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金魚を飼っていた

昔というには最近すぎる話で、一年ほど前の話だ。

私は金魚を飼っていた。スマホの中で。
最近のアプリは本当に多様でウーパールーパーを育てたり(そういや生きてるウーパールーパーがUFOキャッチャーで取れる時代があったがあれは一体どういう世界観だったんだ?)、アロワナを育てたり、金魚を育てたり、そういうことができる。

私はスマホの中で金魚を育てて、彼氏はアロワナを育てていた。金魚は1日に何回かアプリを開いてタップするとエサが現れ満腹になり、水槽を掃除するボタンをぽちぽちと押すだけで綺麗な水の中でスイスイと元気に泳いでいた。数日忘れたところで死ぬこともなく、気が向いた時に私は金魚のことを可愛がっていた。

彼氏はというとアロワナを育てていたのだが、彼氏のアロワナ育成アプリの方がちと作業量が多く、エサのカエルを入手する工程があったりした。そして彼はアロワナにコジマと名付けて可愛がっていた。(コジマという名前は私たちが当時ワンナウツという野球漫画のアニメにハマっておりその中のキャラクターの名前から頂戴した。)

ある日、コジマが死んだ。彼が餌やりを怠ったからだ。
しかしスマホの画面にコジマの死体が映し出されたりするわけじゃない。ただ淡々とアプリ内のお知らせの如く「アロワナが死んでしまいました。」と出てくる。そしてその下には「復活させますか?(あと3回)」と書かれていた。なるほど、仏の顔も3度までですか!3回までなら死んでも生き返るのか!と大喜びの彼は、ドラゴンボールの神龍の如くコジマを復活させた。

しかし、一週間ほど経ったある日またコジマは死んでしまいました。するとまたあの文字が「復活させますか?(あと3回)」
いやあと2回じゃないのか!?この前の蘇生は復活カウントされてないのか!?
もう一度復活させては餌やりを怠たり死んでしまい、もう一度復活させては死んでしまいを繰り返したが、やはり「復活させますか?(あと3回)」の文字は変わらずずっと3回のままだった。

彼は何度も復活できることを悟り、4回復活させたくらいでそのアロワナのアプリを消した。(ちなみにクリリンは作中4回ドラゴンボールで復活している。)

ほどなくして私の金魚への関心も薄れアプリを消した。

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