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障害者市場を牽引する株式会社LITALICOを徹底解剖!!〜医療・介護系企業分析シリーズ⑧〜

サマリー
現状は障害者就労支援事業・発達障害児向け事業ともにかなり順調。
一方、国の定める報酬制度への依存度が高いので、3年後の報酬改定までにインターネットプラットフォーム事業へある程度軸足を移したい。
障害者関連のB向け・C向けのプラットフォームという大きな絵を描けそうだ。
記事の構成:
1.会社概要
  - 1_a 歴史
  - 1_b 事業内容
  - 1_c 業績推移
2.障害者就労支援事業の分析
  - 2_a 自社分析
  - 2_b 市場分析
  - 2_c 競合と自社ポジションの分析
  - 2_d 今後の戦略 
3.発達障害児向け事業の分析
  - 3_a 自社分析
  - 3_b 市場分析
  - 3_c 競合と自社ポジションの分析
  - 3_d 今後の戦略 
4.簡易財務分析
5.評価
  - 5_a 現状に対する評価
  - 5_b 将来に対する評価
  - 5_c 今後取るべき戦略の提案

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「医療・介護経営を考えるノート」では、医療・介護系上場企業の決算分析を行っています。合わせてご覧下さい!

分析企業の一例
・エムスリー、エス・エム・エス、ツクイ、ソラスト、メドピア、MRT、リタリコ、シルバーライフ、ファンデリー、ブティックス 

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1.会社概要

1_a 歴史

2005年創業、2008年に就労移行支援事業を2011年に児童発達支援・放課後等デイサービス開始。2016年東証マザーズ上場、2017年東証一部に市場変更。施設型のサービスを中心に障害者分野を牽引し、直近ではオンライン事業に力を入れている。

1_b 事業内容

「障害者就労支援事業」、「発達障害児向け事業」、「健常者向け事業」の大きく3つの事業を展開。各事業店舗・オンラインの両方でサービスを提供している。

障害者就労分支援
店舗:LITALICOワークス(就労移行支援・特定相談支援)
オンライン:LITALICO仕事ナビ(施設情報・就職情報サイト)
発達障害児向け
店舗:LITALICOジュニア(児童発達支援・放課後等デイサービス、学習教室)
オンライン:LITALICO発達ナビ(家族向けの発達障害ポータルサイト)
その他:LITALICOライフプランニング(家族向けライフプランニング、保険の代理販売など)
健常者向け
店舗:LITALICOワンダー(プログラミングスクール)
オンライン:Conobie(乳幼児の家族向けウェブメディア)

1_c 業績推移

売上・経常利益ともに直近3期で順調に伸びている。
現在の売上の大半が、LITALICOワークス・LITALICOジュニアといった店舗での事業によるのものである。また、LITALICOワークス・LITALICOジュニア(学習教室を除く)は収入の9割を国からの報酬に依存する公費事業である。オンラインの事業はマネタイズを開始したばかりで今後売上に占める割合が増えていくと見られる。

2018/3期は、
・LITALICOワークス 49.5億
・LITALICOジュニア 47.8億
・その他(LITALICOワンダー+オンライン事業のマネタイズ) 6.4億円
となっている。


2.障害者就労支援事業の分析

2_a 自社分析

・LITALICOワークス
売上・拠点数ともに直近3期で増加している。
拠点あたり売上は横ばいである。

・LITALICO仕事ナビ
情報を掲載する就労継続支援就労移行支援施設と一般企業に対して月額課金という形でマネタイズを行う。月額2.5~5万円ほど。
2019/3期からサービスを開始し、拠点数を順調に伸ばす。

契約拠点数
2018/3 4Q ・・・0拠点
2019/3 1Q  ・・・244拠点
2019/3 2Q  ・・・373拠点

2_b 市場分析

企業には障害者雇用促進法に基づき、社員数の一定割合(法定雇用率)の障害者を雇用することが求められている。法定雇用率は2018年4月1日に2.0%→2.2%へ引き上げ、さらに2021年4月よりも前に2.3%に引き上げられることになっている。
国の方針として、障害者に対してプラスとなる政策が推進されている。

障害者就労支援の利用者数・施設数に関しては、ともに増加し続けている。
現在は、市場の需要に対して十分な供給がなされていない状況で、需要が満たされるまで利用者数・施設数は増加し続けると想定される。

2_c 競合と自社ポジションの分析

・LITALICOワークス(70拠点・売上4957百万円)の競合はウェルビー(63拠点・売上3807百万円)。LITALICOはオンラインシフトを掲げているが、ウェルビーは店舗を増やしていく戦略をとるようだ。
・LITALICOワークスのシェアは拠点ベースで約0.5%、利用者数ベースで約4%となっている。
・LITALICO仕事ナビは、全国1.6万施設のうち373施設が契約。

2_d 今後の戦略 

・LITALICOワークス:ドミナントを意識しながら引き続き出店数を増やす。

・LITALICO仕事ナビ:契約施設を引き続き増やしていく。


3.発達障害児向け事業の分析

3_a 自社分析

・LITALICOジュニア
売上・拠点数ともに直近3期で増加している。
2018年の報酬改定で基本報酬と加算の一部が減額されたため、拠点あたりの売上は減少。

現在の店舗の内訳は、
公費事業(国の制度内で営業)=児童発達支援(55拠点)・放課後等デイサービス(31拠点)
私費事業=学習教室(13拠点)
となっている。

・LITALICO発達ナビ
2017年まではオンラインコミュニティであったが、
児童発達支援・放課後等デイサービスに対して月額課金(1.3~4万円)で、集客・採用・研修などの支援を行うという形でマネタイズを行った。
現在は、順調に契約拠点数を伸ばしている。

契約拠点数
2018/3 2Q ・・・100拠点
2018/3 3Q ・・・362拠点
2018/3 4Q ・・・656拠点
2019/3 1Q  ・・・948拠点
2019/3 2Q  ・・・1,266拠点

・LITALICOライフプランニング
保険を紹介した際に保険会社から代理店手数料を受け取る保険代理店事業というビジネスモデル。
まだ立ち上げ段階だと想定される。

3_b 市場分析

利用者数・施設数ともに増加し続けている。
現在は、市場の需要に対して十分な供給がなされていない状況で、需要が満たされるまで利用者数・施設数は増加し続けると想定される。

0~15歳の人数=1500万人
うち発達障害児率=5%
共働き率=50%
として計算すると、
需要の天井は利用者ベースで35~45万人と考えられる。

3_c 競合と自社ポジションの分析

・LITALICOジュニア(99拠点・売上4781百万円)の競合はウェルビー(19拠点・売上557百万円)。
・LITALICOジュニアのシェアは拠点数ベースでは約1%、人数ベースでは約5%となっている。出店地域を限ればもっと高い。
・LITALICO発達ナビは全拠点の約10%と契約済み。

3_d 今後の戦略 

・LITALICOジュニア:短期的には、今年の報酬改定で収益性が低下してしまったので一旦新規出店を抑え、国からの報酬に依存しない私費事業である学習教室の売上増を目指す。

・LITALICO発達ナビ:契約数を伸ばす。サービスの幅を広げて単価増を狙う。


4.簡易財務分析

競合のウェルビーと医療介護業界でオンライン事業を行うSMSと比較して財務分析を行った。


5.評価

5_a 現状に対する評価

市場の伸びとともに店舗型の事業が成長し。売上の大半を占める。店舗型の事業は、市場の需要に対して供給が追いつくまで伸び続けると考えられる。

一方で、店舗型の事業は国の制度(障害者総合支援法・児童福祉法)によって報酬が規定されており、報酬改定による収益が減少する法的リスクがある。

法的リスクを回避するためにも、オンラインシフトを掲げて、店舗型で生んだキャッシュをオンライン事業へ投資しているのは好印象。オンライン事業をマネタイズして、プラットフォームの構築を急ぎたい。3年後の報酬改定までが一つの目安か。

5_b 将来に対する評価

店舗型の事業は、市場の需要に供給量が追いつき次第横ばいになると想定。5~10年ほどで横ばいになるのではないか。

オンライン事業は、障害者施設のWEB対応・IT化の市場はまだまだ未開拓で、成長に余地が大きい。競合のウェルビーに先んじてオンラインシフトの戦略をとっているので、このまま投資を加速させてプラットフォーマーの立場を確保したい。

5_c 今後取るべき戦略の提案

オンライン事業に積極投資を行い、C向け・B向けのプラットフォームをとるという大きな絵を描ける。

C向けでは、障害者とその家族の生活全般(コミュニティ・施設検索・社会進出支援・ライフプラン作成・金融等)をカバーするプラットフォーム。

B向けでは、障害者施設に特化したVertical SaaS。就労継続支援・就労移行支援施設・児童発達支援・放課後等デイサービスの集客・採用・研修・教材・業務改善をサポートするSaaS。(エス・エム・エスのカイポケの障害者施設バージョンというイメージ)

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