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探求学習のケーススタディ 参政権と選挙

探求というのは、学生が関心(知っておくべき)や興味(知りたい)を持って、自ら主体的にデータを集めて、考えて、判断して、何かを定めて、行動(授業で発表、SNSで発表、起業、会議主催、国連で仕事をする、議員に立候補)することだと思います。

以前に、文献史学について探求法を書きました。今回は具体的な事例に則して、どういう考え方の道筋で探求するのかを書きます。

例えば、日本では18歳になったら選挙権があるので、「選挙についてもっと知りたい」と思ったら、歴史の中から似た事例を探してみる。
「アテネの役職も神聖ローマ帝国の皇帝も選挙だったなあ」と思ったら、調べてみる。
アメリカ合衆国では黒人の選挙権を制限するようなこともあります。それも調べてみる。

自分がアテネの市民だったら、だれ/どんなひとに選挙権があるべきだと思いますか?

授業としての探求の場合は、一人かグループで、5-10分かけて考えてみましょう。思いついたことがあったら、スクロールしてください。






みんなに無制限で選挙権を与えるべきだ、と思った人もいると思います。
1歳の人はどうですか?たぶん自分で判断できないと思います。
自分で政治について判断できない人に選挙権を与えるべきではないと考える人もいると思います。
①そうするとまず年齢で区別する必要があります。
21世紀の日本やアメリカ合衆国、フランスでは年齢制限をしています。

②そして、政治について判断できないのは認知症がかなり進んだ人、意識のない人、そうした病気になっている人もあてはまると考えるかもしれません。
21世紀の日本では、こうした人に制限はありません。なぜかを考えてください。そして、それが適切かを考えましょう。
③また、政治に興味も関心もなくて、国会と行政の役割も知らない人や、首相が立法府の長と思っている人も、政治について判断できる人とは言えないと考える人もいるかもしれません。
21世紀の日本では、こうした人に制限はありません。なぜかを考えましょう。調べましょう。そして、それが適切かを考えてみましょう。

このことについて考えてみましょう。
考えたらスクロールしてください。






①高齢になると選挙権を持てないと決めている国もあります。調べてみましょう。
③主権者教育というものがあります。調べてみましょう。
試験を課すのも一つの手だと思います。
国会議員と大臣には最低限の知識は持っていてほしいですもんね。

これまでに選挙権を与えるべきでない人について考えてきました。
さらに探求しましょう。
④日本に長く暮らしている外国人に選挙権を与えるべきでしょうか?

⑤あなたがアテネの市民だとして、かつてペルシア帝国のスパイになっていたことがわかっている人、僭主になった人については選挙権を与えるべきだと思いますか?ヒトラーやスターリン、クロムウェルのような人だったら?殺人犯なら?
21世紀の日本では⑤の人のうち、禁錮刑、懲役刑、死刑の対象になった人には選挙権と被選挙権はありません。なぜでしょうか。理由とそれが適切かを考えましょう。




④市区町村のような地方選挙になら、選挙権を与えている国もあります。
けど、「ロシア人を守るためだと言って、プーチンがジョージア、ウクライナに攻撃命令を出した歴史を考えると、ロシア移民だって怖いのに、選挙権なんてもっと怖いよ」
「オウム真理教の信者がたくさん住民票を移して、その自治体の政治がオウム真理教にとって不利にならないように、影響力を行使しようとしたこともあったね。住民票を移せば、そこで投票できるからさあ」
こう考えて怖いから反対という人もいるでしょうね。
賛成派の人はどう説得しますか?
⑤更生の可能性があるなら、更生した人には選挙権を与えるべきだという考えもあります。だから、日本では刑を終えた人は選挙権を回復します。

19世紀から20世紀中ごろのアメリカ合衆国では黒人に選挙権を行使させないために、ある州では州法(条例)で自分の名前を投票所で書けない人には投票させないということが決まっていました。黒人はお金がなくて学校に行っていないので識字率が低いんです。文字を書ける人の割合が少ないんです。お金がないので、車も持っていない人は多いんです。歩いていけないほどに投票所が遠くて、郵便投票も認められていなければ、黒人の投票率は上がりませんね。そうすると白人に投票された立候補者(たぶん、たいていは白人)が政治家になって、また白人に好都合な制度/州法を作る可能性が高いと思います。
なぜ黒人の投票権を制限したと思いますか?理由とそれが適切かを考えましょう。
21世紀のアメリカ合衆国ではこうしたことは非難される傾向があります。なぜでしょうか。理由とそれが適切かを考えましょう。

21世紀の日本では女性に参政権があります。
戦前はありませんでした。
なぜでしょうか。理由とそれが適切かを考えましょう。



スクロールしてください




男性だけに認められる権利を探せば理由が見つかるかもしれません。考えるときの方法として、似たものを思い出すというものがあります。
例えば、軍隊の徴兵はたいていが男性だけです。イスラエルなどの例外はありますけどね。
軍隊もアテネの参政権も、戦前の日本の参政権も男性だけ。
なぜでしょう。
戦うのは男性だけ。男性は命をかけてポリスを守っている、国を守っているから政治に口を出す権利も政治を行う権利もあるということかもしれません。アテネでも戦前の日本でも女性は前線で戦うことはありませんでした。ここにも共通点が見つかります。
そうするともう戦争をしないという国是の国なら、女性に参政権があってもおかしくないということになります。日本も憲法9条は、女性参政権と近い時期に公布されます。そう考えるとどうも憲法9条と女性参政権は日本ではセットで存在しているように思えてきます。
他の国についても10か国くらい、アフリカやヨーロッパ、西アジア、南アジア、東南アジア、オセアニア、太平洋、中南米などについてバランスよく、徴兵と女性参政権について調べてみましょう。法則が見つかるかもしれませんね。

それでは今度は参政権を与えるべき人について考えてみましょう。

こういう感じで探求していくのが一つの方法だと思います。
いつ、なぜ、だれがだれに、どのように、どこで、なにをすると、いつ、だれに、どのように、どこで、なにに関してプラス、マイナスの影響があるのか、どのくらいあるのかを考えたりしていくといいと思います。





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