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【認知症ってどんなもの?】認知症HOTサポートセンターへ突撃!

あいさつ

 認知症ってそもそもどんなものなの?
 みなさんこんにちは!滋賀大学陵水新聞会の大内です。

 私たち陵水新聞会は昨年にじいろのからすさんと、介護冊子の制作を行いました。今年からは冊子で取り上げられなかった部分について取材し、フリーペーパーを発行します。このアカウントには、そのための記事を掲載していきます!

 今回は部員の宮下・水江と一緒に、認知症介護のサポートに特化した『認知症HOTサポートセンター』の介護支援専門員の西村りう子さんにお話を伺ってきました。
 最近よくニュースや新聞の話題に上がる認知症。年々その数は増えており、いつか誰もがなる可能性のある症状です。
 この記事では、認知症とはなにか、私たちに今できることはなんなのかについて深めていきたいと思います。

*   *   *   *   *

【話題1】そもそも”認知症”とは?

大内:
こんにちは!本日はどうぞ、よろしくお願いします。

西村さん
よろしくお願いします。

インタビューの場所は『HOTサポートセンター』の一室をお借りしました。

住所:彦根市竹ヶ鼻町292-1

宮下:
さっそくなんですが、認知症ってそもそもどんなものなんでしょうか?よく聞きますし、なんとなくはわかるのですが…

西村さん
ええと、みなさんの脳には、様々な役割がありますよね?
覚えるとか、判断するとか、物事の認識も脳が行っていると思います。

宮下:
ふむふむ。確かに脳にはたくさんの機能がありますね。
生活していくうえでは外せない役割ばかりです。

西村さん
そうなんです。
そんな脳の神経細胞が、なんらかの要因によって一部分でも壊れたりすると、その部分が持っていた役割が果たせなくなってしまいます。
すると、普段の暮らしにも支障が出てきてしまう。そんな状態を認知症と言います。
特に多いのが記憶障害ですね。

認知症の概要 ※いろんな認知症がある

宮下:
なるほど。
想像しただけで不安になる症状ですが…今、認知症の方はどんどん増えているんですよね?

西村さん
はい。現在も多くの人が認知症になっていて、おそらくこれからもどんどん増えていくと思います。
将来的な推計では、2025年に730万人が認知症になると言われていて、これは65歳以上の5人に1人の割合です。

宮下:
特別な人がなるのではなく、年齢と共になってしまう、誰もがかかる病気が認知症なんですね…

西村さん
そうなんです。
認知症は記憶や思考と関わりが深いので、今まで通りの生活が難しくなるだけでなく、事件や事故と繋がりやすいのも現状です。
例えば、認知症の方が関わる交通事故や行方不明事件は全国で毎年約2万件にも上ります。

大内:
え!そんなにですか!?

西村さん
認知症はご本人やそのご家族だけでなく、その地域のみんな、社会のみんなが知って、考えて、支えてもらう必要がある症状です。
国の方でもそういった考えが広がり、今年6月に認知症基本法ができました。

認知症基本法とは

宮下:
年齢などは関係なく、みんなが認知症のことを知って、支える社会を作ることが大切だということですね。
これからどんどん認知症の方が増えていく以上、そうした社会を作ることは巡り巡って自分のためにもなりそうです。

【話題2】認知症HOTサポートセンターってどんな場所?

大内:
私たちにできることや、どう支えたらいいのかについても深堀したいのですが…その前にここ、「認知症HOTサポートセンター」が何をしている場所なのかをお聞きしても良いですか?

西村さん
主に行っているのは
①早期気づきや診断治療、早期対応のための支援
②認知症を理解し、地域で支え合えるための活動
③ご本人やご家族がほっとできる場所づくり

の3点です。
認知症になったとしても、サポートを受けながら、自宅の良い環境のなかで安心して暮らしてもらえるように仕事をしています。

①早期気づきや診断治療、早期対応のための支援

宮下:
①では、主にどのようなことをされているんですか?

西村さん
そうですね。主に相談支援と定期的な「脳の健康チェック」をしています。相談支援では
「認知症が進んできたんだけど、どんなサービスがおすすめ?」
「最近ちょっとおかしいんだけど受診すべき?」
「家族の認知症にどう対応したらいい?」
など、様々なお悩みが寄せられます。

宮下:
そうしたお悩み相談に乗る中で、大事にしていることはありますか?

西村さん
早期気づきや診断治療、早期対応につなげることです。
まだ認知症が進み切っていないうちに、進行を止めたり、改善を目指したりすることはとても大切です。そのため認知症初期の方には特に集中して支援・サービスを行っています。
認知症の初期の方がいらしたときには医師や看護師、保健師、社会福祉士など様々な職が協力してサポートする認知症の初期集中チームが組まれます。

宮下:
「脳の健康チェック」とはどのようなものですか?

西村さん
タッチパネルを用いた、物忘れなどの進行具合をチェックする事業です。年に4、5回、広報を用いて宣伝しているのですが、地域の方に脳の健康を診断してもらって、こちらも認知症の早期発見につながればと思っています。

宮下:
早期発見をすると、やっぱり改善することもあるんですか?

西村さん
はい。
詳しいことは下の図を見てもらえればと思いますが、
認知症はまず「MCI(軽度認知障害)」から始まります。

MCIとは

西村さん
MCIのときの予防効果は、回復するのが10%、現状維持が10~40%程度です。つまりなにもしなければ50%の人が、5年以内にアルツハイマー型認知症に移行します。
ちゃんと予兆に気づいて対策すれば、食い止められる可能性もあがるということです。
不安なこと、心配なことが増えてきたら、すぐに私たちか地域包括支援センターに相談することが大切です。

宮下:
認知症と診断されるのは少し怖くもありますが、まずはそうしないと始まりませんもんね。

アルツハイマー型認知症

西村さん
はい。
初期と比べ確率は下がりますが、移行後であっても、きちんと手だてを考えれば、回復の可能性もあります。回復できずとも現状維持につながることもあると思います。
なにもしないと、多くの場合どんどん悪化してしまうのが認知症です。

宮下:
そうですよね…。

西村さん
ちなみに、認知症に見えて、認知症じゃない場合もあります。ただの物忘れはもちろんのこと、甲状腺の機能低下でも似た症状が出るんです。その場合は手術をすればもとに戻ることもあります。

宮下:
え!?そうなんですか?

西村さん
よく勘違いされるのは、頭を打ったときにおこる似た症状ですね。
特に年を取ってくると、頭を打った後すぐには症状が出てこず、3か月くらいして頭に血がたまって、それが認知症と同じような結果をもたらすことがあります。
そういうときは、手術で血を抜けば元に戻ります。

大内:
どちらにせよ、異変を感じたらすぐに受診ってことですね。

西村さん
それが良いと思います。
現状、多くの方はMCIを通り越して、明らかに認知症であると診断されるくらい進んでから、こちらにいらっしゃいます。
お二人は、認知症が昔、痴呆症とも呼ばれていたのをご存じですか?

宮下:
聞いたことはあります。

西村さん
今も、特に高齢の方にとって、認知症のイメージは痴呆症という言葉と結びついており、かかったらもう何もできなくなると思われていることが多いです。
認知症になっても、できることはたくさんありますし、サポートを受けながらにはなりますが、家事などをしながらある程度自立した生活を送ってもらうことは可能です。

西村さん
なりたくない、診断されたくないという気持ちもわかりますが、しっかり認知症のことを知って、できる限り住み慣れた地域の良い環境で、自分らしく暮らし続けてもらいたいですね。


②認知症を理解し、地域で支えるための活動

宮下:
二つ目の、「②認知症を理解し、地域で支えるための活動」も、それに関係したものですか?

西村さん
はい。私たちは認知症の方を地域で支えるための仕組み作りを行っています。代表的なもので「認知症サポーター養成講座」というものを行っています。

宮下:
認知症サポーター養成講座…
認知症の方をサポートできる人材育成、ということですか?

西村さん
そうですね。認知症の方でも、体は元気だという方は多く、普通に街を歩いていて出会うこともあります。
小学校から大学までの教育機関、自治会や老人会にも行って認知症の方と会ったらどうサポートできるか、知ってもらうための講座を行っています。他にも、企業さんに呼ばれることもありますね。

宮下:
企業と認知症の関係っていうのは…

西村さん
例えばスーパーや銀行、郵便局など、生活に密着したサービスを行っている場所では認知症の方もいらっしゃいます
過去に
「レジを通さずにパンの袋を開けて食べてしまった人がいる。どうしよう」
というご相談をいただいたこともあります。

宮下:
認知症の方だったということは、悪気があってしたわけじゃないかもですけど、一応事実上は万引きみたいになりますもんね…

西村さん
そうなんです。
認知症の方も悪いことをしようと思ってしているわけではないですし、企業さん側も責め立てたいわけじゃない。
だからこそ、どんな対応をしたらいいか、穏便に途中で止めることはできなかったかなど、すごく前向きに考えられている企業さんは多いです。だから最近は企業さん側から出前講座を頼まれることもありますね。

③ご本人やご家族がほっとできる場所づくり

認知症カフェの詳細はコチラ

大内:
他に、認知症周知のためにされていることはありますか?

西村さん
認知症基本法のなかでは、9月21日に認知症の日を定めて、9月を認知症のイベントが行いやすいようにアルツハイマー月間としています。
彦根市では彦根城をオレンジにライトアップしますね。今年も9月の20日前後で行いました。他にもスーパーでチラシを配ったり、展示はもちろん、ビバシティでひこにゃんと一緒に体操をしたりだとか。

宮下:
すごく彦根市らしい取組ですね…
そのなかで「③ご本人やご家族がほっとできる場所づくり」に関わってくる部分はどのようなお仕事なんですか?

西村さん
彦根市内にはご本人さんやご家族がほっとする居場所作りをされている団体・活動がいくつかあります。
例えば認知症カフェや若年性認知症を応援する事業などですね。
そこに出向いて、相談に乗ったり、サポートをしたりということをさせてもらっています。

宮下:
たくさんの人が認知症のことを知って、
みんなで支え合える社会になると良いですね。

【話題3】私たちにできることって?

宮下:
実際、私たちが認知症の方にできるサポートってなんなのでしょうか?

西村さん
やはりまずは認知症のへ理解を深めてもらうことが大切だと思います。
よく認知症の人は、認知症に気づかないと思っている人が多いですが、それは違います。認知症の症状に最初に気づくのはやっぱり本人なんです。
自分の知らないうちに、いろんなことを忘れたり、それが原因で今まで通りの生活が送れなくなるのは不安で、悲しいことですよね。

大内:
本当にそうですね…。

西村さん
私たちが行っている認知症サポーター養成講座では、認知症の知識はもちろん、予防の仕方やサポートの際の姿勢などを伝えています。
認知症の方も、多くは普通に生活をされているので、みなさんが街にでれば出会う機会もあるはずです。
そういったときに、関わる多くの人があたたかく見守る町になれば、認知症の方もそのご家族さんも、安心して外に出ることができますよね。
ご興味があれば、講座を受けてみて下さい。

宮下:
家族が認知症になったら、病院に行くことはもちろんですけど、まず初めにどう対応するべきですか?

西村さん
対応という面では、なかなか、うまくはできないと思います。
初期、中期、後期と認知症が進行していくと同じことを何度も聞いたり、できていたことができなくなったりして対話に困ることも増えてくることもあります。
特に最初はすごくショックを受けられるご家族さんが多いです。

宮下:
そうですよね…
ご家族さん側のケアに関して、何かされていることはありますか?

西村さん
あります。
彦根市にはご家族さん同士で交流できる、認知症の家族会があって、そこの応援やサポートを行っています。
あとは先ほど少し触れた認知症カフェもありますね。
認知症の方との接し方は、ご家族さん同士で共感しあいながら話し合っていただくことが必要だと思います。

大内:
もし徘徊している認知症らしき人を見つけたら、どうすればいいですか?

西村さん
警察に連絡ですね。
もしかしたら、急に家を出てしまって探されている認知症の方かもしれません。
また彦根市には「彦根市メール配信システム(行方不明高齢者の捜索者情報)」があります。
登録していただければ、現在行方がわからなくなっている方の情報を、ご家族さんが提示している場合があります。

宮下:
地域で認知症の方を見守ることができる、温かい町になると良いですよね。

終わりに

大内:
最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします!

西村さん
認知症になったとしても、できることはたくさんあります
関わるうえで大切なのは「さりげなく自然に」。適切な援助をしてくれる人がいれば、認知症の方でも多くのことを自分で行うことができます。
サポートに興味のある方は、ぜひ講座を受けてみて下さい
ご相談は地域包括支援センターか、私たち認知症HOTサポートセンターへお願いいたします。

大内・宮下:
ありがとうございました!

*   *   *   *   *

将来、誰でもなる可能性のある症状である、認知症。
みんなが住みやすい町をつくるために、一人ひとりが認知症を理解し、優しく見守る心を持つことが大切です。

今認知症を知ることが、周りの人のためになり、いつかは家族のため、自分のために繋がります。
認知症になったとしても自分らしく生きるために。
地域で支え合いながら暮らしていきたいと思いました。

最後になりますが、取材に協力してくださった西村りう子さん。
様々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

認知症HOTサポートセンターについてはコチラ


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