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黛冬優子とは何か -前編- 凡人が天才と呼ばれるまで

こんにちは。カイリキー王といいます。
皆さんは黛冬優子はお好きでしょうか。
私は現在は熱烈な霧子Pとして活動していますが、シャニマスにハマったきっかけは冬優子でしたし、今でもとても好きなアイドルです。

非常に人気の高いアイドルですが、
細かい機微が理解できると魅力はさらに数倍に膨れ上がります。
ということで今回は「冬優子の沼」に、ひいては「シャニマスの沼」に嵌っていく人が一人でも増えることを願って考察していきます。

考察の前にひとつ考えてほしいことがあります。

天才と呼ばれるまで努力できる凡人は、元々天才なのでしょうか。

「努力できるのも才能」
なんて言葉も耳にしますが、
本当にそうなのでしょうか?

そんなことも考えながら一緒に考察してもらえたらより楽しめると思います。

長くなったので、
straylight.run()を中心に解説する-前編-
【トワコレ冬優子】を中心に解説する-後編-に分けて考察します。

まず最初に、冬優子のコミュを読み解くにあたって念願においてほしいことがあります。
それは…
冬優子の言葉≠本音 ということです。

特に初期に近いほど、冬優子は自分の本音と向き合うのが苦手だったために、本音を話せていません

少し長くなりますが、以下の6章に分けて考察していきます。
①目指してるアイドル
②「冬優子の理想」と「あさひ」
③二人の類似性
④凡人と天才
⑤選んだ生き方
⑥涙の意味


あくまで一つの考察だと思って楽しんでもらい、この考察をヒントに、
「各々の黛冬優子」をより深く理解していってもらえると嬉しく思います。


①目指してるアイドル

そもそも冬優子はなぜアイドルとして生きていくのか、
どんなアイドルになりたいのか、その理由を見ていきましょう。

冬優子の目指すアイドル像ははじめから一貫していますが、
同時に何度も変化していっている矛盾を抱えています。

どういうことか整理して見ていきましょう。
以下は冬優子をアイドルにスカウトしたときの会話です。

【WING】冬優子との出会い

ここで注目したいのは、
出会いの時点から「かっこよくて」が入っている点です。
実は冬優子のコミュの中では「かっこいいアイドル」に対しての言及は至る所であります。

Sssr【二律背反sweet】
イベント【if(!Straylight)】

つまり、「可愛くてかっこよくてキラキラした」存在
そんな自分が憧れる存在になるためにアイドルになりたい。
憧れへの渇望が沸々と伝わってきますね


しかし、straylight.run()では「なりたいアイドル」を聞かれて「可愛いアイドル」と口にしています。
さらに、あさひに「可愛いアイドル」を「面白いもの」と表現されて怒ります
このことから、
冬優子の自己認識ではこの時点でのなりたいアイドルは「可愛いアイドル」であり、
冬優子は自身の本心に気づいていなかったということが伺えます。

イベント【straylight.run()】
straylight.run()にて

他にも、WINGの別のコミュで冬優子から、
どんなアイドルになれると思うか質問されます。返事は選択制です。

あまり注目されてないですが、重要なシーンです

選択肢の中で「冬優子が望むアイドルになろう」を選ぶと以下の話が展開されます。

選択肢「冬優子が望むアイドルになろう」
なりたい姿は「ふゆ」じゃない
じゃあどんな姿?

ふゆのなりたい姿とはどういった姿でしょうか?
求められる姿
「ふゆ=かわいさ」だというのは自明ですが、
なりたい姿「冬優子=かっこよさ」といった単純な対立構造ではなさそうです。
結論を言うと、
「可愛くて、かっこいい」が両立した姿が冬優子の目指すアイドルです。

同じくWINGにて「なりたいアイドル」について次のような話があります。

ここでは[「これがふゆ」って胸を張れるアイドル]になりたいと口にしますが、
それがどういったアイドルかは明言をされません。
きっとWING時点では冬優子にもわかっていないのです。
ただ、もっと頑張りたいという言葉を冬優子は繰り返します。

このように冬優子の目指すアイドル像は漠然としたものから幾度となく変化していき、
だんだんと具体的な、
はじまりの目標である「可愛くて、かっこいい」に収束していき、
その後さらに新しい目標に向かって成長をしていきます

そして、何よりもエモいのが、
冬優子の目指すアイドル像は、
最大のライバル・芹沢あさひによって導きだされていくという点です。


②「冬優子の理想」と「あさひ」

そこでStraylightの始まりが描かれている、【straylight.run()】を見ていきましょう。

straylight.run()は一見すると、冬優子とあさひという真逆な個性の対立構造で展開されてるように見えます。
しかし、深く読み込んでいくと実は違うことに気づけます。

結論から言うと、
冬優子とあさひは真逆な関係ではなく、
冬優子が昔憧れた生き方をしているのが「あさひ」なのです。

正確にいうと、straylight.run()は、
冬優子のかつて諦めた理想の生き方を「あさひ」がしていて、
冬優子はあさひを通して、過去の理想と改めて向き合い、乗り越えようとする話です。


どういうことか考察していきます。
まず、メタ的な話になりますが、straylight.run()のシナリオライターは冬優子のコミュのライターと同一人物です。
もっと言えば、Straylightのコンセプトを作った人は冬優子のコミュのライターで、あさひと愛衣のコミュは別のライターとなっています。

それもあってかstraylight.run()は冬優子を主人公として話が展開されます
もちろんあさひと愛衣にもスポットは当たっていますが。

冬優子はstraylight.run()の中で多くの挫折を経験します。
その姿はあさひとの対比で表現されます。例えば以下はその一幕です。

このテーマは後にstraylight.run()において、
ひいては冬優子やStraylightにとって非常に重要な話となります。

ちゃんと仕事をこなせば認めてもらえるというあさひと、
みんなから愛されないと認めてもらえないという冬優子。

同様に、straylight.run()では、
そのままの自分を好きになってもらえばいいというあさひと、
愛されるための努力が必要だという冬優子が描かれます。

ここは二つの意味をもっているシーンで、
一つ目は、あさひ今の冬優子の意見の対比。
二つ目は、あさひ過去の冬優子の思想の類似です。

冬優子GRADで以下のセリフがあります。

「ふゆが、ふゆのままじゃ愛されないのは悲しいけど」
このセリフから
冬優子はそのままの自分を愛されたいと思っていることがわかります。

上の会話でもPssr【Starring F】でも言及されていますが、「ふゆ」は愛されるために冬優子が後天的に作り上げたものです。
そのままの自分を愛されたいが、そのままの自分では愛されない
その矛盾を抱えて冬優子は生きています。
ただ、愛されようとして愛されるのも簡単ではありません。

我慢をしてまで愛される努力を続けた冬優子よりも、
ただまっすぐに生きているあさひが評価されます。

このような挫折がどうやら冬優子にとっては珍しい事ではない様子なのが切ないです。

さらにこのコミュの中では以下の重要なやりとりがあります。

冬優子の沈黙の意味は…

「みんなから好かれたいでしょう?」
という冬優子に、あさひは返します。
「それは相手の自由でいいと思うっす。嫌いならそれはそれでいい」
「好かれなきゃって思って振る舞うのは、面倒っす」
「冬優子ちゃんは違うんすか?」

この後、なぜ冬優子は黙ったのだと思いますか?

きっと、それは図星だったからです。

その根拠は「トワコレ」で確認できます。


③二人の類似性

straylight.run()にてあさひから見た冬優子が語られます。

あさひは、冬優子はアイドルに一生懸命で楽しくなさそうに見えると口にします。
ここでも「パフォーマンス」という言葉が出てるのも注目したい点ですね。

実はここであさひが口にしている「楽しさ」は冬優子にとっても重要なワードです。
下の会話は冬優子の「WING」の抜粋です。

アイドルを辞めようとした冬優子を再び立ち戻らさせたのは「楽しさ」でした。
もう少し深堀して考察してみましょう。
会話内の次のセリフに注目してください。

「でも、アイドルを始めてから…他人に評価されることより、仕事をするのが楽しかった」

よく読むと「楽しさ」そのものが大切というよりも、
「他人からの評価」と「仕事の楽しさ」の対比が重要に見えます。

さらに読み取って行くと、このシーンは、
「ふゆ」と「冬優子」の対比とも
「客観」と「主観」の対比とも
冬優子の人生にとっての「脇役」から「主役」への転換とも取れます。

話を戻しますとこのように、
冬優子とあさひは一見すると意見は対立しているものの、
実は価値観は非常に類似していることがわかります。

では、なぜ意見の対立が起こっていたのでしょうか。

結論を言うと、冬優子が自身の本音と向き合えていないために起こっています。


④凡人と天才

ただ、【straylight.run()】では話が後半に向かうにつれてだんだんと冬優子の本音が漏れ始めます。

下の会話は、【straylight.run()】で初めて「本当の対立」が生まれているシーンです。
冬優子は社交辞令で話してる風ですが、全て本音で話している点も見どころです。

イベント【straylight.run()】

無理しなくてもそのままの自分を好きになってもらえるのが一番というあさひに
「すごいな、ちょっとうらやましくなっちゃう」
と返す冬優子。
さらに、
「誰でもあさひちゃんみたいに振る舞えるわけじゃないの。…みんながあさひちゃんみたいに強いわけじゃないんだよ」
と続けます。

このやり取りでもやはり冬優子が本当はそのままの自分を愛されたいけれど叶わないことが伝わってきます。

似たような意味を持つシーンは何度も描かれます。
まずは感謝祭のシーンです。

Straylight感謝祭

「ふゆと違って他人なんか気にしなくて、信じたものに向かってよそ見もしなくて…」
裏を返せばやはり、信じたものに向かってまっすぐ生きていきたいという想いが語られています。

「普通じゃなくて、特別で、手の届かないような女の子」
「とっても魅力的な女の子だけがなれる、きっと、そんな特別な存在」
上記は冬優子から見た「あさひ」と、
冬優子が出会いで語った「目指したいアイドル」です

並べて見ると冬優子にとって「あさひ」と「目指したいアイドル」が非常に類似しているのがわかります。
そして、冬優子(と愛衣)はあさひの背中を追っていくことになります

その様子を描かれたのが「感謝祭」です。
感謝祭では同じだけ努力しても技術に大きく差がでる、
天才と凡人の壁を前に心が折れ、
あさひに勝つことを諦めながら妥協の中でアイドルを続けていました。

そこからは皆さんもご存じの通り、
Pの「背中を追うだけでいいのか?」という言葉をきっかけに再び立ち上がります。

「可愛くて、かっこよくて、キラキラしてる」
あさひとはまた別の形で、同じ目標に向かっていくことになります。


⑤選んだ生き方

以下は「The Straylight」にて愛衣が偽りのアイドルだけでなく、素の自分を出していきたいと冬優子に相談しているときのシーンです。
冬優子は、やらない選択肢はない、と即答します。

イベント【The Straylight】

「あんたのゴールはそこなんだから」
「あんただけ我慢しろってのも違う」


「我慢」は【straylight.run()】でも語られていたキーワードです。
ここでいう「我慢」とは「本当の自分を抑えること」と言い換えられます。
「あんただけ」という言葉が入っていることはこのときには冬優子はもう我慢していないことがわかります。

またGRADにて次のような言葉があります。

冬優子GRAD
意味がより深く見えてきます

GRAD時点では、
「ふゆが、ふゆのままじゃ愛されないのは悲しい」
「ふゆが作ったふゆが、たくさんの人に受け入れられるのは気持ちいい」

二つの大きな矛盾を抱えて生きていくことに決めています。

余談ですがそのままの冬優子を愛してもらえないという悩みも最近のコミュでは
作ったふゆを本物と認識させ、
本当の冬優子を偽物として見せる

という奇策で克服してしまっています。

Sssr【二律背反】

冬優子がこのように前進していくことになったのは、アイドルになったこと、Straylightの一員になった影響が非常に大きいです。


⑥涙の意味

「straylight.run()」の終盤。
同コミュ内では八百長で負けが決まっているオーディションに参加することになります。
戸惑う愛衣に、あさひはすごいパフォーマンスをすれば大丈夫、と口にします。
あさひの周りを顧みないやり方に批判的な冬優子でしたが、
その圧倒的なパフォーマンスを見て願うように応援します。

イベント【straylight.run()】

ただ結果は惨敗でした。
「すごいこと」よりも「すごい空気」が幅を利かせ、
天才よりも天才のフリがうまい人が評価される世の中

そんな世界の大きな圧力を前にあさひでも勝てなかったわけです。

イベント【straylight.run()】

冬優子がなぜ泣いていたのでしょうか。

きっと冬優子は、あさひに願いをかけたのだと思います。

本当にすごいパフォーマンスなら、認めてもらえるのかもしれない、と。
「いっつもそう」とある通り、今までも何度も期待しては裏切られを続けてきたのでしょう。
ただ、今回挑むのは冬優子ではなく「冬優子の理想のアイドル=あさひ」でした。
だからこそ、今回こそは何かが変わるかもしれないと願ったわけです。
しかし、結果は惨敗でした。
冬優子はこの「バカバカしい世界」に対して怒って涙を流しているのでした。

だからこそ、冬優子は立ち上がります。
かつての冬優子の理想だった「あさひ」の戦い方ではなく、
自分の信じる「ふゆ」を纏って。

こうして、凡人が、天才と世界を相手に戦う物語が始まります。

しかし、結果はあさひ同様に惨敗でした。
ただ、この事件を境目に冬優子に大きな変化が生まれます。
非常に興味深いのは以下の会話です。

この冬優子の言葉を見てお気づきになるでしょうか。
「ズルしたやつらを黙らせられるほどのステージじゃなかった」

この考え方は「すごいパフォーマンスをすれば認めてもらえる」という、
あさひが口にしていた言葉そのものです。
このとき、初めて冬優子とあさひは同じ目標を持つことになります。

これまで、冬優子はバカバカしい世界と戦うことを諦めてきました。
凄いパフォーマンスではなく、愛されることが評価される世界。
冬優子はそんな世界はおかしいと思いながらも、屈服し、その大きな流れの中で生きてきました。
だからこそ、自分が諦めた生き方を続けるあさひを見て、嫉妬をし、苛立ちを覚えていました。
しかし、冬優子の本当の望みは、正々堂々とした真っ向勝負で勝利することだったのです。

逆にあさひは
「凄いパフォーマンスだけではだめだった」「自分は間違っていた」
と口にします。
それはかつて冬優子が感じた挫折そのものだったのかもしれません。

イベント【straylight.run()】

冬優子にとってあさひの生き方は憧れであり希望です
冬優子が何度も望んだけれども、実現できなかった生き方。
自分には実現できなかったけれど、あさひなら実現できるかもしれない夢。
だからこそ、あさひに諦めてほしくなかったし、否定してほしくなかったわけです
良いものが、認められる世界だと信じたいから。
バカバカしい世界を作り変えるために。

イベント【straylight.run()】

こうして、Straylightは「最高のパフォーマンス」を求め続ける、
実力派アイドルとして活動していくことになります。

冬優子とあさひの相性が良くて当たり前なわけですよね。
二人の目指すところはそっくりなのだから。

Straylightが「最高のパフォーマンス」を目指す理由には、
あさひの生き方が、冬優子の願いが、愛衣の素直さが込められているわけですね。

後に冬優子は活躍と比例して才能を褒められ、
天才扱いされることが増えます。
しかし、果たして本当に冬優子には才能があったのでしょうか
冬優子にあったのは「渇望」とまで言える「願い」と「努力」ではないでしょうか。
それを「才能」と呼ぶのはあまりに失礼なように私は思います。

Sr【283プロのヒナ 和泉愛衣】

「大丈夫……ふゆならやれる……ふゆならできる……」
海辺のオーディション前の自らを鼓舞する冬優子の言葉です。
「ふゆならできる」「ふゆなんだから当たり前」「ふゆなら当然」
鼓舞するためだったはずの言葉はいずれ本物の自信になっていきます。
偽りの才能を纏って、挑戦し、挫折し、立ち上がる。
まさに、
迷光を纏い、少女たちは偶像となる」ですね

「強く願えたら、それはもう、本物だよ」
これは【Spread The Wings】の歌詞です。
アイドルが戦うってのはどういうことか、今後も見ていきましょう。

冬優子の姿を見ていると、
現実の自分も願いを本当に目指せているのか、改めて考えさせられます。

これにて「黛冬優子とは-前編-」を終わりとさせていただきます。

この考察がきっかけで冬優子を知る一助になれたならば、更には少しでも好きになってくれたら大変嬉しく思います。

「後編」では「前編」を踏まえた上でのトワコレ冬優子の意味を考察してさらに深堀していきたいと思います。

長文をお読みいただき本当にありがとうございました!

「スキ」もらえたら嬉しいです!
冬優子を多くの人に知ってもらえるかもしれないので!
是非よろしくお願いいたします!

※他のアイドルについても考察してるので読んでもらえると嬉しいです!



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