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これでもう間違えない!! 「飛行機はなぜ飛ぶのか」 ~翼理論~

皆さん,飛行機がなぜ飛べるか説明できますか?
揚力ってやつでしょ?
なぜ翼に揚力が発生するのでしょう?
翼に速度差(圧力差)ができるからでしょ?
ではなぜ速度差が発生するのでしょう?
「・・・」
皆さんここで止まってしまう方が非常に多いのではないでしょうか.

この説明で十分納得できた方もいらっしゃるかと思いますが,
なぜ翼の上面と下面に速度差が生まれるのか.
まだ納得できていない方がいるとすれば引っ掛かっているのはここではないかなと思います.実際,速度差の発生原理が説明されていない(もしくは理解しておらず説明できていない)がために,飛行機が飛ぶ仕組みを間違えて解説している専門記事を多く目にします.中にはまだ原理はまだ解明されていないかのような説明をしている記事も見た記憶があります.もう翼理論は100年以上前に解明されているにも関わらずです.

この記事では,翼理論を交えつつも感覚的に理解できるように飛行機が飛ぶ原理についてご説明します.是非興味のある方はご一読ください.

キーワードは,

・マグナス効果
・翼形状
・循環

です.
それぞれ順に説明していきます.


・マグナス効果

サッカーや野球などの球技で,ボールに回転をかけることで飛んでいくボールの軌道が曲がっていくのを見たことがありませんか?
あれはマグナス効果によるものです.

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回転している物体がある方向に進んでいるとき,ボールから見て周りの空気は回転方向と同じ方向であれば速く,逆方向であれば遅くなります.その速度差に応じて圧力差ができるので,物体は進行方向に垂直な方向(圧力大⇨圧力小の方向)に力を受けます.

この進行方向に垂直な力は,まさしく"揚力"そのものです.

先程のキーワードと,この説明を聞いて少しでもピンときた方は勘が鋭いかもしれません.


・翼形状

次は飛行機の翼の形状についてです.
翼は断面を見るとこんな形をしています.

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ここで、非常によくある間違いを説明します.それは、翼がこのように上面が膨らんでいるために、先端から後端までの距離が上面は長く、下面は短くなることで、上面の流れの速度が上がって圧力差で揚力が発生するというものです.

この説明だと、上面と下面の流れが後端で同時に合流することを前提としている点に間違いがあります.また、これが正しい場合背面飛行では落下してしまうはずなので、その観点でも間違いだと分かります.さらに、翼が平らだと成り立たないことになりますが、紙飛行機はきちんと揚力を受けます.

話を戻しますが、この翼形状で重要なのは"後端が鋭利である"ことです.

後端が鋭利だと、流れに対して翼がある角度を持った時、後端で流れが剥がれ、渦を形成します
(詳細を知りたい人は、"クッタの条件"でググってみて下さい)


・循環

最後に,循環のお話です.
その前に渦についてもう少しだけ説明しておく必要があります.
上の動画では,よく見ると翼後端から反時計周りに渦が発生しているのがわかります.(この渦を出発渦などと呼びます)
この反時計周りの渦は実は翼からずーっとつながっています.
エネルギーを持っている渦はなかなか消えないのです.

この渦が翼にどのようにつながっているかというと...?

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こーんな感じで翼後端から出た渦はそのまま翼までつながっているのです.
(絵が下手ですみません・・・)

では,これを改めて真横から見ると

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翼の後端から出た渦と反対周り(この絵では時計回り)の流れが翼に対して形成されるのです.

この翼に形成された点線こそが"循環"そのものです.
循環は空気が実際に流れているというよりは,こういう強さの力が働いていると考えてください.

感覚的に循環がみえる動画がこちらです.

翼を傾けると翼の後端には反時計回りの渦ができ,翼には循環が生じているせいで,上面は流れが速く,下面では流れが遅くなっているのがわかるかと思います.


ここまでくれば皆さん既におわかりですね?
そうです!


翼に循環が生じる

マグナス効果で翼は押し上げる力(すなわち揚力)を受ける

これが飛行機が飛ぶ仕組みです.
揚力の大きさは循環の強さで決まるというクッタ・ジューコフスキーの定理というものがあります.これはブラジウスの力から導かれた定理です.)

ちなみに,循環さえあれば良いので,回転する円筒をつけた模型飛行機もあります.面白いですね.


でもなんでそんなもので機体だけで100トン以上ある飛行機が飛べるような力が生まれるのか?

これの答えは,ジェットエンジンにあります.
ジェットエンジンが生み出す推進エネルギーは非常に大きいものです.
(ジェットエンジンの解説もしたいですが,それはまた別の機会に)
このエネルギーを翼の角度を変えて渦に変換することで強い循環が生まれ,揚力も大きくなるわけです.浮いてしまえばこっちのもの.あとは翼の角度を戻してジェットエンジンの推進力で進むだけです.


・まとめ


この記事では3つのキーワード,"マグナス効果","翼形状","循環"についてそれぞれ説明しました.
まとめると,

翼形状(後端が鋭利であること)のため,翼がある角度になったときに後端に渦(出発渦)が発生する.この渦は翼までつながっていて,翼に反対周りの循環を作り出す.循環があるためマグナス効果により進行方向に対して垂直方向の力(揚力)を受けて飛行機は飛ぶ.

以上が,もうこれで間違えない!!飛行機が飛ぶ理論の解説でした.

一人でも多くの方がこれを読んで感覚的に飛行機が飛ぶ仕組みを理解できると幸いです.

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