「朝日新聞政治部」
話題のノンフィクション「朝日新聞政治部」(鮫島浩著、講談社)をやっと読み終えました。
著者の鮫島さんは私と同い年。朝日の政治部や調査報道専門部署の特別報道部などで活躍し、福島原発事故の「手抜き除染」をスクープして新聞協会賞を受賞するなどの実績をあげた敏腕記者です。
ところが、それ以上の大スクープとなるはずだった「吉田調書報道」が「間違った記事」だと判断され、デスクを解任されてしまう。フリーのジャーナリストとなった今、その経緯を当事者の立場で振り返りつつ、大新聞の中枢で起きていたことを告発したのが本書です。
8年前の2014年9月11日、「池上コラム問題」「従軍慰安婦虚偽証言」「吉田調書報道」。この不祥事3点セットを受けて当時の朝日新聞社社長が記者会見を開いた時には、私も現場で取材をしました。その時、腑に落ちなかったのは、朝日の経営者側が、この3つの中でも殊更に「吉田調書報道」を問題視しているように感じられたということでした。本書を読み、ようやく合点がいったのですが、そこにも経営者側の狙いがあったのです。
ノンフィクションとして非常に面白く、著者の卓越した取材力がひしひしと伝わって来ます。そして登場人物のほとんどが実名で記されています。かといって、特定の個人を陥れるという意図は感じられない。かつての仕事仲間の一人ひとりを愛憎の渦の中で綴っていったのでしょう。だからこそ圧倒的な説得力があります。
単なる暴露本ではない。これからの新聞業界を憂う方には、一読をお勧めしたいと思います。
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