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第4話 都市伝説『官報』(BJ・お題「人形」)

行き倒れた人って、身元不明死体として、官報というものにその詳細が乗るんですよね。

これは、ある刑事さんの話です。
行方不明者を調べることが、捜査の都合上あって
度々官報を見ることがありました。
官報には死体写真こそ載ってはいないものの、
身につけていたものについては、すべて写真が出ているんです。
その日は自宅からインターネットでテレワーク残業をしていたんですが
妙に見覚えのあるセーターが出てきたんです。

「おい、これ」
刑事さんは、妻にその画像を見せました。「俺が去年着ていたセーターにそっくりだな」
すると妻が、「あれ、同じじゃない?」
彼の妻は、よくメルカリで、服を売っていました。
刑事さんは、その時、しめた、と思ったそうです。
なぜなら、もしそのセーターが、妻がメルカリで売ったものであれば
身元不明の死体の身元を明かす手がかりになるからです。

刑事さんは、セーターを買った相手を調べました。
するとそれが、中年の男性だということが分かったのですが、
身元不明の死体とは、何の関係もないということでした。
彼はよくメルカリで服を買うということで、セーターは身元不明の死体とたまたま同じだったということで納得しました。

刑事さんは残念に思いつつ、引き返そうとしたのですが。
そのとき、妙にその男性のことが気になったそうです。
なぜならその家には、粘土がたくさん積まれていて、
人の腕や足かと思われるような白いものが玄関先にも置かれていたからです。
それは人形の部品で、聞くと、彼は人形作家だとういのです。

その日家に帰ってから刑事さんは妻に、その日見たことを話しました。
「メルカリで服を買うのも、人形に着せるためだったんだな」
「ふーん」なんだか妻は納得しかねた様子でした
「人形に着せるには、地味な服だったけれどねえ」

それで刑事さんは何となく気になって、人形作家のことを調べたそうです。
するとその人形作家は、普段は納棺士としてむしろ有名な方なのだそうです。
御遺体にとても綺麗な死化粧を施し、やすらかな表情にしてくれるとかで評判だと。

まさか、死体と人形を取り替えていたりしないだろうな、なんて想像しちゃいますよね。
たしかに、人形のほうが死体としてきちんと埋葬されれば、遺体のほうは探されることがありませんから
永遠に判らないでしょうけれどね。
まさかね。お骨まで再現できる人形なんてありませんよね。

刑事さんはメルカリの副収入のことを秘密にしていたこともあり、
そのことは上には報告せず、そのままにしたそうです。

ただ、その後、興味を持った妻が、官報で青木ヶ原の樹海の身元不明死体を調べてみたところ
メルカリで売られていた服が次々と見つかったそうです。

官報の身元不明人情報って、今ではインターネットでも見られるんですよ。
皆さんも一度ぜひ、覗いてみてはいかがでしょう?

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