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【福祉理容士のお仕事】身なりを整えて、元気にいきいきと!

あいさつ

 髪を切ってさっぱりすると、気持ちが明るくなること、ありませんか?ご無沙汰しております。滋賀大学陵水新聞会の奥田です。

 私たち陵水新聞会は大学の自主企画プロジェクトと呼ばれる活動の一環として、この度にじいろのからすさんと、介護冊子の制作を行うことになりました。このアカウントには、その冊子のための記事を掲載していきます!

 今回は編集長の宮下と共に、「出張カット スマイル」理容士、小林素美さんにお話を聞きました。
 出張カットは外に出かけづらい方々のおうちへ行ってカットをするお仕事。お顔剃りやカットのサービスを通し、気持ちが明るくなるきっかけ作りをされています。
 取材場所は彦根市役所6階展望スペース。彦根城とその城下町が一望できる空間でインタビューをしました!

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【話題1】出張カットってどんな内容のお仕事?

宮下:
本日はよろしくお願いします!

小林さん:
よろしくお願いします。

宮下:
まずは小林さんがされている出張カットについて教えてください!

小林さん:
はい。私の肩書は『福祉理容士』というもので、病気や高齢になって、床屋や美容室に行けない方のために、ご自宅に訪問して髪の毛をカットしたりお顔そりをしたりということをしています。

出張カットとは?

宮下:
理容師って理容師資格がいると思うんですけど、福祉理容士となるとどんな資格がいるんですか?

小林さん:
一般的には、理美容師が福祉利用養成講座を受講して合格するとなれます。ただ私は介護士の資格もあると良いかなと思って取得しています。

宮下:
もとからこのお仕事をされていたんですか?

小林さん:
いえ、ずっとやっていたわけではなくて、もともとは金融機関に勤めていました。

宮下:
そうだったんですか!
カットするのは高齢者の方が多いんですか?

小林さん:
いえ、そうでもなくて10代から80代の幅広い年齢層の方をカットしています。
介護区分が進んでしまって家から出ることが難しい人や、病院や施設で生活をしている人など、実は結構いろんな方がいらっしゃるんです。身体を診る病院だけでなく、精神科にも出張しているので、様々なお客さんと知り合えます。

宮下:
訪問カットは介護保険の対象になるんですか?

小林さん:
 残念ながらならないんです。昔はヘルパーさんが髪の毛を切っていたんですが、今はもう禁止になってしまったので、理容士や美容士のみがカットできるという形です。一応、市によっては補助があったりするそうです。

そんな小林さんは福祉理容士のお仕事を通じてテレビの取材を受けたことがあるそうだ。

小林さん:
5年ほど前にNHKさんの番組で取材をしていただいたことがあるんですよ。

宮下:
そうなんですか!

小林さん:
はい。内容は寝たきりになった方のカットをするというものです。5分くらいの長さでしたが結構評判が良かったので2回全国放送していただきました。

この活動を通じて東北の方から手紙が届くなど大きな反響があったそうだ。

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【話題2】実際の流れはどんな感じ?

宮下:
もしカットをお願いする場合はどうしたらいいんですか?

小林さん:
まずは私たちの事業所の方にお電話をしていただきたいです。そこでお伺いする日程を決めます。

宮下:
その際に伝えておく必要があるものとかはありますか?例えば…介護区分とか

小林さん:
そうですね!やっぱり介護区分が上がっていくにつれて自力で動くことが難しくなってくるので必ずお聞きするようにしています。自力で動けない寝たきりの方だと持っていく器具が変わってくるんです。

宮下:
そうなんですか!?

小林さん:
はい。例えばベットに切った髪の毛が落ちたままだと気持ち悪いといった不快感を感じてしまいます。なので介護用の掃除機を使って最後に掃除をするんです。

カット時のキーポイント

宮下:
髪を切ってすっきりしても、不快感があったら大変ですもんね。利用当日に、用意しておく必要があるものはありますか?

小林さん:
お客様がご用意いただくものはありません。カットのお値段にすべて含まれているので。

宮下:
お値段はどのくらいでされているんですか?

小林さん:
私の営業所の場合ですが、ご家庭にお伺いする際の値段だとカットが3000円です。寝たきりの方だとベッド周りにある器具などに注意を払ったりするので寝たきりじゃない方よりも注意を払う必要があるんです。なのでベッド上でカットをする場合は4000円を頂いています。

まとめ

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【話題3】カットで気をつけているポイントって?

宮下:
小林さんはカットをする際にどういったところに気を配っていますか?

小林さん:
そうですねぇ、なるべく利用者さんと会話をすることを心がけています。実は、家にいる方でも、施設にいる方でも、誰とも話さないっていう人が結構いるんです。

宮下:
そうなんですか!?

小林さん:
はい。これは実際にあった体験なのですが、話しかけてみたらうれしくて泣いてしまわれた人もいたくらいです。ちょっとしたことでも話しかけて、なにか素敵なところを見つけたら、すぐに言う。そうするとすごく喜ばれるんです。

宮下:
いくつになっても褒められるとうれしいですからね。

小林さん:
そうやって褒められたことはお客さんも覚えてくださっているようで、こちらとしてもすごくうれしいです。なのでご自宅に訪問する際はお話が出来るように、できるだけ時間に余裕があるようにしています。

宮下:
コミュニケーションはいつになっても大事ですもんね。

小林さん:
あとは高齢者の方はお体を痛められていることがよくあるので、マッサージをするようにしています。ちょっとしたことですが喜んでいただけていますね。

訪問カットを長年やってこられた小林さん。驚くような体験をたくさん語っていただいた。その中でもカメラマンに徹していた筆者が思わず聞き入ってしまった話をここで紹介する。

小林さん:
以前ある利用者さんのカットをすることになりました。その方はまだ60代くらいの若い方だったんですけど、糖尿病で、ベッドから動くことができず、毎日70錠の薬を飲まれていました。

宮下:
70錠ですか!?

小林さん:
そうなんです。その方はベッドから降りれない状態で、トイレに行くにも這って行くような状態でした。そんな状態だったからか顔剃りとカットをしていたのですが、本当に暗いお顔をされていて。

宮下:
苦しそうですね…

小林さん:
でも、この顔そりがかなり気持ちよかったようで頻繁に呼んでいただくようになりました。やっぱり身なりがきれいになると*QOLが上がるんですね。「カラーもやろうかな*」といったことをおっしゃるようになってどんどん前向きになっていきました。

*QOL・・・Quality of Life (生活の質)
*現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のためカラーの提供は中止されています

宮下:
身なりがきれいになるとうれしくなりますもんね。

小林さん:
驚いたのはここから。いままでの這う生活から一転「ちょっと外に出てみようかしら」とカートを使って外出され始めたんです。そしてだんだん車を運転したりと生活が改善され始めました!

宮下:
身なりがきれいになるだけでそんなに変わるんですか!?

小林さん:
そうなんですよ。きれいになると誰かに見せたくなるのか明るく前向きになるんです。この方はもうお亡くなりになられたのですが、一時だったかもしれないけど元気な姿を見ることが出来てよかったと思います。

宮下:
理容の力が感じられる、すごく素敵なお話ですね!

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【話題4】現場の想いを教えてください!

宮下:
さいごに介護をしている人たちに向けてメッセージをお願いします。

小林さん:
ご高齢になってくるとカットにお連れすることもなかなか難しくなります。そもそも出張カットのサービス自体を知らない方も多いですが、最近はいろんな事業所・サービスが増えてきているので知って利用していただくことでご本人さんだけでなく、ご家族さんの負担を和らげることができると思います。

宮下:
ご家族さんがしんどいと共倒れになってしまいますもんね。

小林さん:
カットだけじゃなくて話し相手にもなりますのでぜひ検討してみてほしいです。

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おわりに

外出が難しい方のもとへ駆けつけ、顔周りをきれいに整える福祉理容士。利用者さんの心を前向きに、明るくするとても素敵なお仕事です。
心と体には深いつながりがあります。いつまでも明るく楽しい気持ちでいることは、体も元気になる秘訣かもしれません。

いくつになっても前向きに。なかなかそれが難しいときは、まずは身なりを整えるところから始めてみませんか?

最後に、お忙しい中お話を聞かせてくださった、「出張カット スマイル」理容士、小林素美さん。取材にご協力いただき、本当にありがとうございました!

それではまたの記事で会いましょう!

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