで口から泡を吹きながら痙攣しはじめた。

怪獣を倒せたことでテンションの上がった戦闘員たちが怪獣の顔面や股間などを踏みつけて自分の優位を誇示していた。
怪獣は泡を吹いて細かく痙攣している。

怪人が怪獣のところにつかつか歩いてくると、怪獣の頭部を何回も何回も踏みつけはじめた。
何回目かの踏みつけで頭がスイカかかぼちゃのようにぐしゃっと潰れた。
頭が潰れた瞬間、怪獣は仰け反ってブリッジしてるみたいに長時間身体を膠着していたが、徐々にそれも緩み、ゆっくりと力が抜けていき沈黙した。

怪人は周りの戦闘員に片付けの指示を出した。
怪獣の死体は4人がかりで死体袋に入れられ、別の研究施設に送られていった。
潰れた頭やちぎれた内臓に飛び散った血をモップで拭いている戦闘員もいた。

後日、DVDが発売され、特典映像は大変好評だったらしい。
監督の話だと、こういうフェチの人によく買われるのだという。
どんな人でも自分の出演してる作品が評価されるのはうれしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?