大学院への進学を考えている人へ

大学院への進学を考えている人へ

SNSにて大学院への相談を受けることがあります。

医療関係者の大学院への進学は少数派であり、情報不足なんですよね。
そして、SNSである質問をしてみました。

意外に興味がある人が多くないですか!?
内訳を確認したいですよね。

2905人の閲覧で295人の回答になります。
つまり、295人中176人が興味を持っています。
医学関係者は非常に勉強熱心で努力家です。
頑張ろうとしている人たちへ何か貢献できればと思い、
私自身の大学院の体験談を含めて、以下に記載します。


大学院とは?

 大学卒業後の進路の一つである大学院は、大学や臨床で学んだ知識や理論を応用して、さらに踏み込んだ学術的な研究を行うところです。大学院というと、大学教員や研究者を目指すコースというイメージがありますが、医学系の場合は臨床の疑問を論理的に解決する方法や手段を学び、実際に研究して科学的に証明するところでもあります。

大学院には2つの過程があります。

<修士過程>
修士課程設置の目的は大きく2つあります。
1つは広い視野からより詳しく、深みのある知識を授けること。もう1つは専攻する分野の研究能力を磨き、専門性が求められる職業で力を発揮する人材を育成することです。
標準の修業年限は2年で、修了すると「修士」の学位を取得できます。
<博士過程>
博士課程設置の目的も主に2つあります。
1つは専攻する分野において自立した研究者として研究活動を行うこと。もう1つは高度な専門業務に就くために必要とされる修士以上に卓越した研究能力と、その基礎を築く学識を身に付けることです。
標準の修業年限は3年で、修了すると「博士」の学位が授与されます。


大学院へ進学できる条件は?

大学卒業に伴い「学士」を習得します。学士の次のステップは、修士や博士となるわけですが、専門学校の修了者は大学院に進学できるのでしょうか?

専門学校には「専門士」と「高度専門士」の2つがあります。

専門士は2〜3年制で、修了すると大学へ編入することが可能です。
高度専門士は4年制で、修了すると大学院へ進学することが可能です。

尚、 文部科学大臣が認めた指定の学校は以下のとおりです。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/07111316/002.htm


大学院のメリットとデメリットとは?

以下に、主なメリットとデメリットをまとめてみました。

<メリット>
・努力している人たちの環境が自己啓発に繋がる
・学会発表などでプレゼン能力が身につく
・国際論文を読む、書く、話す能力が身につく
・執筆能力が身につく
・問題や課題を調べて解決する能力が身につく
・学位が取得できる
・統計学的には初任給が高い
・教員や研究関係の仕事など、就職の選択肢が増える
<デメリット>
・医療職では給料への影響は乏しい
・学費がかかる
・余暇の時間が少ない
・社会人デビューが遅れる

大学院は目的を明確にしてから進学することが重要です。
皆さんの大学院進学の目的は何でしょうか?

具体的に、デメリットを考えると...

・学費は修士で100万〜300万、博士で250万〜600万。
・病院の給料では国立病院機構等の極一部でしか反映されない。
・2年間、仕事をしないと年収約400万×2年分の収入減。
・講義を受けながら、余暇の時間は研究と仕事。非常に忙しい。

比較的にデメリットは共通しますが、メリットは人それぞれです。
メリットとデメリットを天秤にかけて進学することをオススメします。


大学院進学のタイミングは?

大学院進学のタイミングは非常に悩ましいです

それは、個人因子が大きく影響するためです。
個人因子とは、大学院の目的や年齢、金銭面、家庭、修了後の展望などがあると思います。そのため、教員や大学院に進学した人に相談するのが一番良いでしょう。

ちなみに、多くの方は臨床に出てからが良いと考えているようです。

さて、この進学のタイミングに関しては、5名の先生のご意見も掲載致します。非常に参考になると思います。

社会人でも大学院へ通学できるの?

仕事をしながら、大学院を両立できるかはとても不安かと思います。

「授業に出席できる?」「研究はできる?」「仕事は疎かにならない?」

講義は基本的に日中に行うものですが、社会人の場合は夜間にも実施する学校を選択することが多いです。また大学院との距離や通学時間も重要です。夜間の授業は概ね18時から22時で、2コマです。つまり遅くても18時までに大学院へ行くことの出来るようにしなければなりません。そのような意味では行きたい大学院の大学病院に就職するのは1つの手段かもしれません。特に必修科目で集中講義と呼ばれる、1週間に渡り13時から17時まで講義を行う場合もあります。このような場合を想定して、大学院へ出願する前に職場と相談しておくと良いでしょう。また近年では、インターネットを活用した講義を行う学校も増えてきていますので、行きたい大学院の講義形式を確認すると進学できる大学院の幅が広がります。

日中は仕事、夜間は講義。では、いつ研究するのか?
研究時間は余暇の時間です。つまり講義がない日、早朝や深夜、休日です。
非常に計画的なスケジュールを立てなければ、研究と仕事を両立することは難しいです。特に研究できる場所が決まっている場合は大変です。大学院でしか研究データを取れない場合では、大学院にお泊まりと言った日もあると思います。こういう意味では体力勝負です。探究心が行動の活力になってくるでしょう。

こんな状況で仕事はできるか?と感じると思います。確かに身体的には負担がかかります。人それぞれですが、朝に仕事を済ませる方が多い印象です。ただ残業する日は確実にあります。「講義や研究よりも仕事が優先」の姿勢が基本です。大学院の先生方は遅刻や早退、欠席など理解している傾向にあります。一方、職場のスタッフには迷惑がかからない様にしなければいけません。しっかりと職場と相談してから進学しなければ、大学院を修了できないとも思っても過言ではありません。職場のスタッフに助けられながら、大学院へ通学できていることを忘れてはいけません。

少し不安を助長する内容でもありましたが、それなりの覚悟は必要です。
大学院の学位は「努力できる人」の称号でもあると個人的に感じています。


私自身の体験談

私は大学時代から大学院へ進学したいと考えていました。
理由は、教員や研究者として活動したいためです。

大学時代、そのことを大学の教員に相談してみたところ、

「やりたい研究テーマが明白でないこと」
「臨床をしながら大学院へ進学した方がいいとこ取りであること」

をご教示頂き、「大学院進学への理解がある病院」を紹介頂きました。
その為、約4割は院卒者の職場で研究や臨床熱心な病院に入職しました。

実際に入職すると臨床が忙しく、やりたい研究も見出せず、1年目に大学院の進学はできませんでした。

ただ「体表解剖」の勉強会が面白く、解剖学に興味を持ち始めていました。体表解剖の資料は肉眼解剖の知見を参考にしており、骨格筋の構造は複雑で、どうなってるの?と疑問を持ち始めていました。

そんな時、ある理学療法士の教授から「肉眼解剖の骨格筋プロジェクト」を行う大学院があることを聞きます。とても興味を持っていたので、実際に在学している先生にも具体的な内容を教えて頂き、シンプルにやってみたい!と思い、即解剖学教室の教授と面談することに!!
この時、入職2年目の9月頃です。

解剖学教室の教授とアポを取り日程を調整し、理学療法士の教授同行の下、
どんな目的で入学し、どんな研究をしていくかを相談しました。

肉眼解剖の経験がない私は、具体的な研究計画書を具体的に説明することはできませんでしたが、、、
「研究に必要なノウハウを学び、独立した研究者を目指しましょう。」
「骨格筋プロジェクトを教室一丸となって調査して行きましょう。」

と恐らく教授は「私のやる気」を買って頂き、出願許可を頂きました。

入試は英語と面接の2つでした。
英語は論文読解と英文執筆です。
とにかく、ひたすら英語を勉強しました!!!!
ただ大学院入試だけでなく、理学療法分野も怠らないように
理学療法系の学会発表も並行して行うように心掛けていました。

試験は終了し、2月頃に結果発表!
無事合格し、4月より大学院時代が始まります。

大学院と職場までの距離は自転車で20分、自宅までの距離は自転車で40分です。私の場合は終電などを気にせず家に帰れる環境でした。

講義は18時から週3~5回前後であります。大学院時代の日課は仕事が終わり次第、猛ダッシュで講義を受け、21時頃に講義は終了し研究室に23~26時頃まで行い帰宅するルーティンです。また毎週、教室会議があり肉眼解剖の英文抄読会と教授との研究の打ち合わせを行います。休日は大学院へ研究をしに行ったり、自宅でデータをまとめたり、英文抄読会の準備をしたりと。研究のノウハウを学べたのは勿論、強制的に英論文を読む環境が自身の英論文の読解能力を向上に繋がり、感謝しかないです。
また余談ですが、講義の内容が面白く整形外科や脳神経外科の先生に質問したり、医学の研究法が学べたり。中国や韓国などからの留学生や、薬剤師や臨床検査技師など他職種との交流もあり楽しかったです!

私の教室では学位を取る目的よりも、しっかりと専門的な研究者を育成することを目的としていたため、解剖学会のポスター発表も行いました。分かりやすいプレゼン資料を作成する能力や、研究の意義や何が明らかになったのかを相手に簡潔に説明し伝える能力も身に付けたと思っています。

修士課程2年次では、修士論文を執筆します。修士論文の執筆にあたり、「日本語になっていない!」とご教示頂いたことが印象に残っています。
分かりやすい文章の構成や、正確な文意を伝えるための執筆方法を学ばせて頂きました。出来ると思いがちですが、意外と日本語が書けません。厳しい教授のチェックは執筆能力を向上できました。

最後に学位審査です。研究結果を約15分でプレゼンし審査官とディスカッションをします。「研究の結果が何のためになるのか?」「臨床に応用するとしたら?」など様々な質問を返答する能力、特に否定的な見解に対して、論理的に対応する能力が問われます。一方、頂いた意見にしっかりと耳を傾ける姿勢も問われているかも知れません。

尚、博士課程では論文もプレゼンテーションも英語で行うので、英語のライティングとスピーキングの能力も加えて身につくと思います。

この学位審査の結果、大学院修了の可否が決定されます。
私も無事修了する事が出来ました。
社会人枠は途中で退学する方も少なくありません。
大学院の目的を明確にする事がやはり重要と思います。

以上、私の大学院修士課程時代の体験談です。

修士課程を修了し、今後の私の展望は、

「教員」や「医学書の執筆」に興味があります。

大学院で身に付けた能力と専門性を最大限に活かして
自身をブランディングしたいと思っています。
それで始めたのがSNSの活動です。
SNSの活動は趣味の医学を表現出来る場で、とても楽しいです!
今後は自身をよりブラッシュアップして行きたいと思っています。

長文になってしまいましたが、皆さんの今後の参考になればと思い執筆しました。何かご協力が出来る事があれば、お声を掛けて頂けたらと思います。

この度はご閲覧ありがとうございました。



執筆者プロフィール

私は「理学療法士」「解剖学者」「医学系SNS研究家」の3つのジャンルで活動をしております。理学療法士として働きながら、医学研究科(解剖学・生体構造科学講座)の大学院へ進学し医学修士を取得しました。修了後は解剖学を中心とした情報発信をSNSで行い、更なるステップアップを試みているところです。「instagram」「twitter」へも是非お越しください。

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